キンクマから教わったこと
『透明な無関心』
初春に書いた小説で、タツジュンがキンクマの態度を「透明な無関心」と評する場面がある。
悪意ある手紙にも揺れず、ただ「お腹すいたな」と笑ってみせるキンクマの姿は、最強の防御はスルースキルがあると教えてくれた。
誰かの心ない一言やどうでもいい噂話。
そういったものにいちいち傷ついたり、腹を立てたりしていては、心がいくらあっても足らない。
悪意のノイズを巧みにやり過ごすスキルを、一般的にスルースキルと呼ぶ。
多くの人は、これを気にしないことや無視することだと考えると思う。
しかし、わたしは少し違った捉え方をした。
それは「透明な無関心」
無視とは、意識的に対象を排除する行為。
「見ないようにする」
「聞かないようにする」というような、そこには「気にしている」という前提が少なからず存在する。
一方で透明な無関心は、そもそも自分とは関係のないものとして事象を捉えた。
目の前にいる人が、自分とは異なる次元にいるかのように、その言葉や行動が自分に干渉しない状態。
それは自分を守るための分厚い壁でも、相手を拒絶するための刀でもない。
そこにある透過性の高い膜のようなもの。
キンクマはその膜により、自分にとって必要なもの。例えば、大切な人の言葉や、成長につながるアドバイスはきちんと通す。
だが、無意味な悪意や嫉妬、どうでもいいノイズは、最初から存在しなかったかのように、そのまま通り抜けていく。
このスキルを身につけると、心は驚くほど軽くなるんだろうなぁと、キンクマに託した。
他人の価値観や感情に振り回されることなく、自分自身の中心をしっかりと保つことができるようになると希望を込めて。
わたしの周りにも疲弊させるノイズはあった。そうしたノイズに、あえて意識を向けるのをやめてみた。
わたしはただここにいるだけでいい。
これからも、透明な無関心という膜をまといながら、本当に必要な声だけを受け止めて生きていきたい。
