薬を渡すだけじゃない。病院薬剤師が、ここにいる理由
「薬剤師って、薬局の人でしょ?」
先日、入院中の患者さんのご家族に声をかけたとき、こんな言葉が返ってきました。白衣を着てベッドサイドに立っているのに。
思わず少し笑ってしまいました。
怒っているわけじゃありません。
むしろ、私はこういう時
「そうか、まだそこから始まるんだ」
と、いい意味で気合いが入るんです。
最近はいろんな方にHONOを知ってもらう機会が増えてきました。文章を書くのが楽しくて、方向性をやや見失ったりもしているので(笑)、ここらへんで一回、ちゃんと本業のお話をしてみたいなと思います。

病院薬剤師って、何をしているの?
薬局の薬剤師さんが「処方箋を受け取り、薬をお渡しする」ことを主な業務(ほんとは、在宅も含めて薬局から飛び出してたくさんのお仕事をしてるんですよ!)とすれば、病院薬剤師はちょっと違います。
薬を「調剤する」ことはもちろんですが、
それだけではとても収まらないのが病院薬剤師の世界。
「え、そんなことまで?」という驚きを、
いくつか持って帰ってもらえたらうれしいです。

① 毎朝、ベッドサイドへ行く

「薬剤師って、調剤室(薬を準備する部屋)の中にいるんじゃないの?」
そう思う方も多いかもしれません。
でも私は毎朝、担当病棟に上がり、患者さんのベッドサイドに立ちます。
「昨日から飲み始めた薬、気持ち悪くなりませんでしたか?」
「むくみはどうですか?水分はちゃんと飲めてますか?」
そんな会話の中で、副作用のサインを拾ったり、
服薬のしにくさを把握したりします。
これが「病棟業務」と呼ばれるもので、今では多くの病院で薬剤師が病棟に常駐するようになっています。
実は、ある患者さんの「なんか最近ぼーっとする」という一言を聞き流してしまったことがあって💦
後で確認したら、飲んでいる薬の血中濃度(血液の中の薬の量)が想定より高くなっていました。
あのときの反省が、
今も私を毎朝ベッドに向かわせています。
② 医師や看護師からの「飲み合わせ相談」窓口になる

「先生にきくほどじゃないけど、ちょっと確認したくて……」
そんな声がナースステーションで飛び交うとき、呼ばれるのが私たちです。
これは「DI(ドラッグインフォメーション)業務」といって、薬に関する情報を医療スタッフに提供する仕事です。
「この2つの薬、一緒に飲んで大丈夫ですか?」
「腎機能が落ちている患者さんに、この量は多くない?」
特に私は腎薬物療法の専門でもあるので、腎機能(腎臓がどれだけ働いているか)の数値をもとに薬の量と種類を調整する相談が日常的に届きます。
いや、届きますというより、そればっかりか???
腎臓の働きが落ちると、薬が体の外に出にくくなり、気づかないうちに副作用が起きやすくなります。だからこそ、この視点は見落とせません。
「情報を探す」より「解釈して伝える」。
それがDI業務の本質だと、私は思っています。
③ 会議室で、多職種と一緒に議論する

会議室に持ち込んで議論します!
「薬剤師が会議に出るの?」
出ます、がっつり。
私が関わっているのは主に、NST(栄養サポートチーム)と褥瘡(じょくそう)チームの2つです。
NSTとは、患者さんの栄養状態を医師・看護師・管理栄養士・理学療法士などと一緒に考えるチームのこと。薬剤師は「この薬が食欲を下げていないか」「点滴と飲み薬のバランスはどうか」という視点を持って加わります。
褥瘡チームでは、皮膚の状態を見ながら、傷の治りを助ける薬や栄養の話をします。
私はここに認定褥瘡薬剤師として関わっていて、褥瘡(長い間同じ姿勢でいることで皮膚がただれてしまう状態、いわゆる「床ずれ」)の治療に使う軟膏や、傷の治癒に影響する薬の管理を担当しています。
一つのベッドを、いろんな職種が違う角度から見ている。そのうちの一角に、薬剤師がいます。
私はこの2つの分野+腎臓領域がメインですけど、
他にも、感染症や悪性腫瘍、精神疾患など、病院薬剤師はいろんな専門分野に特化した人も多いんですよ✨
④ 地味だけど、崩れると全部崩れる — 薬剤管理の仕事

一番みんなに知ってほしい💦
さて、華やかな話が続いたので、
最後は少し地味な話を。
薬剤管理業務。
麻薬(医療用麻薬。強い痛みをとるために使われます)や向精神薬(精神に作用する薬)の在庫管理、使用期限のチェック、病棟の薬の補充……。
「え?ただの在庫管理でしょ?」
と言われたことがあります。
でもこれ、法律(薬剤師法・麻薬及び向精神薬取締法など)に基づいて厳格に管理しなければならないもので、薬剤師にしかできない業務です。
そして最近、
もう一つ大きな仕事が加わっています。
「咳止めの薬が手に入らない」
「抗生物質が手に入らない」
あなたも聞いたことありませんか??
ニュースでも取り上げられるようになった、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の供給不足問題です。製造上の問題などから特定の薬が突然入荷できなくなることがあり、病院では代替品を探したり、処方を変更できるか医師と相談したり、患者さんへの説明を考えたり——その調整を担うのが薬剤師です。
薬が「ある」のが当たり前だと思われている。
でも、その「ある」を守るために、見えないところで誰かが動いています。
目立たないけれど、確実に誰かの命に近い仕事。
そう思うと、棚卸しの帳票をめくる手にも少し力が入ります。
私が、ここにいる理由
「薬を渡す」だけが仕事だったら、私は病院薬剤師になっていなかったかもしれません。
患者さんのそばにいて、
チームの中に混ざって、
情報を使って誰かの判断を助ける。
そのすべてが、私の「ここにいる理由」です。
まだうまく言葉にできていない部分も、
正直あります。
だからこそ、これから少しずつお話しできたらいいなと思っています🌸
薬剤師の方にも、他職種の方にも、そして「病院の薬剤部ってどんなところ?」と思っている方にも届くといいな💕

🌸マガジン紹介🌸
ジャンル別にまとめています。
気になるジャンルがあったら覗いてみてください😊
▶回復期リハでの薬剤師の思考ステップが気になる方はこちら
▶腎機能と薬に関することが知りたい方はこちら
▶褥瘡(床ずれ)についてもっと知りたい方はこちら
▶管理栄養士さんとの連携事例を知りたい方はこちら
▶一般の方向けはこちら
▶HONOの苦悩と葛藤の日々を読んでみたい方はこちら
▶ママとしての奮闘記が気になる方はこちら
▶素のHONOの考えと、HONOの好きな記事を集めたものはこちら
▶アホなHONOしか興味のない方はこちら🤣
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