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Laboの男97

 Labの男97

何かを繰り返す行為は
時間経過と共に連続性が生まれ
そこにストーリーが紡がれる。
大袈裟に言えば文化となって
運よく残れば後世に歴史と扱われる。
一個人が生きているだけで
すでにストーリーであり歴史そのものなのだ。
しかしだ、
記録と記憶はまったく違うモノだ。
状態でいえば
外付けハードディスクか?
内臓の記録媒体か?
だけの違いと思いがちだが
まったくの別モノだ。
気を失ったりの意識の消失
脳しんとうなどでは分かりやすく
短期記憶の喪失がある。
本人は今どういう状態にあるのか掴みきれずに
仕切りに「私は誰?ここはどこ?」と
ドラマのように
2分おきくらい実際に繰り返し聞くそうだ。
ジョンロックという哲学者が述べる
記憶の連続性こそがパーソナリティ
【自己同一性】だと唱えた。
映画を観て共感する
もしくは自己投影し感動する
それは登場人物に感情移入する擬似体験
自己同一化が行われているに他ならない。
考え方では
リモートコントロールで
ニンゲンを遠隔操作で操る
何者かが自己同一化している。
自己同一性が連続している状態を
意識と定義した。
近年までは記憶は
海馬が担っていたとされるが

では、果たしてほんとうに
記憶は脳の中にあるのか?

諸説は様々あるが
肉体は全ての部品が少なくとも
90日で入れ替わってしまう。
総入れ替えされた細胞を有する者は
果たして以前の自分と言えるのか?
近年では肉体全てに関与する水分子が
何らかの記録データとなっていて
水に記憶があるのではないかと
研究がなされている。

世の中にある全てのモノ【素粒子】が
記憶媒体だという説もある。


ヒトが読み取れないモノだらけの中
明智とナターシャは間違いなく
肉体を超えたところで対話をし
2人にしか分からない記憶が共有された。

フラフラしながらも、手を差し伸べる明智
「あぶなかったよ。
 ありったけの想いを込めた
 ゲンコツが当たらなかったら
 キミに関節キメられてヤラれていた。
 ありがとう、ナターシャ
 大切な心意気を教わった気がする」

先ほどからは想像もつかない柔らかな表情
ナターシャは上目遣いで
 「奢っていたようだ。
  頭突きが入った瞬間に勝ちを確信した。
  そんなツメの甘さが出たな。
  ワタシの完全な敗北だ」

差し伸べるられた手をガッチリ握りしめ
立ち上がるナターシャ
明智はナターシャの大きな背中を
ポンポンとたたいて言った。
「キミの敗因は、母性本能だよ。
 他を包み込むような利他
 ある意味キミの思想が
 ボクの成長を促したからだよ」

 「まさか
  私と会う前の明智だったら
  勝ててたってことか?そうか、
  戦いを楽しもうとしたのが敗因か。
  よく覚えておこう」

お互いを称え合う明智とナターシャ

半笑いで金時が入ってきた。
「シビレだぜ!
 掟破りのナックルアロー。
 女の子にグーパンはダメだろう?
 しっかし、
 あれ見て興奮しないヤツはいないだろ。
 なにせイナズマが走ってたからな」

玉座のオンナ
 「ナターシャを討ち破るとは!
  一般人にしておくのはもったいない。
  暁月の魔女団での揉め事の決着は
  決闘と決まっている。
  実力がすべてであり
  より能力が高い者がすべるべきだ。
  それは昔から変わらない。
  約束通り反重力装置を手配しよう。
  さらに、何か要望はあるか?」



ってまぁ〜
魔女団から解放されたわけよ。
結構なハプニングだが
なんて事ない話におさめて話す明智。

魔女ルナ
「ちょっと
 賢いフリーガンに捕まったみたいなものよ。
 暁月の魔女団って実力行使の組織だし
 大義のためなら手段を選ばない」

「あくまで、組織側の大義だから
 人道的にどうかしてても関係ない。
 魔法界では
 保守派の女至上主義者の集団
 世界規模での古典派組織で
 魔族を世に知らしめようと躍起になってる」

玄白
 「平和主義の魔法界なんだろうけど
  派閥はどこにでもあるものなんだね」

明智
  「まぁ〜
   ボクの会ったのは
   組織では下っ端の部類だろうね。
   志し高いからか鼻につくんだよな。
   1つ感じたのは
   組織全体が一枚岩では無さそうだった」

万次郎
「また、わざわざ
 面倒なのにクビ突っ込みましたね。
 でも見事、撃破っ
 明智さんの活躍、見たかったな」

明智
 「また万次郎にも想いの込め方教えてやるよ。
  で、万次郎の方はどうだった?」


話は変わって
放課後のモードdeヒューマン学園。
木でできた精巧な1/1サイズの人形の教師
傀儡先生はおもむろに水の話をし出した。

 』水には生きている水と
   死んでいる水がある『

流石に頭の中に話しかけてくる感覚に
慣れてきた万次郎。

違いは温度と螺旋運動。
膨大な自然と触れあったり
水の意識と繋がったから分かった事実だ。
水の知性と繋がったんだ。
心臓が送る血液もいわば水分
心臓から送り出される血液は螺旋を描き
血管内を渦を描いて巡る。
古典派の魔女たちは
必要以上に血統にこだわるだろう?
それは次世代に紡がれる
遺伝を利用しているからだ。
全ての物質がエネルギーであり
身体の中を巡る血液もエネルギーだ。
血液から知識の蓄え全てを得られる。
古典派の魔女たちはこれを利用している。
血液の象徴としては
ヒトの意志が宿る。

 』と、まぁ〜おいおい
  授業で学ぶこととなるだろうから
  今は聞き流してくれて結構だ『

 』ここでは刻の流れが緩やかだ。
  忘れ去られた自分を取り戻すには
  いい環境だから、せいぜい励みなさい『

ちょうど一段落したところに
ボヘミとナオミが教室に入ってきた。

 「マンジ〜、お茶しに行こうよ。
  今日は割り勘でいいよ」

傀儡先生は嬉しそうに
ナノマシーンの入ったジャーを鞄にしまい込み
木の手を挙げて

 』それじゃ〜また、明日『 

ウキウキに去っていった。 カッ コッ コッ
それにしても上手く身体を操っている。
万次郎は目線で傀儡先生を追いながら
変化球なしに直球で聞いてみた。
「もしかしてみんな聴いてた?」

ボヘミアン 凛子
 「そのつもりはなかったんだけど
  テレパシーだと全部入ってきちゃう
  からさぁ〜聴こえちゃうよねぇ」

ナオミ
 「2人の会話を邪魔しても悪いじゃない」

万次郎
 「それじゃ
  ボクが魔法関係者じゃないことも?」

ボヘミ
「ヒトそれぞれに理由があるだろうから
 別に大したことじゃないわよ」

ナオミ
 「それに、
  秘密がないヒトなんていないもの。
  どんな事情があったって
  万次郎は、マンジ〜なんだから」

さすが女子校生だが熟女の2人
実年齢では40代に
差しかかろうとしているのは伊達じゃない、
重みのある発言だ。
万次郎は2人に笑いかけた。

「ありがとう、ボヘミにナオミ。
 やっぱり年上の女性は違うね。
 器から違うよ!」

 「そりゃそ〜よ。だってアタシ達
  魔女なんですものねぇ〜」

2人は万次郎の腕に手を絡ませて

ところで傀儡先生って元々魔族じゃなかったのって衝撃的なんですけどぉ。そうよね、あのヒト生きてるだけですでに魔族でないと成立しないんですけど、どうなってるの?それは彼?彼女?が一般社会の出であるって言ってたけど、キッカケは魔族の友だちからみたいだよ。へぇ〜それって誰なんだろうね?今も学園にいるのかな?え〜っとね、変な名前の人だったな、えぇ〜っと、椿【つばき】ペンドラゴンさんだったっけかな?うっそお!それってトマス・タイガーの相方じゃないのよ!レジェンダリー魔術師よ!そもそもトマス・タイガーって誰?現代魔法界の礎を築いた伝説の男よ。その相棒がぺンドラゴン。あんた、あれよ、アーサー王子の家系よ!それもペンドラゴンだからお父さんの流れを組む魔女家系なはずよ!円卓の騎士系は全然詳しくないから分からないよ?え〜そっから?話が長くなるわねえ。まぁいいや、今日はどこのカフェ行く?あそこの純喫茶なんてエモいんじゃない?いいじゃん!ところで万次郎のお母さんってどんな人?えっ母子家庭なんだ〜。へぇ〜なるほどだから何か陰がある感じ出てんのはそっからねぇ〜。


万次郎は何とか名前を思い出して
「どうも、カフェで聞いたところによると
 トマス・タイガーってのがキーパーソンで
 現代魔法界を作ったヒトだそうです」

魔女ルナ
 「うっそ!?相当の有名人じゃない!
  教科書に載るような人物よ。
  それに椿ペンドラゴンって
  奥さんくらい親密な関係よ」

「でも、どっちも男なんでしょ?」

 「そりゃ〜そうだけど例えるなら誰かなぁ
  ピンから兄弟くらい絆が深いって!」

明智「渋すぎない?その例え!
   宮 史郎と宮 五郎って
   誰が「女のみち」って歌知ってるんだよ」

万次郎
「ああ、歌の上手い
 ジャイアントロボみたいな顔した人でしょ?
 クレイジー剣さんのコブシ回しは
 ピンからルーツなんでしょ」

 「なんで知ってんだよ?万次郎って
  年齢偽ってない?」

「ただ、クレイジーケンバンドが
 好きなだけですよ。
 それで知ってるんですよ」

玄白「ああ、あの四角顔の七三分けの人ね」

 「何でみんな知ってるんだ?
  さすがにマコちゃんは知らないでしょ?」

マコ「握ったマイクを軽く回しながら
   歌うんでしょ?」

 「なんだよ?みんな知ってんじゃんよ」

魔女ルナ
「話戻すけど、
 そのペンドラゴンと親密だったって事なら
 傀儡先生ってトマス・タイガーに
 なっちゃうけど」

 「それじゃ〜もう傀儡先生の件も
  もう完了じゃんよ」
明智は目をぱちくりしている。

万次郎
「明智さんっ
 反重力装置の引き渡しはいつですか?」

 「明日って言ってたな」

「その時に一緒に行っていいですか?」

 「ああ、早くて明日の夜ってたから
  モードdeヒューマン学園終わりに
  落ち合おう。廃パチンコ屋も近くなんだ」

「ナターシャいないかなぁ。
 めっちゃ見たいです。ムキムキなんでしょ」

 「万次郎よりもデカイんじゃないか?
  ちょうど首があった頃のイワノフくらい
  あるんじゃないかな」

明智と万次郎の報告が
ひとしきり話し終わると
ルナ先生は
現代魔法界の成り立ちを話し始めた。

「魔法界で魔術の一般化、彼の開発した
 クリスタルを使った魔力蓄積装置の
 おかげで魔法界の底上げをし
 科学と魔法の融合を成し得たのが
 トマス・タイガーでそれを支援したのが
 椿・ペンドラゴンなのよ」
珍しく熱く語りだすルナ先生だった。


とある怪しげな洋建築の建物内
静まり返った王室のような
無駄に広い空間の部屋に
無駄に大きい椅子に
座る女と直立不動の女2人。
玉座に首を傾け頬杖をつくオンナは
5段下にいる体格のいい女に
語っている。

「知っているか?現代魔族はなぜか
 一般人に憧れを抱いている。
 嘆かわしい話だ。
 それは共同体生活に飽き飽きして
 自らの意思で生きている風に
 現代人が写るからだ。だが実際は違う」

現代人は画面上だけで
無関心と興奮を行ったり来たり
反射の繰り返すだけの
実験体オブジェクトとなっている。
ひと知れずデータを提供し
近代ガジェットによって巻き取られた
データを参照に望むモノを
ピンポイントで提供される烏合の衆。
むしろ飼い慣らされている。
自身のありかに問うことをやめて
そのうちAIしか信用できなくなるだろう。
ヒトって信用してやった方が
いい動きするの知ってるだろう?
何もない状態から生まれた事も忘れて
何もないと不安に駆られるようになっている。
気を逸らすだけの薄いありきたりの
集中という中毒に犯されている。
バカなのか?いい加減、足るを知れ!
神経科学では
集中力がなければ脳は短期的経験を
長期記憶に転送して
変換できないことを示している。
それは対応しきれていないことをすぐ忘れ
オートマチックに取捨択一
しているのではなくて
自ら選択して
しっかり味わって生きていないってことだ。
【認知ドリフト】と呼ばれる。
元々自分なんて無いものだが
それ以上にアイデンティティが
消失しつつあることすら気づけないほど
情報に溺れて
自我が埋もれてしまっていることを意味する。
まぁ〜眠ったままなのも結構、
目を覚さないことに励むのもよかろう。
好きにすればいい、だがどうか
自分を見失わないでくれ。
苦しく追い詰められた時こそ
新たなキバが芽吹き
磨かれるモノだからだ。
そこにはニンゲンを信じている
意図も感じられる。

「ところで
 ナニか報告があるのかナターシャ?」

体格の女ナターシャは
見事に打ちのめされた件を話した。
ことの顛末を聞いた女帝
暁月の魔女団【日本支部】を束ねる
DiVA【ディーバ】様

「ふっふ〜ん、
 珍しいこともあるのだな。
 それにオマエは悔しくなさそうだ。
 一体全体どういうことなのか?
 そのオトコたちに理由がありそうだな」

自然と乖離した存在ではない
我々は魔族。
生命の自由を取り戻すため
いにしえの、高次元な存在が導く世界を
魂の絶え間ない研磨により
美しい日々を取り戻すのだ。
くり返す輪廻の輪から抜け出す
導きを魔族が扇動するのだ。
ニンゲンは元から
情報因子操作能力を持ってはいるが
その扱いがあまりにもおろそかだ。
くれぐれもお前は魔族であることを忘れるなよ。
しかしながら、

「非〜常に、興味深い。
 オトコの割には頭が良さそうな連中だな。
 反重力装置の存在を知っているのは
 あまり良くないね。
 トマス・タイガーこと
 桐島 トマス 虎太郎を支えたとされる
 椿【つばき】ペンドラゴンの復活に
 邪魔だて、して来ないかしら?
 まぁ〜面白いオトコ達だ。
 しばらく泳がせておくか」

 「私が特に
  引っかかったところは
  ナターシャが満足気なところだ。
  武に一辺倒だったお前が
  プライドをへし折られたにもかかわらず
  自身の汚点を嬉しそうに
  このディーバに話している
  その現象に異様な違和感を感じる。
  それも単純明快なオトコどもに
  影響を受けてだ」

 「まぁいい、お前ほどのオンナが
  そう言うのならナニかあるのだろう。
  明日にでも反重力装置は
  お前が届けてやれ。それからだ」

ナターシャは直立不動で「はっ!了解しました」
返事をしたあと無意識に
また明智に会えるかと思うと
口元が綻んでいる。
それを横目にDiVA様は怪訝な顔をした。

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