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【読書記録】「ジェリーフィッシュは凍らない」をただただ語りたい

はじめに

タイトルがなんとなくジョジョっぽい、で有名な本作。
第26回鮎川哲也賞の受賞作品なので、クオリティは保証されており、その内容はやはり、素晴らしいの一言であったので、とりあえず語りたい。

あらすじ

特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船<ジェリーフィッシュ>。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー六人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。
二十一世紀の『そして誰もいなくなった』登場!選考委員絶賛、精緻に描かれた本格ミステリ。

市川憂人著。初出は2016年。
世界観は少し特殊で、近未来ならぬ近過去と呼ぶべきか。
80年代の海外で、まだコンピュータもそこまで普及していない時代ではあるが、「ジェリーフィッシュ」と呼ばれる飛行船が生み出された世界。
舞台もU国となっており、R国やC国、J国といった名称も登場する。
別に実際の国名を使ってもいいんじゃないかな、と思わないでもないが、選考委員の北村薫氏によれば、こういう感じが一昔前のアメリカンコミックの雰囲気を醸し出しているとのこと。
まあ全体的なノリが海外の警察ドラマ感はあり、全体的にテンポよく進んでいくので読みやすい作品になっている。

ネタバレ抜き感想

まあネタバレ抜きっつっても、あらすじで思いっきり「そして誰もいなくなった」のオマージュです、と言ってしまっているので、お分かりの通り、飛行船に乗ってた6人は全員殺されてしまう。
物語は飛行船の中で起きた出来事と、飛行船で起きた事件を捜査するパートが交互に描かれている。
主人公は女性刑事のマリア。そしてその部下の漣のバディモノとなっている。
大雑把な性格だが推理力はあるマリアと、そのマリアに小言を言いながらも
従う漣、というなかなかに個性あふれる二人組で、この辺もアメドラっぽくて良い。
全体的な謎としては、「6人しかいない飛行船の中で全員が他殺だった。一体誰が犯人なのか」という、非常に古典的、王道的なストーリーである。



ネタバレあり感想

いわゆるSFxミステリ、という感じで、なかなか新型飛行船ジェリーフィッシュの話が面白かった。
これは水素やヘリウムといった軽い機体を詰め込んでいる訳ではなく、「真空」を包括しており、その浮力で浮くというトンデモな乗り物なのである。
もちろん、真空に耐えられる素材が必要になるが、殺された研究者6人というのが、この新素材を発明した、という話になっている。

で、当然のごとく、発明者は別にいて、彼らはそれを奪っただけ。その怨恨が事件の動機となってくる。
本作は「犯人は誰か」というフーダニットと、「いかにして極寒の山中から逃げたか」というハウダニットがトリックの肝となっている。
トリック自体はそこまで大がかりなものでもないが、犯人当てについては不可能に近い。
刑事であるマリアの衝撃の一言が、

「あんた、誰?」

なのである。
それ以降、犯人の名前は明かされず、「青年」とだけ描写される。
本格ミステリ的には、一番ありえない人物が犯人であるのが様式美的な要素があるが、ある意味でその様式美に則っている。
恐らく、この「あんた、誰?」は、「十角館の殺人」のあの一文を大いに意識しているのだと思われる。
ただ衝撃度に関して言えば、やはりあの一文には届かないかな、という感じ。
やはりどこの誰か分からない犯人、というのは意外ではあるけれど、その一点だけになってしまう。

ちなみに。
鮎川哲也賞の選考者書評を見る限りは、全員一致での受賞となったようである。
個人的に選考者の書評は結構好きで、読んでいると、「結構揉めた末に受賞者が決まったんだな」とか「どちらかというと消去法で決まったのか」というのが分かるので面白い。
そして全員一致で決まった場合は、当然ながら傑作が多いのだが、本作も例にもれず、傑作と呼んで差支えはないだろう。

マリア&漣シリーズは現在5巻まで刊行されている。
個人的にパラレルワールド的な世界観は結構好きなので、今後も読んでいきたいシリーズとなった。

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