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超わかりやすく読める、最低限だけ知っておきたい参政党の憲法案のお話!

1.はじめに

選挙でも注目される参政党ですが、その憲法案(「新日本国憲法(構想案)」)というのが話題になっています。
内容はリンク先のとおりです。

今回の記事ではこの参政党の憲法案についてのお話です。
といってもすべての条文をえんえんと解説するというのは退屈で読んでいられない人もいるでしょうし、他の専門家が似たことをやっていると思いますので、ここでは最低限、参政党の憲法案を見るうえで押さえておきたいことだけをごくごく簡単に説明します。

★急いでいる方は、まず本文はすっ飛ばして、「1」から「16」までの項目のタイトルだけ先に読んでみてください。なんとなく問題点がうっすらと頭に入ってきます。そのあとで本文を改めて最初から読み直せばわかると思います。

2.参政党はこの憲法案を作るのにどれだけ手間暇をかけたの?

まず、どれだけの手間暇をかけてこの憲法案を作ったのでしょうか。
ずばり、500人以上が参加し、2年間の年月をかけて11のチームの検討した内容をまとめたものです。(下記リンク先参照)
英知を結集し、相当な労力をかけて、十分すぎるほどの時間をとって作った力作と言わなければならないでしょう。
神谷代表は
「この憲法案は、日本人の理念や価値観を反映し、日本が自立するために必要なものとなるよう、真摯に議論を重ねてまいりました。」
と言っていますので、深い覚悟を決めて真剣な思いでまとめたものだということになります。

さらに次のリンク先を見る限り、弁護士資格を持っている方が「創憲チーム責任者」の立場としてとりまとめをしておられたようですので、専門家としての監修も経ているということができるでしょう。

3.この憲法案は、参政党がめざす国の姿を示しているの?

この憲法案は、参政党がめざす「国の姿」「国のあるべき形」を示す案なのでしょうか?
まさしくそのとおりです。上記の代表談話の中で、神谷代表は
「憲法をつくるには、どんな国をつくりたいのか、国家観や哲学が必要です。今回の取組は、一般の国民が憲法づくりを通じて、どんな国を目指したいのか、国の未来を自分たちで考え、議論する大切な機会となりました。」
と言っていますので、参政党がどんな国をつくりたいのかを明確に示して世に訴えるものだということになるわけです。

参政党は、この憲法案に書いてあるような国家を目指しているということでしょう。

4.一般的に、現代国家の憲法にはどのような要素が必要なの?

 まずは最初の話のとっかかりというか、前提論です。
 ここでは参政党の案にとどまらず一般論として、現代国家の憲法にはどのような要素が必要とされるかを軽く確認しておきます。

 あくまで一般的な原則論ですが、憲法には少なくとも①統治機構、②人権規定、の二つが必要とされるのが通常の考え方です。
 ①の統治機構というのは、国家の基本的な仕組みや権限を規定するものです。行政・立法・司法を考えてみれば良いでしょう。
 ②の人権規定というのは、国民の権利(人権、または基本権)を定め、それについては国家権力もむやみに侵害できないように保障をするものです。

 例えば日本国憲法の場合、14条の平等原則(差別禁止)、29条の財産権、36条の拷問の禁止、39条の遡及処罰の禁止、21条の表現の自由、20条の信教の自由、18条の奴隷の禁止などの規定があります。
 

5.参政党の憲法案の具体的な中身の特徴は?

それでは、参政党の憲法案の具体的な中身の特徴はどんなものなのでしょうか。
といっても一つ一つ解説するのではキリが無いので、いくつかトピックをしぼって極力簡単に要点を押さえていきたいと思います。

6.条文の数は多いの?少ないの?

 参政党の憲法案の条文数は、33条しかありません。これだけだと多いのか少ないのかわかりませんが、日本国憲法は103条、大日本帝国憲法は76条なので、相当条文の数が少なくなっています。
 ちなみに今手元にある2012年4月17日刊行の岩波書店の『新版 世界憲法集 第二版』によれば、この時点でのドイツ連邦共和国基本法は141条、フランス共和国憲法は89条(これとは別に人権宣言などあり)です(その後の各国の動向を反映した資料は今手元にないので省略)。

 ずいぶん条文が少ない憲法案ということになりますが、先ほど触れたように、2年の歳月をかけて英知を結集したわけですから、決して「時間が足りなくて短期間でラフスケッチみたいに書いたために少ない条文しか作れなかった」というわけではないでしょう。
 参政党としては、徹底的に討論し検討した結果として、憲法はこの33条だけで十分であり、必要ないものは削った上で、この33条の条文数で、あるべき国のかたち、国家と国民の関係のあり方を描いているという結論に至ったということになると思います。

7.統治機構(国家の機構)はどうなっているの?

 天皇の権限が現在より強まったように見えますが、ただ最終的には内閣の意思に天皇が従い、天皇が政治に責任を負わないことになっているので、そこはここではあまり触れないことにします。
 行政、立法、司法がある点は大きく変わりません。
 「自衛軍」というのを国防のために置くことが明記されています。
 かなり簡潔な書き方になっているので、よくわからない点も多いですが、概略としてはこういう感じです。

8.人権規定はどうなっているの?

 それでは、一方の人権規定はどうなっているのでしょうか。さきほど4.の項で「例えば日本国憲法の場合、平等原則(差別禁止)、財産権、拷問の禁止、遡及処罰の禁止、表現の自由、信教の自由、奴隷の禁止などの規定があります。」と私はコメントしましたが、このような部分は参政党の憲法案ではどのような発展を遂げているでしょうか。

 結論からいうと、上記の人権規定のどれも、参政党の憲法案には存在しません。
  平等原則、財産権、拷問の禁止、遡及処罰の禁止、表現の自由、信教の自由、奴隷の禁止…どれも参政党の憲法案にはまったく存在しないのです。

9.国家が国民を自由に差別できるようになる

 たとえば、次の条文にあたるようなものは何もありません。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(以下略)

日本国憲法

 この条文がまったく存在しなくなるので、理屈としては、参政党の憲法案の世界では、政府や国会が国民を人種、信条、性別…等によって差別しても良いということになります。もちろん逆に差別しなくても良いわけですから、必ず差別が行われるとは限らないでしょうが、差別するにしても差別しないにしても、どっちでも政府や国会は自由に決定できる、ということになります。信じがたいかも知れませんが、身分制度を作ることも当然可能です。

 仮にこの14条と同じような条文があれば、もし政府が国民の一部に対して差別的な政策をしたり、国会が差別的な法律を作った場合、「それは憲法違反だから無効だ。是正せよ」という主張や訴訟ができるわけですが(現にそのような訴訟で憲法違反の判決がくだされたことはあります)、参政党の憲法案では一切そのようなことが不可能になります。

10.拷問ができるようになる

現在の憲法にある次の条文を見てください。

第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

日本国憲法

 これは拷問や残虐な刑罰を禁止する条文です。「残虐な刑罰」の定義については難しい問題ですが、死刑そのものは違憲ではないとしても、例えばノコギリ引きとか火あぶりの刑などは残虐な刑罰といえるでしょう。
 この条文(にあたるもの)も、参政党の憲法案にはまったく存在しないので、公務員による拷問と残虐な刑罰は、少なくとも禁止はされていないということになります。
 もちろんこれも前のと同じで、この条文がなくなったからといって必ずしも拷問や残虐刑が行われるとは限りませんが、それは政府の善意次第です。仮に拷問や残虐刑をやったとしても憲法違反にはならないので、もはや歯止めがないわけです。

11.事後法による遡及処罰と二重処罰が可能になる

日本国憲法にある次の条文を見てください。

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

日本国憲法

これは、前半はいわゆる罪刑法定主義(法律に定めがない行為出ない限り犯罪として処罰を受けない)、さらに事後法による遡及処罰の禁止(ある行為をした時の法律で適法であった行為については、犯罪とされない)を定めたものです。
例えば仮に、2025年4月1日に「ウナギを食べることを禁止する」という法律が施行された場合、2025年3月31日までにウナギを食べた行為について犯罪として罰されることはありません。あくまで4月1日以降に食べた場合だけ罰されるわけです。
後半は読んでそのままで、同じ一つの犯罪については、一度刑罰を受ければ終わりであって、二度以上責任を問われることはないことを保障したものです。

あまりにも当たり前の常識のように見えますが、そんな当然のことをわざわざ憲法に書き込んだ理由は、その当たり前の常識が(もっともらしい大義名分を作って)公権力によって破られた例が古今東西、いくらでもあったからです。
当たり前の常識を破らせないためにこそ、わざわざ憲法に書いて、公権力が違反した場合に憲法違反を主張できるようにしたわけです。

それでは、参政党の憲法案ではどうなっているでしょうか。
もう最初に述べたとおり、こういう規定はまったく存在しません。ですから理屈のうえでは、参政党の憲法案が実際に施行された世界では、事後法による遡及処罰も、同じ罪を理由とした二重処罰も、どちらも憲法違反になることがないので、やろうと思えばできてしまうということになります。

やろうと思えばできてしまいますが、もちろんやろうと思わなければ行われません。それはその将来の時代の政府与党の胸先三寸、善意次第ということになります。参政党の憲法案が実現した世界(表現の自由の保障もないことに注意)で、時の政府与党の善意をひたすら信じるというのも、悪くないのかも知れません。

12.なぜ参政党はたくさんの人権の規定を削除したの?

本当はすべての問題点をピックアップしたいところですが、それだと膨大な長文になってしまうので、これくらいにしておきます。

(一応参政党の名誉のために言っておきますと、まったく人権規定らしきものがないというわけではなく、「主体的に生きる自由」という極めて抽象的な自由が認められており(現在の日本国憲法の13条の「個人の尊重・幸福追求権」に似ているようにも見えますが、趣旨が同じかどうかわかりません)、さらに生存権や教育を受ける権利、また参政権はあります。)

ただ、今の憲法に存在する平等原則、財産権、拷問の禁止、遡及処罰の禁止、表現の自由、信教の自由、奴隷の禁止などの重要な多くの人権規定がなくなってしまうということは、よく覚えておきましょう。

ではそもそもなぜ参政党は、これらの非常に重要な人権規定を削除してしまったのでしょうか。
少なくとも2年間かけて英知を集め、法曹資格のある人が監修したのですから、うっかり入れ忘れたとか、時間が間に合わなくて書き切れなかったということでないのは確かでしょう。

また、「常識的なことだから書かなかったのだ」という説明では納得しがたいことは、さきの11.で述べたとおりです。常識的なことだからこそ憲法に明記して、政府がその常識的な自由や権利を害しないようにしておかないとまずいからです。

ここで先ほどの神谷代表の言葉を思い出しましょう。
「この憲法案は、日本人の理念や価値観を反映し、日本が自立するために必要なものとなるよう、真摯に議論を重ねてまいりました。」
ということでした。
ということは、神谷代表は、ほとんどの人権規定をなくし、拷問や遡及処罰が(やろうと思えば)可能な憲法にすることこそ、日本人の理念や価値観を反映し、日本が自立するために必要だ、と考えていたということでしょう。
そうでないと説明がつきません。
私にはおよそ理解できない発想ですが、凡人の理解できない情熱と理想が何かあるのかも知れません。

13.「これはたたき台だから」「どうせそのままでは実現しないから」で許される話なの?

なおネット上でこの話題を出したときに、一部の人から「これはあくまでたたき台なんだ。これから各党や各界の識者が意見を出して、足りない部分があるならどんどん書き加えていけばいいだけだろう」とか「参政党は議席数が少ないんだから、現実問題としてこの憲法がそのまま実現するわけないじゃないか。もっと現実的な政策課題を考えろ」とかいう指摘や批判を受けました。

一見もっともらしいように見えますが、よく考えてみるとおかしなことに気がつきます。

14.現時点で人権規定が必要だと思ってなかったから入れなかったんでしょ?


まず前半、「これはあくまでたたき台だから、あとで意見をもらって書き加えれば良い」という主張について。

数日や数週間でさらっとまとめたラフなメモみたいなものなら、そういう説明でも納得できるでしょうが、2年という歳月をかけ、500人の関係者が知恵を出し合い、法曹資格者が監修して、「この国のあるべき姿」として打ち出したはずではないですか。

まずその時点で、参政党として必要と考えるものは一応すべて盛り込んであるはずです。この後の議論で外部の意見に従って内容を増やすにしても、それは参政党としては本来必要とは考えてなかった(だけど他の党や識者がいうので妥協して追加する)部分ということになるはずです。

「拷問禁止」や「遡及処罰禁止」などが現時点で必要だと考えているなら、現時点で入れているはずです。
 現時点の案に入っていないということは、少なくとも現時点では参政党としては「拷問禁止を入れる必要はない」「遡及処罰禁止を入れる必要もない」と考え、それこそが「国のあるべきかたち」だと思っていたということを意味するのです。

そういう発想で動いている政党だ、ということでしょう。
あと一言いうと、「足りない部分があるなら言ってくれれば書き加える」といっているとすれば、それは同時に「もし特に指摘や異論が無ければこのままの内容でいい」と思っていたということを意味します。

15.「党は議席が少ないからどうせ実現しない」って、擁護になるの?

 最後に「参政党は議席数が少ないんだから、どうせこの憲法案は実現しない。もっと現実的な課題の話をしよう」という類の主張については、現実にはそうかも知れませんが、それって説明としてはおかしくありませんか?

 「参政党は議席数が少ないから、まずいことは起こらない。大丈夫」って言っているのと同じですよね。

 つまり逆からいえば「参政党は議席数が増えるとまずい」と言っているわけです。参政党に投票して議席数を増やしたら良くない(議席が増えれば増えるほど、このおかしな憲法案の実現に近づく)ということを意味するわけではありませんか。

16.おわりに

 手短に済ませるつもりでしたが、少々長くなってしまいました。ただ私としてはできるだけ専門用語や細かい論点は避けて、直感的にわかるようなトピックだけに絞り込んだつもりです。
 今後の選挙(今年の参議院選挙だけに限りません)の参考にでもしていただければ幸いです。




 




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