考えすぎて眠れない夜に|夜の心に、小さな休廷を
夜になると、
昼のあいだは脇に置いていたことまで、静かに戻ってくることがあります。
あの返事。
あの沈黙。
あの言い方。
もう少し違う形があったのではないかと、
眠る前になってから、心だけが静かに忙しくなる夜があります。
部屋はちゃんと静かなのに、
胸のあたりだけ、まだそわそわと居場所を探しているような夜もあります。
肩が少し上がったままだったり、
奥歯に、うすく力が残っていたり。
考えている、というより、
どこかでずっと、自分を問いつめているような夜があります。
それだけ、今日のことをちゃんと受けとめようとしてきた夜なのかもしれません。
そういう夜の心は、
ときどき、小さな法廷に似ています。
言えなかったことが並べられて、
できなかったことが順番を待って、
ほんの少し気になった表情まで、
証拠のように思えてしまう。
裁く人も、裁かれる人も、
どちらも自分。
だから、休む合図を出す人がいなくなってしまう夜があるのかもしれません。
けれど、
今夜のうちに結論を出さなくてもいいことは、
たぶん、思っているよりたくさんあります。
うまくできなかった理由を、
今日の言葉で、きれいに説明できなくてもいい。
気持ちに、まだ名前がつかなくてもいい。
白か黒かを決めないまま、
いったん机の上に置いておく夜があってもいい。
法廷のそとでは、からだが先に知っていることもあります。
肩の高さや、奥歯の固さ。
言葉になる前に、からだがそっと出している声かもしれません。
だから今夜は、無理に言い分を整えなくてもいい。

もし少しだけ心が向いたなら、
奥歯に、どのくらい力が入っているかを、
ただ確かめるだけでいい。
緩めようとしなくても、今夜は気づくだけで。
心の中に、
「今日は、休廷」と書いた小さな札が
もう置かれているかもしれません。
今日は、休廷。
先送りでも、投げ出しでもなく。
まだ言葉にならないものを、
まだ結論にしないでおくための休廷。
「まだ」は、
遅れている、という意味ではないのだと思います。
まだ苦しい。
まだ決められない。
まだうまく言えない。
その“まだ”は、
今の自分を置き去りにしないための、
静かな待ち方なのかもしれません。
だから今夜は、休廷のまま眠っていい。
結論が出ないままでも、今夜はそのままで。
ゆきの

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