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hidemaro2005
ショート: 「ぽん」
ゆっくりと、筒の蓋を開けた。
「ぽん」
乾いた音だった。
三年間も、こんなふうに終わった。
ワニ柄の筒の中には、卒業証書がある。
何年後に、またこれを見るのだろう。
指を入れ、
そこにあることだけ確かめて、
また蓋を閉めた。
大学の前期試験はやり切った実感はある。
しかし合格発表は来週で、後期試験まで自分のスタミナが保つのか自信がない。
私立に行くヤツらは、卒業旅行の話をしている。三年間の友情と分岐点。
友情と呼べるものがあったのか、今更分からない。思い描く高校生活とは、ズレがあった。
なんとなく、中学の時と同じ部活に入部し、通い慣れた塾へ駆け込む。中間と期末と模試が代わる代わる一年を埋めていき、進路へのラストスパートをかける頃には、自分の中に高校生特有の甘酸っぱさが欠けていた。
思い出より、先に終わる時間。
学園祭も合唱コンも修学旅行も
「そんなことがあったな」程度で、イベントというより通過点だった。
合格発表の来週、この筒の意味は変わるのだろうか。
机の上の筒を転がす。
「ぽん」
三年間は、この筒より軽かった。
