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キンクマハムスターが手招きした日

 思い出す。あれは自分が書いた文章だった。 
確実に背中へ視線が当たった日。
「これって運命なのか、偶然なのか」

 ホームセンターへ、猫のなっちゃんが食べるカリカリを買いに行く。
時間に余裕があり、小動物のコーナーで小鳥やウサギを眺めていると、誰かがわたしを見ている気がした。

 昼下がりのホームセンターは人もまばらで、このコーナーにはわたししか居ない。
「ジャンガリアンハムスターは親指ぐらいしかない」
屈んでケージを覗くわたしへ視線がある。

 気のせいか、振り向くと誰もいない。
また屈んでチンチラを見ていると視線を感じる。
誰なんだろう? 振り向くと、
キンクマハムスターが口をニカッと開けて、わたしへ手招きした。二本足で立ち、両手で「来い来い」する。

 手招きしたのよ。

わたしが去年、キンクマハムスターを描いたのと、全く同じシチュエーションで、手招きした。
こんなにシンクロするなんて……。

 ハムスターにも種類がある。親指大の小さな個体から拳大の大きな個体。毛色も様々いる中で遥香は
「この子、横浜から来たんだって」
 ロングコートと値札に書いてある金色のキンクマハムスターは山になった藁の上へ二足で立ち、鼻をひくつかせながら宙を見ていた。

 他のハムスターは滑車を走るもの、藁で巣作りするもの、丸くなり寝ているものの中で、キンクマハムスターだけは想像しているハムスターとは異なる行動をしていた。
 キンクマハムスターは遥香を確認すると、両手で
「来い、来い」の仕草をする。
俺の目から見ても他のハムスターとは違った生き物に見えた。

ペトリコールの共鳴・第十五話


 キンクマのケージの前に立つと、キンクマは網をしっかりと握り、わたしの顔を見上げた。
「ドヤ、わし、可愛いじゃろ」

 聴こえて来そうな目や仕草へ一瞬、連れて帰ろうかと考えた。
 うちにはハムスターのケージがあり、ちょっとばかり高級なので、住み心地はよいと思う。

 キンクマの値段と説明を読むと、尻尾が欠損し、半額になっていた。
短い尻尾が欠損なら、ますますほしい。

 わたしは完璧より、少し何か欠けた人に惹かれる習性があり、完璧な人と完璧を装う人は苦手だ。
 学力はあるが、なんとなくポテンシャルは低そうで、話にならないだろう人種はハナから遠ざけたい。
 
「かわいいな」
うちには既に、猫や犬もいる。
多分、家に迎えるのは不可能だと思う。
けれど、わたしが描いたキャラクターと同じキンクマハムスターが手招きをした。

 次回、ホームセンターに行ったら、また会えるかな。
笑ったキンクマハムスターの顔が日常へちらつく。

#小牧幸助さん
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