「夏に掃除したほうが楽ですよ」の一言で、信用された設備屋さん
「換気扇は、夏に掃除したほうが楽ですよ」。調子を見に来てくれた設備屋さんが、帰りぎわにそう言った。腕とは関係ない、ただの一言だった。でも私は、その一言でこの人を信用した。
思い当たる人は多いはずだ。年末の大掃除、冷えきった台所で、白く固まった油をフィルターごしにこする。洗剤をかけても、爪を立てても、カチカチのままびくともしない。あの徒労。
うちの場合は、レンジフードの奥だった。フィルターを外すと、筒状のファンが入っていた。細長い羽根がぐるりと並んだ、シロッコファンというものだそうだ。その羽根の一枚一枚に、油がびっしりついていた。吸わなくなったと思っていたのは、機械の寿命ではなく、ただの油だった。
油がたまれば換気の効率は落ちる。モーターに負荷がかかり、電気も余計に食う。放っておけば異音や故障の元になる。このあたりは、職人さんには当たり前の話だと思う。ただ、頼む側は何も知らない。吸いが悪ければ壊れたと思うし、掃除は年末にやるものだと思い込んでいる。
そのとき教わったのが、季節の話だった。
換気扇の油汚れは、温度が高いほど緩む。同じ掃除でも、冬より真夏のほうがずっと楽に終わる。
油は寒いと固まり、暖かいと柔らかくなる。それだけの性質が、掃除の労力を大きく変える。冬でもお湯につけ置きすれば緩むが、真夏は何もしなくても最初から緩んでいる。スタートラインが違う。私はあの日以来、換気扇だけは夏のうちに済ませることにしている。年末のリストから、いちばん重い一行が消えた。
腕のいい職人さんは、こういう小さな知恵をいくつも持っている。でも、その多くは口に出されないまま終わる。聞かれなかったから。言う場がなかったから。もったいないと思う。素人の客に腕の差は見えなくても、「夏のほうが楽ですよ」の一言は、はっきり伝わる。この人は自分の得より、こっちの手間を考えてくれている、と。
ただ、その一言が届くのは、台所に上げてもらえた客までだ。いま吸いの悪いレンジフードの下で「換気扇 吸わない 故障」と打ち込んでいる人に、あなたの知恵はまだ届いていない。
派手に売り込むのは違う、という感覚は正しいと思う。ホームページは売り込みの看板ではなく、あなたが現場でぽろっと言うような知恵を並べておく棚だ。誠実さを、会う前に見てもらうための。
確かな仕事をする人が、ちゃんと選ばれるように。季節を味方につけるような知恵が、会う前の客にも伝わるように。それを形にするのが、いまの私の仕事です。
ホームページのない会社さん向けに、提案デモからお作りしています。
https://hp-koumuten.com
設備屋さんのホームページで、何を先に見せるか。別のところに書きました。
