【翻訳】ジェット・リー、太極拳を語る②
はじめに
前回からの続きです。
今回は、ジェット・リーのよりパーソナルな話題が展開されます。『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』制作秘話が興味深い!
※ほぼ全文を訳していますが、所々意訳を含みます。よくわからないままなんとなく訳してるところもあります。
※読んでいただければわかると思いますが、翻訳に関しては素人ですし英語がペラペラでもありません。誤訳等がありましたら、お手数ですがじゃんじゃんご指摘ください。
元動画はこちら⇩
動画本編
日常の中の太極拳
Jada そしたら今度は、あなた個人と太極拳の関わりについてもう少し話したいと思うわ。あなたはどんなふうに太極、太極拳と関わってきたの?
Jet うん。ぼくは8歳のころから武術を習ってきた。武術には必ず、太極の哲学がある。たとえば、片方がパンチしたら、もう一人はブロックするでしょ。キックしたら、よける。
Jada つまり、攻撃と防御は、陰と陽なのね。
Jet そう!攻撃、ブロック。パンチ、回避。それがすでに太極なんだ。太極はあらゆることに使える。先生との接し方、学校の友達との接し方、お母さんへの接し方、仕事のとき。常にある哲学だ。このことを知らない人は、いつでも自分が正しいと思ってる。「なんで私の言うことを聞かないんだ!?」ってね。
Jada つまり、太極は人付き合いにも役立つということ?まるで、自分の視点、相手の視点、それぞれを見るように。
Jet 片方の視点からものを見るとき、もう片側からも見る必要がある。太極の哲学は日常生活にも役立つよ。子どもから大人までね。いつでもこの哲学が、ぼくと共にある。
たとえば大人や先生がこう言う。「お前はこれをしなさい」「お前はこれをしてはいけない」ってね。「なんでそれをしてはいけないの?」とぼくは思った。試してみて、どうなるか、自分で発見する。それでやっと、先生がなんで「だめ」と言ったかがわかるんだ。
Jada なぜ「それはだめ」と言ったか。なぜ大人たちがそういう意見を持つに至ったのか。
Jet そう。たとえば「気を付けて、転ばないで」って言われるでしょ…なんで?ぼくは転んでみたいのに。それで、「わぁ、これは痛い!」って言うの。わかるでしょ?(笑)自分の視点と相手の視点、両方を知る必要があるんだ。
それと、ぼくは11歳から16歳までのあいだ、世界の色々な国を旅したんだ。そのとき、太極の哲学のおかげで、中東、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ…それぞれに住む人たちが、なぜそう考えるのか?なぜ中国と違う考え方をするのか?ということを考えることができた。なぜなら、2、4、8…わかる?みんなそれぞれが違う視点を持っているんだ。それが理由だ。
Jada ふたつの視点だけじゃなくて、もっともっと…
Jet 四象、八卦。だから人々は違う意見を持っているんだ。たとえば、いろんな飲み物があるね。水が好きな人もいれば、ジュースが好きな人も…
Jada コーヒーとか?
Jet ビールが好きな人も…なんでも。なんで彼らはそれを選ぶんだろう?それは、みんなそれぞれ自分の角度を持っているからだ。太極でいうところの、分割。分割、分割…。間違いもないし、正解もない。ただその時、それが好きっていうだけ。だからぼくはこの太極の哲学がとても好きだし、それは太極拳よりももっと大切なことだと思うんだ。
リンチェイ、太極拳を学ぶ
Jet 16歳のとき、ぼくは何度もチャンピオンを獲得した。数年にわたってね。そしてぼくは、「うーん、太極拳を習う必要があるな」って思ったんだ。
Jada それ以前のトレーニングに、太極拳は含まれていなかったの?
Jet うん。だから個人的にやりたいと思ったんだ。若い頃は、太極拳を習いたいなんて思わない。なんでかって?若い人は、もっと高く飛び上がったり、空中で戦ったりしたいでしょ。あちこち飛び回ってね。でも太極拳は、すべてのエネルギーで地面を押すんだ。ジャンプはできないのさ。
Jada 高さを追及するというよりは、もっと抑制された動きよね。
Jet そうだ。外家拳は、エネルギーを放出させる。だけど太極拳は、エネルギーを内に向ける。その状態でジャンプできる?できないよね(笑)太極拳では、エネルギーを丹田に集めるんだ。ここだよ。
Jada ここにエネルギーを集中させるのね。
Jet 速く動いたり、高く跳んだりはできない。アスリートとは正反対に思えるね。でも、ぼくはそれを学びたかったんだ。そして習いに行った。人生のうちでぼくは『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』という太極拳の映画を作ったし、この映画を愛しているけど、でも、実際のところぼくは太極拳のスペシャリストではない。
Jada そうなのね。
Jet なぜなら、本当の、本物の太極拳マスターを見てみると、彼らはその人生のすべてを、ひとつのことを学ぶのに費やしている。彼らこそが本当のスペシャリストだ。なぜなら人生をかけて、哲学から気の使い方に至るまでを学んで、学んで、そうやって生きているからだ。エキスパートというのはそういうことだと思う。ぼくはエキスパートなんかじゃないよ、なぜならぴょんぴょん跳びまわるし、十八般兵器(中国武術で使う18種類の武器)についても学んだし、いろんなことをやったからね。映画を作るから、何か一つのことに人生を集中させるということができないんだ。それがぼくの生き方なんだ。太極拳の哲学について学んだことはぼくの人生にとってとてもすばらしいこと、だけどぼくは太極拳のエキスパートではないというのは、そういうことさ。
Jada どちらかというと趣味のようなものだったとしても、「学びたい」と思ったのね。たぶん、あなたはいろんなことに挑戦するのが好きだし、いつでも他の人がやらないようなことをやってみたいと思っているんじゃない?
Jet そのとおりだよ!スポーツに例えると、水泳もしたい、バドミントンもしたい、バスケットボールもしたい…そうやっていろんなスポーツをすることができても、それではバスケットボールのプロ選手にはなれないでしょ。
Jada そうね。
Jet 「バスケが好き」ということと、「バスケのスペシャリストである」ということはイコールではないからね。生涯をかけて、どんなふうにシュートして、どんなふうにプレイして、どんなふうに戦略を立てて…と、ひとつのことを訓練する。ぼくはそういうタイプの人間ではないんだ。
『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』
Jada それで、さっき少しだけ『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』という映画について触れたけど、あなたは……おっと!ここからはネタバレ注意よ!視聴者の皆さん、もしあなたがまだこの映画を観ていないなら…この動画を止めて、まずは映画を観てきてね!(笑)
Jet (笑)
Jada …さて、それであなたは、外家拳の『少林寺』から始まって、その後、内家拳である太極拳を使う主人公を演じたわね。この映画を通じてどんなことを伝えたいと思ったのか、そしてあなたの人生においてこの取り組みがどんなふうに展開したのか、少し教えてくれる?
Jet ぼくはいろいろな武術を学んできたけど、若い頃は、そのすべてが外家拳に分類されるものだったんだ。若くて、エネルギッシュで、速さや強さを求めて…こういうのは外家拳に属するものだからね。それで初めての映画『少林寺』を作ったんだけど、出来上がったその映画のポスター、すごく大きなポスターに、「天下功夫出少林」って書いてあったんだ。つまり、「すべての武術は少林寺から生まれた」ってね。
Jada すべての武術が少林寺から…
Jet 映画会社は、映画を売りたかったからね。でもぼくがその言葉を見たとき、すごく奇妙な感じがした。ほんとに?それって武術のうち、外家拳と呼ばれる半分だけじゃないの?って。それでぼくは、「ダメダメダメ、これは間違ってるよ」って言ったんだ。でも映画会社の人は、「ダメダメダメ、映画を売るためなんだから」って。
Jada たしかにかっこよく聞こえる。
Jet だから彼らはそう書いたんだ。それでぼくは、「これじゃダメ、次は太極拳についての映画を撮るぞ。だって、武術の100%が少林寺から生まれたんじゃない、半分だけだ。内家拳は道教から来ているんだから。」って思った。ポスターには“すべての武術は少林寺から”と書かれていたけど…「ウソ言え!太極拳、超クール!そうでしょ?デタラメ言うな!」って言いたかったんだよね(笑)
Jada それって何歳ぐらいの頃のこと?
Jet 19か、20歳くらいだ。それから、ぼくたちはたくさんのリサーチをした。『少林寺』の監督を連れて中国じゅうを巡って、半年かけてこのプロジェクトに取り組んだんだ。でも、結局だめだった。なぜなら、太極拳をスクリーン上でどうやって見せたらいいかがわからなかったんだよ。みんな、「バーン!」「いてぇ!」「アチョー!」みたいな映画が好きでしょ(笑)エキサイティングで、わかりやすいからね。その気持ちはぼくにもわかる。でも、もし太極拳の、こんなゆっくりな動きで相手を地面に叩きのめしていたら?観客は「なにこれ?細工してるでしょ!」って思うでしょ。
Jada スクリーン映えしなかったのね。
Jet 実際に太極拳をやってみないと、わからないだろうね…。レンズ越しに見せるだけでは、どうしてもイマイチだったんだ。たくさんの時間を費やしたけど結局うまくいかなかったのは、そういうわけなんだ。
Jada でも最終的に、1992年にそれを完成させたでしょ。
Jet 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』という別の映画が大成功したんだけど、そのとき、アクション監督のユエン・ウーピンと一緒に仕事をしたんだ。知ってるでしょ?
Jada 彼の多くの映画を知ってるわ。
Jet 『グリーン・デスティニー』とか、『マトリックス』とかね。そのときぼくは、「ねぇ、ぼくは本気で太極拳の映画を作りたいんだけど、どうやったらいいかわからないんだ」って彼に聞いた。そしたら彼は、「俺ならできる!」って言ったんだ。なぜなら彼は当時アクション監督だったけど、映画監督になりたがっていたんだ。それでぼくは、「もし君が太極拳の映画を作れるなら、君に監督をお願いするよ」って言った。彼は、「OK、うまくやれるって保証する」って答えた。だから僕はプロダクション会社を作って、監督になった彼と一緒に『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』を作ったんだ。
Jada それが、あなたのプロダクション会社で作った最初の作品?
Jet いや、3つ目の作品だ。
Jada 3作目ではあるけど、ずっとその構想を持ち続けていたっていうこと?
Jet そうさ。ずっとやりたかった。だってあのポスターが頭から離れないんだ。“すべての武術は少林寺から生まれた”…「違う違う、ダメ、全然違う。半分だけなんだってば!」ってね。
Jada (視聴者に向かって)これは中国武術の話ですよ。
Jet 太極拳の哲学みたいに、高と低、柔と剛、すべては2つの面を持っている。なのに100%そこからなんて、どうして言えるの?話にならない!ぼくは武術家だから、そんなことはとても言えない。いつか、太極拳も武術であることを証明しなければならない。そう思って、この映画を作ったんだ。
Jada その結果、そのメッセージを観客にきちんと伝えられたと思う?
Jet たくさんの人に好かれる映画になったと思っているよ。
今回はここまで。続きは後日!
お読みいただきありがとうございました。
