どちらかが彼女を殺した 感想 ネタバレあり
解説の穴
「潤一は推理小説ファンらしいので、当然園子の利き手には注意を払ったはずだ(中略)つまり潤一は園子の利き手の特殊性を知らなかった」(袋とじ5P)とあるが、園子は自宅に潤一を招いて手料理を披露している。(27P)
園子は鉛筆と箸以外は左利きであり(96P)、料理をする際は当然左手を使っているはずだ。
普段はそこまで観察していなかったとしても、殺害直前にワインを飲みながら会話をしており、園子がグラスを左手で持っているところを見ているだろう。
つまり、潤一は利き手に注意を払ったはず、という推測は的外れである。
潤一は園子の利き手に注意を払っておらず、右利きだと思っていた、というのが正解だろう。
2袋目の開け方で犯人が分かる、というロジックの穴
上記のガバは1袋目の開け方の問題であり、そこまで大きな問題ではない。
問題なのは2袋目である。
「どちらの袋にも妹さんの指紋が、同じように付いていました」(78P)
「園子さんが自殺したのではないという証拠なら持っている」(313P)
「それはならない。誓ってもいい」(343P)
という加賀の発言から、2袋とも右手で開けたような指紋の付き方をしていることがわかる。
そして、佳世子が左手で袋を開けるところを見ていたことから、康正は犯人が潤一であると確信した。
というのが袋とじ解説のロジックであり、「左手で」の3文字を文庫化の際に消したことから作者の想定解も潤一であることがわかる。
そして、上記のロジックには穴がある。
佳世子が右手で袋を開けた可能性を一切考慮していないのだ。
作中には佳世子が園子の利き手を正しく認識しているか否かは書かれていないが、以下のようにどちらであっても上記の可能性を否定できない。
結論から言うと、佳世子が犯人である場合、2袋目を左手で開ける理由が存在しない。
園子は右利きであると誤認していたため
園子は左利きであると認識しているが、包丁に付いた削りカスから、潤一が利き手を誤認していると推測し、彼に罪を被せるため
真犯人はどちらなのか
右手で開けているから潤一、が破綻した以上、作中の情報からは分からないと思う。
Nシステムが深夜2時以降に練馬方面へ向かうミニクーパーを記録していれば佳世子だろうし、タクシー運転手が深夜2時以降に練馬方面へ潤一を乗せていったという証言が得られれば潤一だろうが、そういった地道な捜査は読者に明かされることはないだろう。
感想
論理パズルで犯人当てという発想は良かったと思う。
発想だけの出オチ小説じゃねーか、とも思った。
実は全員ずっと全裸だったとか、谷底から気合で水汲んで氷の橋を作るとかに比べると勢いがない。
勢いでゴリ押せないから余計に論理的破綻に目が行ってしまうのだなあ。

