それぞれの思い ~十勝の展望台~
目が覚めると、もうひとつの世界が広がっていました。
数万年前の光が今、僕たちの瞳に届いたという、
静かな奇跡の証明なのです。
はじめに
北海道、十勝平野。
山登りを終え、帰宅途中に立ち寄った展望台。
心地よい疲れを包み込むような夕暮れが広がっていました。
雲ひとつない空の色が、深い紺色へと溶けていく。
「今夜は、きっと星が降る」
そんな予感に身を任せ、風の音を聞きながら、眠りにつきました。
天の川
夜空を見上げると、白く霞んだ川のような光の帯が流れていることがあります。
それが「天の川」です。
私たちの太陽系もその一部である、巨大な星の集まり。
何百億という星々が織りなすその姿は、あまりにも巨大で、あまりにも静かです。
高性能な望遠鏡がなくても、あなたの手元にあるそのカメラを使えば、肉眼では捉えきれないほど鮮やかな「星の海」を写し出すことができるのです。
星降る夜のシルエット
ふと、楽しげな話し声で目が覚めたのは、19時を過ぎた頃でした。
重い瞼を開けると、そこには魔法のような光景が広がっていました。
眼下に広がる街の灯り。
そしてそのすぐ上に、力強く、けれど優しく伸びる天の川。
撮影を終え、機材を片付け、車に乗り込もうとしたその時、ふと目に留まった影がありました。
街明かりと星空を背に、語り合う三人のシルエット。
その光景があまりに美しく、思わず声をかけました。
「撮らせてもらえませんか?」
20秒間の静止
星の光はとても微かです。
カメラにその光を十分に取り込むには、シャッターを20秒間、開け続けなければなりません。
その間、被写体となる人は、動かずにいる必要があります。
「20秒間、じっとしていただけますか?」
私の不躾なお願いに、三人は笑って応えてくれました。
暗闇の中で、全員が息を呑み、静止する。
カメラが静かに光を集めるその20秒間、私たちは確かに、同じ宇宙の時間を共有していました。

天の川と雲、そして、それぞれの思いが交差した夜。
おわりに
現像された写真の中には、肉眼で見たときよりもずっと鮮やかな、星々の命が宿っていました。
もしあなたが今、カメラを手に取ろうか迷っているなら、あるいはもっとうまく撮りたいと願っているなら、まずは夜の静寂の中に立ってみてください。
技術や機材の前に、まずは「心が動く瞬間」に出会うこと。
その一瞬をカメラという箱に閉じ込める喜びを、ぜひあなたにも知ってほしいと思うのです。
星々はいつもそこにあり、あなたがレンズを向けてくれるのを待っています。
この写真は、ソニーマーケティング株式会社主催のMONTHLY OPEN PHOTO CONTEST 第26回 テーマ部門「テーマ:希望」で入選しました。
