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hidemaro2005
ショート:拍手のなかった合格者
カンカンカンカン――
「次の列車が通過します」
踏切の向こうから走ってきたのは、
『それ、言わなきゃいけない号』
「あら、今日は定刻ですね」
駅員のタヌキが帽子を直す。
続いて、
『私は正しい号』
『あなたのためを思って号』
『否定から入るのはよくない号』が猛スピードで通過する。
踏切の前では電車が通過するたび、会場では、ぼそっと呟く声がする。時々、
「あるあるですよね」手を叩きながら嗤う者がいて、審査する保線員がチラッと顔を上げた。
『常識です号』が通過すると、ザワザワして、
「それはあなたの主観ですよね」と過去の流行語が場を賑わせた。
その間を『私には分かりません号』がゆっくり走っていくが、誰も気にする様子がなかった。
卵色の電車が東へ上っていき、『スルースキル号』が見える頃、
「あの電車がオーディションを通過した……」と気づいた。
保線員は黙って合格札を掲げた。
今年の合格者は、一両だけだった。
