見出し画像

ちょっとしたハンドクリームの話

 手を洗うと、ハンドクリームの名残が指をヌルッと滑らせる。
いくら水仕事に強いものでも塗り直し。

 ハンカチで水滴を拭って、新たにクリームを甲にのせる。何かの儀式みたいに。
 
 カバンには二種類のハンドクリームが、リビングには四種類のパッケージが顔を並べて、用途や気分で使っている。

 オレンジラベンダーの香りがする缶は、気が滅入った時に気付け薬代わりに使う。とてもお値段が良く、買い物で溜まったポイントを使って購入した。
 
 かさつく時は、尿素20%入りのクリーム。
肘までたっぷり塗って保湿する。就寝前は白くなった肌を綿の手袋で覆う。
 ささくれがある指先はネイルが映えない。
明日も気持ちよく過ごせる、おまじない。
 
 他の二つは、youtubeで高評価だったもの。
洗顔を終えたあとに手へ刷り込む。
温かみを感じたら完了。
家事やお手洗いのあとに小まめに塗ると、冬は赤切れができない。
 
 指のしわへ沿うようにできる傷は、関節を曲げるのも苦痛で、財布から小銭を出すと痛みが走った。
 休みの日は皮膚科に通い、両手は絆創膏が目立つ働き者の手。まだ二十代の手は老婆のようなカサカサした手だった。
 
 ハンドクリームの進化は効能だけではなく、アロマに人を和ませる。

 ふとした瞬間、どこからともなくネロリやユズの香がすると、
「もう少し嗅ぎたいな」と、我が手なのに惚れ惚れする香りを纏う。

 衣類の柔軟剤もこの程度に匂うなら、それほど嫌われなかったのかもしれない。
 
 手は自分が思うより、人に見られている。
特に男性の手から腕は、女性の心をくすぐる作用があって、逞しい浮き出た血管に好意を寄せる人もいて。
 
 女性の手は、同性が見ている。
手と首は年齢が出やすく、どれだけ自分をメンテナンスしているか測れる部位。
 同時に美しい手だと家事や仕事をしてないだの誤解を招きやすい。
 
 人は何を思い、ハンドクリームを塗っているのか、意図が異なるかもしれない。
誰かの秘密が隠れていそうだ。

#小牧幸助さん
#シロクマ文芸部
#手を洗う