Episode 113 逃げ込む穴が必要です。
片道1時間半の電車通勤は、5ヵ月で終了します。
結婚後6ヵ月、1996年の秋口のこと…再び転勤、今度はパートナーの実家からクルマで30分程度の場所でした。
縁も所縁もない地域のアパートから1時間以上かけて通勤する意味はありませんから、引越しです。
この転勤に私とパートナーはどれだけ救われたことでしょう。
本部組織での勤務から店舗の現場に戻った私、勤務時間はいわゆる「遅番」が多く、昼過ぎに出かけていく代わりに帰宅は日付が変わる頃…というのが多かったと思います。
夕食時に留守になる仕事だったので、パートナーはセッセと実家に帰っていたようです。
身近に頼れる人がいることって、ものすごく重要だと私が気付くのはもう少し先の事。
この時はただ、義父義母に「おんぶにだっこ」だっただけでした。
私の方は、悲しい顔が減ったパートナーにホッとするだけの、状況の理解力に欠ける「ボケ亭主」だった思います。
考えてみれば、パートナー自身も安定期に入っていて、しかも何かがあっても「SOS」で駆けつけてもらえる場所に頼れる人が住んでいるわけで、私になにか変化があってパートナーが安定してきたわけではないのです。
私はこの安定に乗っかって、仕事に精を出すのです。
お父さんは会社にお仕事に…益々もって桃太郎のおじいさん家の分業体制に突き進む感じです。
このころの仕事は順調この上なく、直にマネジャー職が見えるところまできていたわけで、その仕事の順調ぶりがなお更、家庭をパートナーに押し付ける形にしたのだろうと思います。
ただこの時期、「運良く」パートナーには逃げ込む場所があったのです。
表立って波風が立たなかったのは、兎にも角にもパートナーの両親が支えてくれていたからであると、今ははっきりと言えます。
カサンドラとアスペルガーの関係を改善するのは、最終的には当事者同士の折り合いだと思います。
でも、最初から最後まで当事者同士では無理がある…パッと見でアスペルガーの特性を見抜くなんて正直ムリですし、アスペルガー当事者であっても、それを適切に分析するのはかなりの難易度のハズです。
お互いを認める作業には長い時間が必要であって、その為には途中で「逃げ込む穴」で悲しみを中和することが絶対に必要なのだと思うのです。
偶々、私が仕事で夕食時に留守することが多かった。
パートナーは実家で夕食を食べて、話を聞いてもらって私が帰宅する前に帰ってくる。
そういうラッキーな環境が夫婦仲を救ったんだと思います。
勿論、お互いに気持ちを失ったわけではない。
カサンドラの悲しみは、お互いの気持ちがあって、すれ違うからこそ生まれるもので、逃げ込む場所を失えば、悲しみに追い詰められてやがて限界を迎えるのだと思います。
お互いに気持ちがあったまま、悲しみを抱えて壊れるって、何とも切ない話じゃないですか。
逃げ込む穴は、どんなことがあっても用意するべき。
その穴を埋めることは絶対に避けるべき。
定型者と発達障害者の夫婦が長続きするコツは、こんなことかもしれません。
旧ブログ アーカイブ 2019/1/5
