見出し画像

ゆっくりと、巣立ちと帰巣

ゆっくりと、卒業生たちが会場を後にする。

見送る我々の拍手が鳴り止んだ途端に、会場の外から歓声や安堵の声が飛び込んできた。卒業式が終わったロビーはピーチクパーチク、かまびすしい。ついさっきまで、感動的な答辞に涙を流し、鼻を啜っていたはずなのに。

遅れて会場を出れば、振袖やスーツ姿が目の前をキラキラと舞う。一緒に写真を撮ろうと駆け寄ってきたり、こちらも負けじと、勝手に写り込んだり。いずれにしても、わたしの手元には届かない写真だ。けれど、誰かのスマホには残るかもしれない。

「先生、連絡先教えて」と、スマホのQRコードを差し出す。そうそう、社会人になったばかりの頃は、相談や愚痴を送ってくるのだ。それも、いつの間にか遠のいていく。それでいい。それがいい。


卒業式の帰りがけ、ふと空を見上げると、小さな鳥の群れが、あっちへ行ったりこっちへ来たり。そのたびに、少しずつ小さなグループに分かれて、それぞれの方向へ飛んでいく。

あれは——ツバメだ。

別れを惜しむように、離れてはくっつく。


これも毎度のことだけれど、家に帰ったわたしはきっと、ふう〜と長い息を吐いて、お祝いの紅白饅頭を噛み締めるのだ。





シロクマ文芸部の企画に、参加させていただきます。


#シロクマ文芸部
#ゆっくりと





※見出し画像はAI生成です。

いいなと思ったら応援しよう!

ほよこ 今日も読んでくださって、ありがとうございます🐾