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46歳、体外受精で妊娠した私の記録─ NTが厚めと言われた日


最初に「異変」を告げられたのは、
1月7日、妊娠10週5日の妊婦健診だった。

「首の後ろに、
4ミリのむくみがあります」

医師は淡々と、そう言った。

染色体異常の可能性があること。
詳しい検査ができる医師のいる日に、
改めて受診したほうがいいこと。

説明は、驚くほど静かだった。

それなのに、
その言葉だけが、
頭の中で何度も繰り返されていた。



私には、上に2人の子どもがいる。

中学1年生の女の子と、
小学5年生の男の子。

2人とも、妊娠中の経過は
比較的順調だった。

「むくみがありますね」
なんて指摘されたことは、
一度もなかった。

だから、
そう言われても、
何がいけないのか、
正直、よく分からなかった。



分からないまま、
その場で質問した。

すると医師は、
むくみがある場合、
染色体異常などが疑われることがあること。

一方で、
何事もなく、
自然に消えていくこともあること。

そう説明してくれた。

「あるかもしれない」
「ないかもしれない」

どちらも、
はっきりしない言葉だった。



診察室を出たあとも、
不安は形にならないまま、
胸の奥に残り続けていた。

大丈夫かもしれない。
でも、違うかもしれない。

その「間」に、
私は一人、
ぽつんと立たされているような気がした。



主人は、意外なほど楽観的だった。

「むくみは消えるでしょ」
そんなふうに思っているようだった。

会計を待つ間、
何気なく口にした。

「私、高齢だからなのかな……」

その一言で、
堪えていた感情が、
一気にあふれ出してしまった。

大学病院の、
人であふれた会計待ちの席。

こんな場所で泣くつもりなんて、
なかったのに。

涙は、
どうしても止まらなかった。



普段の私は、
どちらかと言えば前向きなほうだ。

高齢だと分かったうえでの妊活。
リスクがあることも、
覚悟していたつもりだった。

それでも心のどこかで、
「私もきっと大丈夫」
そう思っていた。

47歳、48歳でも
健康な子を産んでいる人はいる。

上の子2人も、
何の問題もなかった。

43歳のときに流産は経験したけれど、
あのときは胎嚢も確認できない、
ごく初期だった。

今回は、
心拍も確認できている。
エコーには、
小さな身体を
可愛らしく動かす姿も映っていた。

それなのに――
その成長を、
心から喜ぶことができなかった。

ショックの気持ちが大きすぎて、
「大きくなってるね」
そう思う余裕が、なかった。



だから、きっと大丈夫。
そう思おうとしていた。

そんな、
根拠のない自信があった。

だからこそ、
自分の身に
こんなことが起きるなんて、
思ってもいなかった。

ショックだった。



帰宅してから、
私は完全に「検索魔」になった。

「首の後ろのむくみ」
「NT 厚い」
「NT 消えた」

少しでも、
前向きになれる情報が欲しくて。

むくみがあったけれど、
その後消えて、
健康なお子さんを産んだという人の
Instagramやブログを
片っ端から読み漁った。

このとき初めて、
染色体異常が起きると
何が起こり得るのか――
その知識が、
自分にほとんどなかったことに気づいた。

何も知らなかった。



情報を探す中で、
Instagramで
温かい言葉をかけてくれる人たちの存在に
何度も救われた。

同じような経験をした人が、
こんなにもたくさんいることに、
正直、驚いた。

「何があっても、必ず乗り越えられます❤️
うちの三男も21トリソミーです。
とても可愛くて、癒されます😊」

「我が家の次男はダウン症です。
とってもかわいくて、
とっても幸せです」

画面越しの言葉なのに、
胸にまっすぐ届いた。



そうだよね。
染色体異常ということは、
ダウン症の可能性もある。

どんな特性があるのか。
周りに、どんな影響があるのか。
産むとしたら、
親として
どんな責任を果たす必要があるのか。

ダウン症だけじゃない。
ほかにも、
いろいろな可能性を
考えなければならない。

まさか、
自分がこんなことを
真剣に考える日が来るなんて。



それでも――

次のNTスクリーニング検査で、
「薄くなってますね」
そう言われるかもしれない。

その可能性だって、
まだ残っている。

先のことを考えるのは、
次の診察の結果が出てからにしよう。



次回の受診に向けて、
上司に
「精密検査が必要になった」ことを
伝えなければならなかった。

でも、
理由を言葉にしてしまったら、
本当になってしまいそうで。

口に出すことが、
どうしてもできなかった。



とにかく今は、
信じていたかった。

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