身体が勝手に身構えてしまう夜に|古い折り目に、今夜は触れるだけ
こんにちは、ゆきのです。
引き出しの奥から、
古い手紙を出しました。
何度も折りたたまれてきた紙は、
広げても、すぐに元の折り目に沿って戻ろうとします。
少し力を加えても、
しばらくするとまた同じ場所で折れていく。
その様子を見ていて、ひと息ついてしまいました。
新しい職場に移って数ヶ月が経った頃、
「もう慣れたね」と言われて、そうですねと返しながら、
喉の奥に何か引っかかるものを感じていました。
確かに声は出るようになった。
廊下を歩く速さも戻ってきた。
でも、会議室に入る前にドアを握ったまま一度だけ息を止めること。
自分の意見を言う前に、まず笑顔を先につくること。
それらは、帰り道の電車の中でやっと気づきました。
必要でない場所で、まだ同じ形に折りたたんでいた。
身体は、痛みより先に、その感覚を覚えていた。
大きな声。
急な沈黙。
考えるより先に、折り始めている。
取り外せないのではなく、合図が届く前に、もう同じ折り目に沿って折り始めているのです。

いつだったか、こう言われたことがあります。
「その折り方は、ずっとあなたを守ってきたんですよ」
「いまの空気を、身体がまだ読み間違えているとしたら。
少しずつ、知らせてあげることはできるかもしれない」
直す、でも捨てる、でもなく——
「知らせてあげる」という言葉が、思いのほか長く残りました。
折り目は、紙を弱くするわけではないのかもしれません。
折られた跡には、通ってきた時間の分だけ別のかたさが生まれている。
ただ、同じ場所だけを繰り返し折ると、紙は薄くなっていく。
今日ここにある折り方は、あなたが生き延びてきた方法です。
急いで変えなくていい。
でも、広げてみることはできます。
一度だけ、別の線に沿って折ってみる。
合わなければ、また元に戻せる。
緊張が少しほどけてくる季節に、初めて自分の折り方が見えてくることがあります。
知らないうちに息を止めていた瞬間に気づいたなら、それだけで十分です。
責めなくていい。
「また同じ折り目だ」と気づくだけで、次の折り方を一つ増やすことになります。
引き出しへ戻す前に、今夜は一度だけ、別の形に折ってみました。
少し迷ってから、また元の折り目に沿って畳み直しました。
その紙は、今夜ひとつだけ、別の折り目を知ったまま、
引き出しの中で静かに休んでいます。
ゆきの

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