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 寒い日には出歩かない。
俺は膝へ電気毛布をかけ、ドキュメンタリーの録画を観ながらうつらうつらしていた。
 夕飯を買いに出なければ、食べるものがないと分かりつつ外出するのが億劫なり、うたた寝する。



「おはよ!朝だよ! いつまで寝てるんだよ」
キンクマが俺の肩へ乗り、耳元で大きな声を出す。
 一瞬で目が冴え、時計を見ると針は5時を差し、外の暗さへ焦り
(こんなはずじゃなかったのに)

呆然とする中で、キンクマは俺の襟元を引っ張り
「タツジュン。僕が居なくなったら、
新しい子を家族へ迎えてほしい。
そしてタツジュンが僕と楽しく過ごしたように、
またそんな日が来るのを期待しているね」

「お前、何言ってんだ?」

「僕が居て、よかった?
僕はタツジュンと出会えてよかった」

 キンクマは襟元を離すと電気毛布の中へ入り込み、まだ早朝ということもあって俺はキンクマへ問うのを後回しにして眠りについた。

キュゥと、ハムスターの声が何処かから聞こえる。



 青臭い匂いと喉の渇き。
そうだ、キンクマに意図を聞かねば。

 目を覚ますと長い藁が組んである中にいて、端にはひまわりの種が雑然と積み重なっている。
身体を起こそうにも足へ力を入れると両腕にも力が入り、四つん這いで藁から出ると金網の向こうへ人の気配がし、卵を焼いた匂いが届いてくる。

「キンクマ、起きたの?
ドライマンゴー、食べる?」
遥香が俺に目を合わせて、話しかける。
「ちょっと待ってね」遥香は俺から離れて、
トースターがチンと鳴った。

「おはよ〜。ああ、今日は顔色がいいな。
来週は新しい治療だから
遥香は家でいい子にしてるんだよ」
皿を2枚、テーブルへ運ぶ痩せ細った遥香へバックハグするのは紛れもなく、俺じゃないか。

 ケージにしがみつき、今までの出来事が解明される。走馬灯が頭を流れる。
キンクマが会話できたのは、俺が俺との自己対話を繰り返していたんだ。だからpcが使えたんだ……。

 俺はここから俺へ叫ぶが「キュゥ」としか発声できないもどかしさ。歯でケージを鳴らした。 



「タツジュン、起きて!」
前髪にぶら下がるキンクマと目が合う。

「おい、お前は俺か?
キンクマ以外をこの家に迎える気はないぞ」

キンクマの澄んだ黒目と笑い顔が萎んでいく。

「どうしたの? 寝ぼけてるんだ〜
それより外、見て!雪が降って来たよ」
キンクマは俺の顔から滑り下りると、頬へ爪が引っかかった。「痛っ」

 キンクマは尻を振りながら
「雪、雪、雪、雪、雪だるま〜hey!」
躍りながら歌い出し、
オレンジ色した、いつもの光景がそこにある。

#小牧幸助さん
#シロクマ文芸部