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あなたは、物語の最後の写真一枚で真相に辿り着けますか?ーー道尾秀介『いけないシリーズ』(ネタバレなし)

もし小説の最後に「1枚の写真」を手渡されて『真相はあなたが見つけてください』と言われたら、あなたは解決できますか?

そんな画期的な読書体験ができるのが道尾秀介先生の『いけないシリーズ』です。

ミステリー小説なら、探偵役が推理を披露し、最後には真実を明かして物語が幕を閉じる。刑事モノの小説なら、刑事たちが証拠を積み重ね、最後は犯人を追い詰める。

作家の方々は試行錯誤しながら、独自のスタイルでミステリーを描いているのだと思います。

しかし、道尾秀介さんの『いけないシリーズ』は、その常識を鮮やかに裏切ります。

物語の結末に差し込まれるのは、たった一枚の写真。その一枚によって、読者が真相を解き明かさなければならないのです。

こんな小説に出会ったことありますか?

今回はそんな新しいスタイルのこのシリーズについて、考えてみようと思います。

1.道尾秀介先生の魅力

道尾先生は、大学時代から小説を描かれていたようです。

でも所属は文学部とかではないんですよね。調べて見ると「農学部」とあります。私が好きな東野圭吾先生も工学部だし、伊坂幸太郎先生だって法学部だし。

そしてお二人とも、まずは民間企業に就職され、働きながら小説を描いていたわけです。

いつも思うんですけど、仕事をしながら「書くこと」にもチャレンジするって、すごいと思います。

今でも知念実希人先生、夏川草介先生、中山祐次郎先生だって、現役医者でありながら、小説を描いてらっしゃいます。

他の記事でも書きましたけど、本当に尊敬します。

道尾先生も例外ではないのです。一度は民間企業に就職しながら、その傍らで小説を描かれていたんですよね。

そしてあるコンテストに応募し、雑誌に掲載されたとのこと。これで火がついたんでしょうか。

2004年には作家デビューされます。

<受賞歴>
2004年 ホラーサスペンス大賞特別賞『背の眼』
2007年 本格ミステリー大賞『シャドウ』
2009年 日本推理作家協会賞『カラスの親指』
2010年 大藪春彦賞『龍神の雨』
2010年 山本周五郎賞『光媒の花』
2011年 直木三十五賞『月と蟹』

これ、すごくないですか?

7年という期間であの「直木賞」まで受賞してしまうなんて・・・

2014年からは「横溝正史ミステリ大賞」の選考委員もされているということです。

デビューされて10年で選考委員にまでなっているなんて、ご本人は想像していたのでしょうか。

2.革新的な作品たち

先に書いた受賞歴の中には『いけないシリーズ』は入っていません。でも、この記事はどうしても書きたかったんです。

小説において「視覚的な情報」が物語を決定づけることは滅多にありません。私たちは文字を手掛かりに、頭の中で自由にイメージを描きます。

しかし『いけない』では、その想像を「一枚の写真」で問いかけられるのです。「この写真を見て、真相がわかりますか?」と。

私は東野圭吾先生の作品も好きなのですが、先生の作品の中に、最後まで犯人は明かされずに「読者の想像に任せます」という、作者の挑戦的な作品を思い出しました。

『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』などがそれに当たります。

真相が分からなくて、作品内の「袋とじ」を読んでもわからず、結局ネット情報でもっともらしい真相を知ったという経験があります。

「な、なるほど・・・」と、カンニングして怒られた気分になりました。きっと論理的思考が的確な方にはすぐ分かるのかもしれませんね。

本作品は、それ以来の衝撃でした。こんな作品があるのかと。当時のSNSでは話題沸騰でした。今でもそうですが・・・

文章で「もしかするとこうかもしれない」と思っていた解釈が、写真を見た瞬間に崩れ去ることがある。あるいは、文章から気づいていた違和感が、写真で裏づけられることがある。

このギャップが「どんでん返し」以上の衝撃を生み出すのではないでしょうか。

3.読者が刑事になる

読んだことがある方にはわかると思いますが、最後に「一枚の写真」が載ったページを見る瞬間の緊張感は何とも言えないです。

これまで読んだ小説でも味わったことのないドキドキ感。

「えっ? この写真、一体どういうこと?」

ここではじめて自分が「先入観」にとらわれていたことに気づくんです。そこから読者の推理が始まります。それまで読んだストーリーの中にヒントが散りばめられているのです。

これ、すぐに解決できる方はすごいと思います。私はざっくり読んでいるからか、最後の写真を見た瞬間に、一瞬固まります。そして、これまで読んできたページをめくるのです。

「これ、どこかにヒントがあったぞ」と。

しかも、それがさらっと書かれているので、読んでいるうちにはその重要さに気づかないんですよね。

前作の時にはそれでもわからなくて、ネットで情報を探していました。

「あぁ、そういうことか・・・なるほど・・・」

これでは刑事にはなれないですよね😅

でも、真相がわかった時にはある種の爽快感が湧いてきます。

4.先入観にとらわれること

このシリーズの体験は、単なる読書や推理にとどまりません。文章だけを読んでいたときの印象と、写真を見たときの印象が違うように、私たちは日常でも「自分の思い込み」に左右されて生きています。

誰かの言葉を自分に都合よく解釈してしまったり、状況を決めつけて判断してしまったり。実際の世界でも「真実」を見誤ることは多いのです。

『いけない』が教えてくれるのは「真実は一つでも、その受け取り方は人それぞれだ」ということ。

そして、自分の見方を疑うことが大切なこともあるということです。これこそが、道尾作品の真骨頂だと言えるでしょう。

5.まとめ

『いけないシリーズ』は、ただページをめくるだけでは終わりません。最後の一枚の写真を見た瞬間、物語は読者の中で続いていくのです。

道尾秀介先生がこの作品で「小説は物語を読むものではなく、真実を探す体験である」という新しい可能性を示してくれているように思います。

読者の想像力と観察力を試される仕掛けは、まさに現代のミステリーにおける大きな革新だと言えるのではないでしょうか。

読んだことがある方は、この記事の意味がお分かりになるのではないでしょうか。

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