KILLING TIME
どこへ向かうでもない夜の道。
沈黙が充満した、逃げ場のない空間。
お互いに何かを隠し持ったまま、時計の針だけが淡々と「今」を削り取っていく。
どこに行けばいいのか、本当は誰もわかっていない。
ただ、こうして静かに、丁寧に、二人の時間を殺しているだけ。
私たちは、自分たちの「今」を、少し離れた場所からじっと俯瞰している。
「ねえ、教えて。これはただ、時間を潰しているだけなの?」
誰かが問えば、「ただの暇つぶし」と答えるだろう。けれど、これはそんなに健全なものではない。
私たちは今、明確な意図を持って、自分たちの「時間」を殺している。
生産的な会話も、未来の約束も、ここにはない。
ただ、意味のない沈黙を積み上げ、タバコの煙が消えるのを眺め、指先でスマホの画面を無機質にスクロールする。
そうやって、二人の間にある「今」という時間を、一滴残らず使い果たしていく。
私たちは、驚くほど「いい人」の顔をして隣り合っている。
けれど、その指先の数センチ下では、静かな破滅が脈打っている。
考えていることを口にすれば、何かが決定的に壊れてしまう予感がある。
引き返すことはできたはずだ。
でも、私たちはあえて、間違った方向へハンドルを切ろうとしている。
誠実であろうとする自分と、破滅を願う本音の間で、何も生み出さず、何も約束せず、ただ時間がすべてを押し流し、手遅れにしてくれるのを待っている。
「どこへ行けばいい?」
その問いに答えが出ないのは、本当はどこへも行きたくないから。
あるいは、終わりの場所をもう知っているから。
「ねえ、私たちはただ、時間を殺しているだけなの?」
その問いは、相手に届く前に夜の静寂に吸い込まれていく。
窓の外で、世界が勝手に夜に飲み込まれていくのを、私たちはただ、冷めた瞳で眺めていた。
この「暇つぶし」が、自分たちに許された最後の時間であるかのように。
贅沢に、そして残酷に、私たちは時間を殺し続ける。
