世界にも影響を与えた名作マンガ「子連れ狼」〜ようやく私のスコープに入って読了
漫画アクション誌上で、小池一夫作/小島剛夕画「子連れ狼」が始まったのが1970年。私が9歳になる年で、さすがに手に取って読むことはなかった。
ところが、1971年に“🎵しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん“と始まる本作をイメージした楽曲、“子連れ狼“がリリースされる。橋幸男が歌ったこの曲は、オリコン10位とヒット、日本レコード大賞・大衆賞を受賞する。これにより、私は乳母車に子供を乗せたサムライのマンガの存在を認識する。歌詞には、“🎵ちゃーんの仕事は、刺客ぞな“というフレーズがあり、「刺客」という言葉を覚えた。
さらに、翌72年にはパロディCMが登場。ボンカレーのCMで、当時人気絶頂だった笑福亭仁鶴が浪人姿で木製の乳母車を押し、「3分間待つのだぞ」と。ナレーションで、「(大五郎)腹が減っても、じっと我慢の子だあった」。「子連れ狼」は完全に全国区となった。
ところが、私はマンガを読んだことがない。映画版・TV版も観ていないので、主人公が刺客であるという知識しかなかった。
きっかけは、おぼろげな記憶なのだが、確か山下達郎がラジオで「今読ん でいるマンガは『子連れ狼』」と話していたことのように思う。有名作品だし、頭の片隅に常にあったとも思う。読了後、「マンガの教養」(幻冬舎新書)という、中条省平が名作100を選んでコメントを書いた本を開くと、「子連れ狼」はしっかりと入っていた。
主人公の拝一刀、息子・大五郎を乳母車に寝かせ諸国を歩いている。刺客業を営み、金銭を貰い依頼主が指定する相手を倒す。その剣の腕、戦闘能力は並外れていて、今で言うスーパーヒーローである。
彼がなんのために、そしてなぜこうしたことを行なっているか。其之九(第9話)で、さわりが披露される。徳川幕府が、大名統制を行うための役職に公儀介錯人というものがあった。大名切腹の際、首を刎ねる役割で、公儀が行う処刑であることを明らかにした。
拝一刀はその任についていたが、上意により家名断絶・切腹を言い渡される。一刀と大五郎はこれに背き“冥府魔道“へと突き進む。<血と屍の道 殺戮と非情の刺客道>(「子連れ狼」より)。その目的は、<拝一族が受けた鬼哭のうらみを 刺客人柳生一族に叩きつけること>である。父と子によるアヴェンジャーズである。
介錯人同様、幕府統制を担ったのが、要人暗殺を担当した刺客人で、柳生一族が担った。そして、<明暦年間に拝一族が姿を消し かわって柳生一族が介錯人をかねるようになったと史実にあり>、<刺客人と介錯人!この謎を解明せんとするのが 本篇「子連れ狼」である>。
拝一刀が金をもらい刺客業を行うのは、柳生一族に復讐するための軍資金稼ぎ。そのエピソードが中心になりながら、一刀を狙い打とうとする柳生一族との抗争が挟まってくる。
最終決戦に向けての後半の盛り上げありが凄い。拝一刀、柳生一族に加えて、新たに強烈なキャラクターが登場し、ドラマがスケールアップする。成長していく大五郎、泣けるシーンも多々ある。
小島剛夕は、白土三平のアシスタントで「カムイ伝」の作画の中心人物の一人である。筆を使った独特の絵作りは芸術的でもあり、見開きの画面展開、無セリフの場面も多数登場し、「子連れ狼」の独特の世界観を表現している。
子供を連れた刺客という構造が秀逸だと思うが、原作の小池一夫は父子関係が希薄になる時代において、<逆境にあっても強く結ばれた父と子であってほしい>、そう願って書いているとしている。
海外では若山富三郎主演の映画が最初に紹介され、「Lone Wolf and Cub」として有名になり、タランティーノ監督など、多くの創作者に影響を与えた。英語コミック版は、「デアデビル」「バットマン:ダークナイト・リターンズ」などを手がけた、コミックライター/アーティストのフランク・ミラーが表紙絵を書いて出版されている。
「子連れ狼」が世界に羽ばたいているなんて、これまで知らなかった。なお、アメリカで最も権威のあるマンガ賞の一つ、アイズナー賞の最優秀国際作品として、2001年「子連れ狼」が選出されている

