娘の推しになりたくて、眉毛の上を抜いた春
「パパの目、なんかJISOOみたい!」
6歳の娘にそう告げられたあの日、僕は自分の顔面にガールズグループHANAのメンバーJISOOが宿っていることを知った。しかも、娘の推しである。僕の推し(娘)の推し(JISOO)の顔面要素の何かが僕に宿っているというのは、嬉しい以外の何物でもない。いや、JISOOファンの皆様本当にすみません似ても似つきません本人より10歳も年上の青ひげおじです本当にすみません。
しかし、まんざらでもない僕は、その日から鏡を見るたびに自分の目のどの要素がJISOOっぽいのか探ることにした。まぁ、言われてみればなんとなく分かる気もする。もともと濃い顔つきなので、おそらくバチバチにメイクアップした状態のJISOOの目に似ているということだろう。
同時に、決定的に違うところも発見した。
眉毛、だ。
僕の眉毛は、どちらかというと男らしい眉山がわりとハッキリした形をしている。一方でJISOOの眉毛は平行に近い。眉山はなだらかになっている。
逆に言えば、この違いさえなくなれば僕はもう最早JISOOになれると言っても過言ではない。35歳のオジサンが、眉毛を整えるだけでJISOOになれるのだ。夢のような話である。
そんなわけで、迎えた今朝6時半。朝活を終えた僕はいつものように洗面台に向かい、軽く洗顔をした後、約2年ぶりくらいにギャツビーのメンズアイブロウセットを手に取った。
まずはコームで毛の流れを整え、軽くカット。そして、一本一本丁寧に眉毛の山を崩していく。これまで培ってきた己のプライドや自尊心などを、眉山と共に迷うことなく切り崩し、新たな自分を開拓してゆく。あぁ、僕は今日から生まれ変わるのだ。新しい世界が広がってゆくのだ。
ひとしきり納得のいくまで形を整え、洗顔し、ひげをそり、化粧水と乳液をたたいた。アフターケアもばっちりだ。その後、ジェルワックスで髪を立ち上げいつものベッカムヘア調の髪形にしてゆく。今日はワックスの具合も良い。
全ての身支度を終え、改めて引きで鏡にうつる自分を見た僕。娘のために、自分の顔面の可能性を広げるために、かれこれ30分ほど費やした。そして、その結果を目の当たりにして、僕は心の中で叫んだ。
デコ、広がってる!?
え!?まって!?なんかデコめっちゃ広がってない!?JISOO目指してたらDEKOOがめちゃくちゃ目立つんだけど!?顔面の可能性じゃなくて、生え際の可能性広がっちゃったんだけど!?
あまりの衝撃に、なんども眉毛を上にあげて、デコの皺が生え際まで到達しているか確認する僕。よかった、まだ禿げてはいないようだ。どうやら眉山がなくなったことで、デコが強調されたらしい。あまりにも予想外の副産物である。
結局、JISOOにはなれずにDEKOOになってしまった僕。ていうか、眉上も毛を抜いた直後だからなのかプチプチ赤くなっている。大丈夫なのかこれ。
まもなく妻と娘が起きてくる。
言うべきか、言わざるべきか。それは、起きて僕の顔面、いや、DEKOOを見た妻子の反応によって決めようと思う。
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使途:妻と娘のおやつ代