探究・探究・探究: 錐(すい)の体積はどうして柱(ちゅう)の3分の1か
高校で探究型の学習が推奨され、私(大学の教員)も連携する高校の「理数探究」や「総合的な学習の時間」の探究などに協力している。
大学に勤める研究者としては、
「理数」(Science and Mathematics:理科と数学のことらしい)は、数理科学(Mathematical Science)のことを指す高校教育用語、
そして、「探究」(Inquiry-Based Study)は、「研究」(Study)のことを指す高校教育用語、と理解しています。
今回の「探究」テーマ(の内のほんの一部だけ紹介)は、
「中学校で習う錐の公式の理由を探究する」です。
高校1年生むけに考えてみました。
例えば、四角錐の体積の公式

のように、「錐(すい)の体積は柱(ちゅう)の体積の3分の1である」ことを中学で習うのですが、「3分の1」である理由を納得いくように説明できますか?
よくある説明のひとつが、
立方体を、中心点を頂点とする6つの四角錐に分けるというものです。

「激落ちくん キューブ」などの商品名で売られている掃除用の立方体のスチロールをカッターナイフで実際に切ってみます。(高校生と一緒にやってみました。)



元の立方体の1辺の長さを1とすると、
底面積1×1=1、高さ1/2の「平たい四角錐」が6個合わさると、
体積1×1×1=1の「元の立方体」になるから
「平たい四角錐」の体積×6=「元の立方体」の体積 ・・・①
また、立方体を1/2の高さで水平に2つに切った、底面積1×1=1、高さ1/2の「平たい四角柱」は、2つ重ねると「元の立方体」になるので、
「平たい四角柱」の体積×2=「元の立方体」の体積 ・・・②
である。
式①と②から、
「平たい四角錐」の体積×6=「平たい四角柱」の体積×2
なので、
「平たい四角錐」の体積=「平たい四角柱」の体積×2/6
となり、
めでたく、
錐の体積=柱の体積×1/3
というわけである。
これでも良いけれども、6分の1ではなく、3分の1をストレートに示して納得したい気がする。
つまり、柱を、柱と同じ底面と高さの3つの同じ形の錐に分けたい。
できそうなのに、なかなかそのような3次元図形を想像できない。
(シンキング タイム)
寝ながら一晩考えて、やっと想像できた。(昔から時々、寝ている間にプログラムのバグに気づいたり、パズルの答えを思いついたりする。)
以下は、立方体を、合同な3つの四角柱に分ける方法:
XYZ座標上の (0,0,0), (1,0,0), (1,1,0),(0,1,0)-(0,0,1), (1,0,1), (1,1,1),(0,1,1)の8点を頂点とする立方体(下図)を考える。

この立方体は、次のような3つの合同な四角錐に分けられる。
XY平面上の正方形(0,0,0), (1,0,0), (1,1,0),(0,1,0)
YZ平面上の正方形(0,0,0), (0,1,0), (0,1,1),(0,0,1)
ZX平面上の正方形(0,0,0), (0,0,1), (1,0,1),(1,0,0)
の3つの正方形をそれぞれ底面とし、どれも(1,1,1)を頂点とする3つの四角錐(下図)である。

(どっちでも同じだけど、原点(0,0,0)を共通の頂点として上図の面とは対面の正方形を底面とする3つの四角錐を考える方がベクトル幾何学的にはシンプルだったな〜と、図を作ってから思ったが。)
これを「激落ちくん」で作ると、

この合同な3つの四角錐を組み合わせると

確かに上図の左のようにでき、これは右の元の立方体と同じである。
かなり、すっきりした。
なお、この四角錐は、頂点から底面に下ろした垂線の足が、底面の中心ではなく、底面の正方形の1つの頂点と一致する形である。
頂点がずれても高さが同じなら体積は変わらないことは、
次の図のように、板を10枚重ねて作った四角錐が、頂点をずらしても体積が同じであることで、なんとなく納得できる気もする。

これらは、どちらも、大学3年生の「おかきさん」がレーザーカッターで作ってくれた、下の図のような正方形の板を10枚重ねたものである。

この10枚の板は、板の厚さを1としたとき、1×1、2×2、・・・10×10のサイズである10通りの正方形の板である。

この板を使って、「区分求積」によって四角錐の体積を求めてみよう。
板の厚さは1なので、それぞれの板1枚の体積は「正方形の面積×高さ1」つまり値としては、正方形の面積に等しい。
つまり、
この10枚の板を重ねた四角錐(底面1×1、高さ10の四角錐)の体積は、
(1×1)+(2×2)+・・・+(10×10)=385
高校2年生なら、

と書く値であり、
四角数(自然数の2乗である数)の数列の和の公式:


の n に10を代入して求めることもできる。値は385である。
この(板を10枚重ねた)四角錐と同じ底面で同じ高さの四角柱(10×10サイズの板を10枚重ねた立方体)の体積は、
10×10×10=1000
なので、
錐の体積/柱の体積= 385/1000 =0.385
である。
(おおっ 1/3=0.333333・・・に近い!)
さらに、10×10、11×11、・・・と順に大きな板を重ねていくことを考える。
板を重ねる枚数をnとすると、
錐の体積は、前述の式Aで表され、
柱(高さも同じなので立方体になる)の体積はnの3乗なので、
錐の体積/柱の体積

これを計算すると

である。四角形の板を重ねる数nを大きくするほど四角錐が大きくなるが、1個の四角錐あたりの板の数が増える(つまり四角錐を多くの板に分けて細かく近似する)と見ることができるので、
nを大きくするほど実際の「錐の体積/柱の体積」の値に近づくはず。
理系の高校3年生なら、
n→♾️
の時の式Bの極限値が1/3とわかる。(なぜなら、1/2n → 0 , 1/6n^2 → 0)
つまり、

すなわち、
錐の体積=1/3(柱の体積)
であることが説明できた。
めでたし、めでたし。
・・・しかし、今回の探究は、高校1年生による探究だ。
積分を使わずに、離散的に板を重ねて自然数の和だけで(区分求積で)説明しようとしたのに、・・・
数列の和(高2)や極限(高3)も使わずに説明しないと・・・
どうしよう・・・(汗);
つづく。
※「つづき」で、見事に(?)高校1年の知識だけで解決します。(たぶん)
