若き力 出番をつくるは 年の役
二十年ほど前に仕事でご縁のあった方と、久しぶりにお酒を飲んだ。
その方は上場会社の役員を任期で終え、今は顧問として会社に関わっている。
午後五時に始まり、七時半にはきれいにお開き。
無理もなく、とても気持ちのいい時間だった。
話題は、神社のお祭りのことになった。
近くの公立高校の吹奏楽部や和太鼓部に、奉納演奏をお願いした話だ。
全国大会に出るような部活ではないので、普段は発表の場があまりない。
こちらから声をかけると、とても喜んで引き受けてくれた。
最初の演奏は、正直なところ、音が外れているところもあった。
それでも境内に集まった人たちは、大きな拍手を送った。
演奏する側も、聴く側も、同じ空気の中で楽しんでいた。
二年、三年と続けるうちに、音は確実に良くなった。
上手になったというより、「人前でやる」という経験が、彼等彼女等を育てたのだと思う。
その話をすると、相手の方がこんなことを言った。
「今の子って、意外と意識高いんですよ」
確かにそうだ。
ゴミはきちんと片付けるし、挨拶も丁寧。
言われなくても、ちゃんと場をわきまえている。
大人が思っている以上に、よく見ている。
その方は続けて、
「会社でも、若い人には場を与えて任せることが大事なんです」
と言った。
やる気は、押しつけても出てこない。
少し背伸びできる舞台があると、人は自然に動き出す。
年をとるというのは、前に出続けることではなく、
若い人が安心して前に出られるよう、舞台を整えることなのかもしれない。
それは案外、面白い役回りだ。
七時半に店を出て、そんなことを思った。
年を重ねるのも、悪くない。
静かに、でも確かに、次の世代につながる仕事ができるのなら良しと思う。
拍手して あとは若さに 任せとく
