火遊びウサギは笑わない 最終話
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「自分で自分の本心が分からないんだけど
聞いていい?好きな人とデートしたい、手を繋ぎたいなどなど、一般的な心理じゃん?
私さ、面倒くさいと思ってデートに誘われても
『他の女性を誘っていっておいで』って言っちゃうのよ」
「そんなことを彼氏さんに言うんですか?」
「まあね、めちゃくちゃ怒られたけど。
だけど、どうして怒られているのか不思議なのよ。
これって、不安定な肯定だよね」
「本心で言っています?」
「うん。彼にその辺りの人をナンパなりマチアプとかで引っ掛けて遊んできたらいいじゃん。
私がいいと言ってるんだから、そうしたらいいのにって」
「正直な感想ですけど、彼氏さんは駆け引きされてると思うんじゃないでしょうか」
「そうかもしれないけど、急に面倒くさいと思うのよ。好きな人なのに、好きじゃないのかもね」
寝起きの安優香から突然振られた話題に、私は思考が追いつけずにいる。
「安優香さんは自分の心のスペースが埋まっている状態かもしれないですよ。他人に期待されることに疲れていたり、自分をさらけ出すのが怖かったり、恋愛よりも、自分自身のことでいっぱいいっぱいだったり」
「そうなのかな。そうかもしれない。
突き放す行為は悪い意味でのレジリエンスかもね……
その場しのぎで、変われたふりしてるだけかもしれないわ」
「でね、そんなとき、デートとか手を繋ぐといった行為が急に重荷に感じられるのは、よくあることかもしれません。
相手が嫌いとか、好きじゃないというより、今の自分には、それを受け止めきれないみたいな感覚」
「瑠璃ちゃん、分析するねぇ」
スマホの向こうの安優香は笑っている。
それでもいい、私は続ける。
「期待される自分を無意識に避けてるのかもしれないです。デートしよう、手を繋ぎたいって言われると、『あぁ、この人、私に何かを期待してるな』って察して、それが嫌になる」
「無意識に、普通の女の子みたいに振る舞わないと、がっかりされるのかなとか、私が断ったら嫌われるとか」
「安優香さんは他の女の子と行ってきたら?って言うことで、自分を守っているのかもしれない」
「まあ、気持ちはあるけど、行動に出せないってこともあるよ。たぶん愛情表現の方法が独特なだけなんだと思う」
「好きだけど、会いたくないときがある。好きだけど、手を繋ぎたいとは思わない。好きだけど、1人でいたい」
「それ、普通にある」
「相手から見ると『えっ、好きじゃないの?』と思われるけど、安優香さんの中では矛盾していない場合もある」
「そうなの」
「たぶん彼氏さんは、自分が安優香さんを大切に思っている人から、突き放されたように感じたんだと思います。好きだから誘ったのに、他の女と行けって……なんで?って、悲しくなったんだと思う」
「なるほど」
「でも、それは安優香さんが悪いとかじゃない。
気持ちの伝え方が、ちょっとずれていただけです」
「じゃあ、どうすればいい?」
「ここは大切なことですが、安優香さん自身が面倒くさいと感じた気持ちは、尊重してあげていいと思います」
「そうなのかな」
「ただし、それをどう伝えるかだけは少し工夫できるかもしれません。
『デートに誘ってくれてありがとう。でも、いま私ちょっと気持ちに余裕がないから、今日は一人で過ごしたいんだ』とか」
「ああ、それだと彼は拒絶されたじゃなく、理解できると思える可能性があるね」
「安優香さんは好きな人なのに、好きじゃないのかもって言ってたけど、それは心が疲れているときの感覚だったり、防衛本能の言葉だったりすることもあるかもです」
「恋愛は分かりやすいテンプレじゃ測れないね」
「安優香さんが自分の気持ちを分かろうとしているのが、何よりも大事だと思います。
そして、私に話してくれたことが、ちゃんと自分を大切にしてる証拠でもあると思います」
「ありがとう。
それでね、瑠璃ちゃんは春に行った合コンを覚えてる?あの主催者が彼なんだけど。
瑠璃ちゃん、彼とデートしてくれないかな」
はあ?はあ?はあ?はあ?
夜の余韻が一気に醒め、藪から棒に何を言っているんだ?
「ああ、また火がついた」
私はスマホを見下ろしながら笑った。
私たち、火遊びするウサギかもしれない。でもこの炎が寂しさを焼き尽くすなら、悪くない。
〜 完 〜
