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すれ違ったあとの夜|反対ホームにも、灯りは残る

四月の夕方の駅は、人の流れが少し変わります。


ホームに立って、線路を見ていると、向こう側に人が立っているのが見えます。


距離があって、顔はわからない。
でも、同じように電車を待っている。

同じ夕方の中に、いる。


誰かとすれ違ったあとの夜が、心に残ることがあります。


大きな言い合いをしたわけでもない。
何かが壊れたわけでもない。


ただ、同じ方向を向けなかった気がした。


そのことが、思っていたよりも長く、胸のあたりに留まっていたりします。


あの人はどう感じたのだろう。

伝え方が、違ったのだろうか。

それとも、あの人も同じようなことを、考えていたのだろうか。


問いが、電車を待つあいだにも、静かに続いていたりします。

 
 



そのとき、反対ホームの灯りが目に入りました。

こちら側の列が動くたびに、向こうの灯りも揺れて見えた。


消えているわけではない。
ただ、今は反対側にある。


それだけのことでした。


距離があるから見えにくいだけで、あの人の中にも、何かが灯っているのかもしれない。


離れていることは、消えたことではないのかもしれない。


そう思えた瞬間、足の裏から少しだけ、力が抜けていきました。
知らないうちに、少し踏ん張っていたのかもしれない。



四月の光は、まだ少し揺れています。

朝は春なのに、夕方は冬の名残が混じっている。


でも、線路の向こうの空は、その迷いごと、やわらかく受け取っているように見えました。


電車が来るまで、ただ立っていても。


それで、今夜は、十分なのかもしれません。



ゆきの




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