嘘っぽいっていうか、嘘だもの。(映画「アメリカン・フィクション」を観て)
「オッペンハイマー」や「落下の解剖学」、「バービー」、「関心領域」など佳作揃いだった第96回アカデミー賞。作品賞に聞き慣れない作品がひとつ、それが「アメリカン・フィクション」である。
Amazon MGMスタジオ経由でアメリカでは劇場公開された本作だが、日本国内では残念ながら直接Amazon Prime Videoでの配信。配信当初は「字幕がひどい」という悪評がたち、私も配信当初はうんざりして視聴を止めていた。
だが、2025年2月24日限りで配信終了という報が。慌てて再視聴を試みた。字幕もきっちり修正されていて、何よりめちゃくちゃ面白かった!
数年間、出版が叶わなかった黒人の小説家モンク。大学教員の職も停止され、なおかつ母親の介護費用がもりっとかさんでしまう事態に。困ったモンクは、ペンネームでステレオタイプ的な黒人小説を執筆する。“ギャグ”のつもりだった作品が、たちまちベストセラーになってしまうという喜劇である。
Netflix配信作品「モー」にも通ずるが、とにかく主人公モンクのキャラクターがチャーミングだ。真面目だがアイロニーで口が悪く、うっかり他人を攻撃してしまう性格。自らの欠点を認めながらも、なかなか改善できないモンクに、思わず共感&同情してしまった。
真面目に映画評を書こうとすると、「SDGsウォッシュ」に代表される企業や個人の欺瞞をとことん突くハメになり、文字を重ねるたびに胡散臭くなっていく。作中でモンクが期待されていた“黒人っぽさ”って、日本国内でいうところの、“女性活躍”とか、“マイノリティの視点で描いた小説”とか、分かりやすくカテゴライズされた枠“のみ”で語れる事象(呼称)であって、語るのさえ恥ずかしくなってしまう。お前もその“土俵”にのっかっちゃうの?てな感じだ。
だから、本作の面白さを語るのはとても難しい。
でも、人にとっては“嘘っぽく”感じる物事も、人によっては“リアルっぽく”感じる物事もあるわけで。最近だと、恋愛リアリティショーとか、オーディション番組とか、もそうではないか。涙を流すほど感動する人もいれば、“こんなのくだらないだろう”といってハナから観ないと決める人もいる。私もどちらかといえば後者だけれど、後者は後者で、何らかのバイアスがかかっているような気もする。
そういったドグマから、誰も逃れることはできない。
「アメリカン・フィクション」は、その名の通りフィクションなんだけど、事実は小説より奇なりということで、現実社会の“フィクションっぽさ”をこれでもかと突きつける、ライトヘビー級程度の攻撃力は有している作品だ。(って、そんなボクシング喩えもまた、“嘘っぽい”よね)
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