ひと色展は多彩な領域、思い出の中
人生、一瞬の出来事が『ひと色展』で蘇る
わたしが生まれたときから、実家には犬がいた
大型犬は散歩させてもらえず
小型犬か中型犬を連れて歩いていた

うちには“テン”と名付けた柴犬がおり
テンは実家で、王子さまだった
賢いのもあるが、テンの親が何かで優勝した犬
テンももれなく「美犬」だった
上げ膳据え膳のテンは、おっとりしていた
よく晴れた冬、テンと山林へ散策に向かうと
野良犬3頭に囲まれた
「王子さま」は本能が抜かれて立ちすくむ
だからといって、野良犬は容赦ない
わたしは陸上部だったので
「王子さま」を抱え、山林を全力疾走した
冬でも常緑樹は木漏れ日をもたらし
その中を無我夢中で駆け降りた
わたしにしがみ付く王子さま…ん?
「テンさん、あなた、番犬じゃないの⁈」
木漏れ日の色は、テンの生涯を彩った
家では不機嫌な祖父や父も、テンには甘く
子は鎹(かすがい)ならぬ、「テンは鎹」
家族の緩やかな愛情を一心に受けた
そしてわたし達は
泉湧きたる流域や山林を歩き回り、思い出を作った
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