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ターボエンジン搭載の82歳「ピンクの塊、炎天下の逃走劇」


今日は仕事が休み。
退院したばかりの母を耳鼻科へ連れて行く予定の日です。
その前に、久しぶりの退院祝いを兼ねて、昔からよく行っているお馴染みの回転寿司へ行くことにしました。
12時ちょうどに実家へ迎えに行くと、玄関には、父がチョイスしたという鮮やかなピンクのポロシャツに白っぽいズボンを履いた母が、ニコニコしながら待っていました。
いつものお寿司屋さんに着くなり、母が嬉しそうに言います。
「わぁ!初めて来たね!」
「……そうかね?」と、私は言葉を濁しながら席に着きました。すると今度は、
「あら、ここは久しぶりに来たね!」と思い出した様子。
「そうね、1ヶ月ぶりね!」と言うと、「うふふ」と嬉しそうに笑う母。
大好きな鯛の赤だしと鯛の握りを、それは美味しそうに食べていました。
いつもなら、大好物の数の子も私が勝手に注文してあげるのですが……今日に限ってメニューを見ると、なんといつもの3倍の価格!
私はそっとメニューを閉じ、数の子の話は一切しませんでした。うん、これぞ「大人の選択」です。

涼しいイオンで、まさかのミッション・インポッシブル
デザートまでゆっくり食べ終えても、まだ13時を過ぎたところ。
午後からの診察(14時30分)まで、まだかなり時間があります。
「そうだ、涼しいイオンにでも行こう!」
イオンに到着し、母はいつものようにショッピングカートを相棒(実質、歩行器代わり)にして歩き始めました。
しかし、駐車場から入ってすぐ、一軒目のショップの前に差し掛かったところで、母がポツリ。
「なんだか、疲れたぁ……」
そりゃあ、退院したばかりですもんね。
「じゃあ、私ちょっとこのお店で買い物してくるから、目の前のベンチに座って待っててくれる?」
「うん、うん、ゆっくり買ってきていいよ!」
大人しくベンチに腰掛ける母。よしよし、いい子だ。
私は急いで買い物を済ませ、ものの数分でベンチに戻りました。
――が。
うそぉぉぉぉん!!!
母の影も形もない。
あらっ? おかしいな。
一生懸命周りを探しましたが、あんなに「疲れた」と言っていたおばあちゃんが、ものの数分で半径50メートル以内に見当たらない。どんだけ足早いの!?
さすがにこのご時世、82歳のおばあちゃんを誘拐する物好きな人はいないでしょう。けれど、背に腹は代えられない!
私は一気に心拍数を上げ、サービスカウンターへと猛ダッシュしました。

地域一帯に響き渡る、我が家のプライバシー
息をゼェゼェと切らしながら、受付のお姉さんに特徴を伝えます。
「母が……ピンクのポロシャツに、白っぽいパンツを履いた82歳で……!」
すぐに館内アナウンスの手配をしてくれました。
まもなく、店内に響き渡る、超クリアな音質。
「〇〇 〇〇様(母のフルネーム)がお連れ様をお探しです――」
がっつり、地域一帯にフルネームが連呼されています。
公共の電波で親の名前がリピート再生される気まずさと戦いながら、私は必死に周囲に目を光らせていました。
その時です。視界の端に、強烈な違和感を捉えました。
……ん?
イオンの涼しい食料品売り場の自動ドアから、外の、もわっとした炎天下の駐車場へ向かって、スタスタと歩いていく見覚えのある「ピンクの塊」が。

いたーーー!!!」


どこに隠し持っていた、そのターボエンジン
私は汗だくで走り、そのピンクの背中に向かって叫びました。
「お母さん!ごめんねぇぇぇーー!!!」
こちらはハラハラを通り越して、冷や汗と脂汗でダラダラです。
対する母、ゆっくりと振り返って一言。
「あら、もう買い物終わった?」
……いや、どの口が言うんじゃーーーーい!!!笑
さっき「疲れた」って言ってベンチに座ったはずなのに、一体そのターボエンジンはどこから点火したのでしょうか。炎天下の駐車場までスタスタ歩いていく体力がどこに残っていたというのか。
しかも、どういうことなのか、私と別れた時に押していたショッピングカートではないショッピングカートを押しているのです。謎……。
考える間もなく、慌ててフルネーム放送を止めてもらい、親切に捜索に協力してくださった店員さんたちに何度も何度も頭を下げて、すぐさま車へと避難しました。
車に乗り込んだ瞬間に押し寄せる、どっとした疲労感。そして謎……。
めちゃくちゃ暑い夏の日の、汗が止まらない大捜査線でした。
(でも……。退院して、これだけ元気に歩ける体力が戻ったってことで……まあ、いっか!)ですよね?笑


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まめこ チャレンジして見て良かったと思えてくると思います。 宜しくお願いします。今後の励みになります。