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おちょきんしねまっ!(福井県)|諸国名産お国言葉採集

全国各地の名産品のネーミングから“お国言葉”を“採集”。ピックアップした方言を糸口として、方言学を専門とする東京女子大学の篠崎晃一教授が綴る、軽妙で含蓄に富むエッセイです。「全国各地の逸品×方言」をめぐる、遥かなる旅へといざないます。(ひととき2026年3月号の連載「諸国名産お国言葉採集」より)

【おちょきん】正座

 福井の銘菓「おちょ金時」(現在は「涛花堂とうかどう」で販売)。福井県菓子工業組合青年部会と福井市菓子組合連合会が共同で開発した県の特産品を使った和菓子だ。きちんと座ること、いわゆる「正座」を意味する「おちょきん」とサツマイモ「金時」の語呂合わせによって名付けられた。生地には福井県が生産量日本一を誇る六条大麦、餡にはあわら市の富津とみつ地区で栽培されるサツマイモ「とみつ金時」を使用した上品な甘さが人気で、名付けには「みんなで座ってお菓子を食べる時間になりました」との意味が込められているという。食べ方には特にかしこまって正座して食べなければならないとの作法はない。

おちょ金時 子供の手のひらサイズの焼き菓子で、もっちりした食感が美味。中にはサツマイモを用いた餡が入っているので、小ぶりながら食べ応えも十分。1個180円、愛らしい箱入り(左上)は6個で1,200円
ブランド芋「とみつ金時」を福井銘菓に!

 この「おちょきん」の語源だが、「おちん」と言う例もあることから、江戸時代後期から使用例が見られる「ちんと」にさかのぼる。滑稽本などではきちんと整っているさまを表すが、当時の江戸語と大坂ことばを対照させた『浪花聞書なにわききがき』の「ちんと」の項には「江戸でいふちゃんと」と記されており大坂の方言と意識されていたようだ。「ちんと座る」ことが正座の姿勢につながったわけだ。小さな子供に向かって座るように促す時に「おすわりしなさい」と言うのと同様に、日常生活の場で「おちょきん」は幼児語として使われることが多いという。

 ちなみに福井で胡坐あぐらをかくことは「じょろかく」と言う。これは丈六じょうろく*の仏像の座り方に由来している。

*一丈六尺(約4.85メートル)のこと。仏像の基準とされる高さ

 なお、長野で「正座」は「おつくべ」。鎌倉時代にしゃがむ動作を表した古語「つくばう」に由来する。沖縄では「ひざまづき」。膝を折って座る姿勢に着目した言い方だ。

 ところで、沖縄で「正座」と言うと膝を折るのではなく座ったまま姿勢を正すことを表す。足がしびれずに済むのである。学校で授業を開始する際は「正座! 礼!」と号令をかけるが、起立せずに座ったまま姿勢を正して礼をすることになる。

 先日、福井県内の土産店で見かけたTシャツのプリント「おちょきんしねまっ!」。「しねま」とはいささか物騒だが、福井では「~しなさいよ」と柔らかく命令しているのである。

 無駄遣いせずお金を大事に貯めなさいとの金言と誤解して購入する諸氏もいるかもしれない。

文=篠崎晃一
写真=阿部吉泰

福井の郷土菓子も販売。写真は定番人気の2種。屋号の頭文字の焼印入りの「酒万寿〈まんじゅう〉」と「とびつき団子」。後者はお盆にお供えされてきた団子で、甘く煮たササゲ豆をまぶしたもの

涛花堂
☎0776-82-1332 
[所]福井県坂井市三国町南本町1-1-48
[時]8時~18時
[休]火曜、月曜不定休

*隔月で公開しています

出典:ひととき2026年3月号

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