【健康診断2026レポ④】「採血の神」に惜しみない賛辞を送りたい
採血
それは時に、
神にお会いできる瞬間だと思う。
人生で、幾度かしかお目にかかれない
「採血の神」
今回、【健康診断2026】で運良くお目にかかりましたので、その時の様子を書きたいと思います。
採血担当の方は、いつもは二人いらっしゃる。
私が採血に並んだ時、
そこには一人しかいらっしゃらなかった。
もともと一人しか来てない?
いや、そんなことはないはず。
採血待ちの列が短くなったから、
一人は外れていたのかもしれない。
今まさに、採血をされている人が一人、
採血を終えて、横の椅子で腕を押さえて様子をみるフェーズの人が一人、
そこに私は現れた。
採血されている人の、横のパイプ椅子に座って待つのか?それとも一つ後ろの待合パイプ椅子に座るのか?
迷っていたら、
神は優しく声をかけてくださった。
「後ろの椅子で少しお待ちくださいね〜☺️」
アイコンタクトもバッチリ。
私もそのアイコンタクトに、
頷きのような会釈のようなふるまいで応える。
今、採血している人への手を止めることなく、
私の存在に気づいて、
私が何で困ってるかを察知して
お声がけしてくださった。
様子見フェーズの方へも、
「もういいですよ〜、お疲れ様でした〜☺️」
三方位に対しての優しいトーンのお声がけと、
自然な笑顔。
この時すでに、
「マルチタスクの神」の香りがしていた。
なんだろう
「採血の神」
という舞台公演があるのだとしたら、
それはもう、
知らないうちに始まっていた。
私は思いがけず
この公演を愉しむことになろうとは・・・。
様子見フェーズの方が無事に去り、
採血を終えた方が
新たな様子見フェーズの方になった。
そして、後ろの順番待ちパイプ椅子に座っている私がついに、神に向かい前進する。
神に年齢を想像するのは失礼かもしれないが、
何歳ぐらいだろうか。
この50歳おばばがひよっこに見えるぐらい、神は明らかに歳上だ。
しかしながら、小綺麗で品があり、
常に笑顔を絶やさずイキイキとしている。
とても眩しい。
健康診断の部屋の中で、採血ブースだけが、
ひときわ別のオーラに包まれている。
私は持っていた健診ファイルを神に献上する。
「確認のためにお名前教えてくださいね☺️」
名乗らせる理由も付け加えてくださった。
「モネです」
「はい、ありがとうございます😊」
滑らかな対応。
そして声が常に機嫌良い。
「採血で具合が悪くなったことはないですか?☺️」
「アルコール消毒大丈夫ですか?☺️」
「大丈夫です」
「では、腕を見せてくださいね☺️」
一応、両腕を差し出す私。
私の血管は、見つけやすいタイプのそれではないというのは、過去の経験からわかっている。
「いつも、どちらの腕で採っていますか?☺️」
「右です」
「ですね☺️」
神はパッと両腕の血管を見て、
「採るなら右腕だ」と、瞬時に判断し、
私の「右です」でそれを確信したように見えた。
「親指を中にして握ってみてくださいね☺️」
神の指が、私の右腕に触れる。
「そのまま腕をだら〜んと下に降ろしてください☺️」
なかなか浮かないであろう、私の血管。
神を信じて指示に従うしかない。
そんなに長い時間ではなかったと思うが、
手をしばらく右手を降ろしていた。
そして、再び神に右腕を差し出す。
神はイケると確信したようだ。
ゴムチューブみたいなのを
上腕部にキュッと巻かれる。
早業だ。
アルコール消毒のコットンが、
メンソールのように腕をひんやりと刺激する。
そのスーッとした感触が、
空気を一変させる。
ここから物語は佳境に入っていく。
神の眼が光る。
「ちょっとチクッとしますよ〜☺️」
相変わらず、声の機嫌がいい。
これまでの流れに一度も滞りがなく、
こちらを不安にさせる要素が一つも見当たらない。
私は注射や採血がめちゃくちゃ嫌い、苦手というわけではない。
かといって、痛いのは好きではない。
落ち着いて採血に臨む用意は、
常にあるつもりだ。
全身の力を抜いて、
針を刺す瞬間は見ないようにしていた。
深く呼吸する。
腕に何かが触れる感覚があった。
神の告げた「チクッ」とは違う感覚だった。
もっと滑らかで優しくて、
尖ったものに刺されるそれとは違う感覚だった。
針はまだか?と思っていると、
「ラクにしていいですよ〜☺️」
神はそう言った。
私の赤い血潮は、細い管を勢いよく通過して、
試験管のような形の細長い容器に流れ込んでいく。
針は刺さっていた。
いつの間に?
一瞬の「チクッ」も感じなかった。
なぜ痛くなかったのか?
採血針は進化したか?
それとも、
この人は選ばれし
「採血の神」なのか?
ライブを観ているようだ。
2本目の試験管状の容器に、
どんどん増えていく赤い血液。
「はい、もういいですよ~、お疲れさまでした😊」
神は、顔の向きを少し右にずらすと、
私の前に採血を終えた人に向かって
笑顔でそう言った。
なかなか自分の血を、
これだけの量見ることがないからか、
こんなことを思う。
私がいろんなことを思いながら生きていられるのも、身体の中で常に、生きるための循環が静かに繰り返されているからだ。
これが、無意識下に行われているのだから、生物の身体って本当にすごい構造だと思う。
今、こうして採られた血も、
私が喜んだり悲しんだりしながら生きる、
その土台になってくれている。
こんなに自分のために、黙ってせっせと栄養だの酸素だのを届け続けている「血」を感じることができるのは、怪我して出血した時と、採血の時ぐらいじゃないだろうか。
いい時も悪い時も、淡々と「生きる」ということをやってのけている自分の身体に、感謝せずにはいられない。
「はい、針を抜きますね〜😊」
物思いにふける私を、
我に返らせてくれる神の穏やかな声。
すっと針を抜くと同時に、血を抑えるためのコットンが腕の上に。
そしてすぐに、正方形の絆創膏が私の腕に貼られる。
「しばらく抑えていてくださいね☺️」
私は促されるまま様子見フェーズの椅子に座る。
次の採血者が、神の前に前進する。
彼女もまた、
血管が一筋縄ではいかないタイプの方のようだ。
「いつも血管見つけにくいって言われる?☺️」
多分、私以上に血管が言うこときかないタイプかも。
神の投げかけた質問に、
採血者は申し訳なさそうに答えた。
「はい」
神は、「やっぱり」と言うような表情を浮かべて、一瞬私の方に目を向けました。
目が合う神と私。
「手強い方、来られましたよ」とでも言うようなそのにこやかな表情は、横で採血を見守る私を、まだ舞台を愉しんでいる観客として、輪に入れるように優しく包み込んだ。
キラキラのオーラを放ちながら、
舞台から観客席の端から端まで気を配り、
何公演もこなしているはずなのに、
そんな疲れを見せない神という主人公。
私は今日、
採血をしたのではない。
舞台公演「採血の神」を
鑑賞したのだ。
痛くないように針を刺せる技術はもちろん、
機嫌良くマルチタスクを確実にこなすスキル。
その場にいる誰もが置いてけぼりにならないコミュニケーションと声かけは、もはや神だと思う。
きっと、最初は神も神ではなかったはずだ。
誰にも初めてが存在する。
きっと過去に、
上手くいかないこともあったはず。
だけど、
一枚ずつティッシュを重ねていくように経験し、コツを掴み、流れを読み、
寄り添えるようになっていく。
この経験値、本当に貴重だと思う。
すべてがかけ合わさった、
熟練の職人技だと思う。
「はい、お疲れ様でした〜☺️」
「ありがとうございました」
会釈とともに小声でお礼を言い、
神の笑顔に見送られながら、
私は舞台を後にした。
あの後、あの一筋縄ではいかない血管の方も、
神の数ある引き出しの中の術によって、
無事に採血を終えたに違いない。
家路につき、腕の絆創膏をそっとはずす。
血の一滴も滲んでいない絆創膏に、
あれは夢だったのかと思いながら、
私は夕飯の準備に取りかかった。
お読みいただきありがとうございました^^
採血だけで3000文字も書いてしまいました💦
日本中の「採血の神」に敬意を表して
書かせていただきました🩸
これで、【健康診断2026】シリーズは終わります。
ありがとうございました🫶
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