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はじめてオリーブ少女になった日

 古本を漁り、90年代の『オリーブ』を見つけたとき、ページをめくるだけで胸が熱くなった。

 十代の頃の私にとって、自分の主体そのものだった。
そんなことを思い出したからだ。

 あの頃は、『オリーブ』『Mc sister』『non-no』を定期購読していた。生粋ではないが、気持ちはオリーブ少女。

 広告まで舐めるように読み、資生堂の基礎化粧品をライン買いした。バーゲン前には誌面を前後させ、どの服を買おうか夢中でシミュレーションした。

 お年玉を握りしめて友達と新春バーゲンへ行く。
「あのスカートがありますように」
「半額ならいいな」

 店に入れば目移りして、鏡の前で身体に服を当ててみる。全然オリーブ少女じゃないのに、どうしても欲しくなる。

 田舎の中高生は私服を着る機会が少ない。
塾もマックも制服。
せいぜい親とダイエーへ出かけるときぐらい。

 だからスーパーに行くにも髪型に気合いを入れる。頭頂部の大きなリボンがアンテナのように目立った。

 家ではヨレヨレのTシャツやショートパンツでも、外では同級生に「可愛い」と思われたくて気を抜けない。だけどそれは、クローゼットの中では二軍の服たち。

 本当の一張羅はなかなか着る機会がなく、ただ眺めて満足するだけだった。

 そんな高校二年の夏。
学校帰りに見つけたベージュのワンピースに、一瞬で心を奪われた。
 お金がなくて、翌日も一人で店に確認に行く。夢に出るほど欲しかった。

 試着を勧められて袖を通したとき、これは私のために仕立てられたのだと錯覚した。手持ちの麦わら帽子とバッグを合わせれば、『オリーブ』のモデルと変わらない。

 家で祖母に話すと、お小遣いをくれた。
ワンピースと出会って三日後、私は念願のオリーブ少女になった。

 部活帰りのぬるい風に、8×4のシトラスがほんわか漂う。ワンピースに顔を埋めながら帰る足取りは、地に足がついていなかったと思う。

 『オリーブ』で見たプチプラ香水を香らせて、この服をお盆のお墓参りに着ていこうと胸を躍らせた。田舎にはそれくらいしかおしゃれして行く場所がない。それでもいい、私がオリーブ少女になれるなら。

 古本の『オリーブ』を開くと、あの日の自分が顔を出す。おしゃれは自己満足でいい。わたしが主体なんだ。

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