認知症の母日記 入院編5
2024年10月24日(木)
母(83歳)は、B病院からC老健施設へ転院する。
朝9:30。私と父(90歳)は付き添いのため送迎車で病院入りした。
受付の人に、ロビーで待つよう言われる。
このB病院は退院するわけで、今日会計もある。
母は自分で荷物をまとめられないから、私はやるつもりでいたのだが……。予定では10:00に介護タクシーが手配されているという。これはB病院が手配してくれた。
ここのロビーのよいところは、自販機で自由にお茶やコーヒーが飲める点だ。父と自分の分のコーヒーを紙コップでもらい、飲みながら待つ。
しかし、9:45になっても、呼ばれない。さすがに焦ってきて、受付へ聞きにいく。すると、「どうぞ」と言われる。なんだかなぁ……
父が会計をする。
8月9月分はすでに支払い済みで、今日は10月24日である。24日間で25万円弱。同じような境遇の方は、この金額についてどう感じるだろうか? (施設や地域、医療保険によって異なると思われる)
支払いを終えると、2階の母が入院しているエリアへ入ることを許される。まだまだコロナ感染予防対策はされているのである。
2階のフロアにつくと、母はすでに私服を着せられ、老眼鏡をかけられ(ケース紛失のため、看護師さんがかけたそうだ)車椅子に座っていた。
荷物は看護師さん達がまとめてくれていて、台車にのせられている。部屋の確認をお願いしますと言われ、私が見にいった。(私が荷造りするものと思い焦っていたので、ほっとした)
父はフロアで書類の記入があった。
戻ってきて、母の顔を見ると不安そうである。
「お母さん、どおしたの?」
優しく言って、母の右手を取って揺らす。顔なじみの看護師さんも来て、母に声をかけてくれる。母は、転院することわかっているのだろうか……
介護タクシーに母は車椅子のまま乗せられる。私と父も乗り込む。
担当だった副院長がわざわざ見送りに出てくる。荷物が4つもあったので、積み込むのを手伝ってくれさえした。母を脱臼させてしまった(おむつ交換時に)から、そのせいか…と勘ぐってしまう……
出発すると、介護タクシーは馴染みの風景の中を走っていく。
私は母になるべく話しかけた。
「ほら、○○だよ(私の母校の高校)」
「見て、キリン草いっぱいだね」
25日ぶりに外の景色を見た母。首があまり左右を向かないけれど、見ようとはしていた。キリン草はわかったみたいで反応している。あまり言葉は出てこないようだ。
認知症になる前の母は、好奇心旺盛、おしゃべりで、友達がたくさんいて、植物が好きで……
認知症は母をずいぶん変えてしまった……
15分ほどで、転院するC施設に到着した。
私と父は様々な説明と書類の記入など手続きをする。毎度のことだが、けっこうな時間がかかる。
母は車椅子で同じ部屋に入れられたが、さっそく鼻に綿棒を入れられコロナの検査だ。母は驚いた顔をして、すごく動揺する……
そこからだった。母は一気に機嫌が悪くなった。
「知らなかった」
「聞いてない」
と言い出して、説明もなくいきなり新しいところに連れてこられたと言いたいのだ。
母にしてみればそうだろう。面会のたび、父も私も妹も説明を繰り返していたが、母は自分が転院することを忘れてしまうのだから……
とうとう母は、父に対して怒り出す。
「聞いてなかった」と母。
それを繰り返すので、とうとう父が言い返してしまう。
「言ったでしょう」
父はそれを繰り返すので、言い合いになってしまう。
室内にいる看護師、ソーシャルワーカー、相談員みな黙って聞いている。
私は父をとめようか迷う。もう少し優しく言えないのか? 昭和初期生まれの父は普段口数が少なく、口下手だ。
とうとう看護師が、母の車椅子を動かし退室しようとする。
ああ、お母さんとしばらく会えなくなるのに!
私は母に向かって言った。
「お母さん、怒んないで。会えなくなるのに」
母はちょっと私を見たが、怒りの方が大きい。父が悪い、と私に言いたそうだ。その時、母は父の方に向かって、べえぇ、っと舌を出したのだ。まるで、子供のよう。
だけど、これは祖母と母の昔っからの茶目っ気でもある仕草。
私は、連れていかれる母を見送るしかなかった。
母は脱臼した右股関節に装具をつけている。
これが外れるまでは、家に帰れない。なぜなら、自分でそれが取り外しできないからである。トイレのたびにそれをしなければならないから。
8月1日に装具をつけ、三ヶ月外せないとA病院の担当医に言われているのだが、あと数日で三ヶ月経つわけだ。
今日からお世話になるC施設でも歩行のリハビリはある。しかし、リハビリ専門だったBリハビリ病院と比較するとリハビリ時間はかなり少ないそうだ。
母は認知症の進行もあるわけで……
一度は家に帰してあげたいと思っている。これは、父も私も妹も同じ思いだ。しかし……
いったいこれから、どうなっていくのだろうか。
※母の入院の経緯
7月 8日 A病院にて股関節手術 その際に骨折
7月26日 Bリハビリ専門病院へ転院 その夜、おむつ交換時に脱臼
7月27日 手術したA病院へ救急車で戻される
8月 1日 足に装具がつく(三ヶ月外せないと言われる)
8月30日 Bリハビリ病院へ転院
10月24日 C施設(老健)へ転院
