Laboの男82
Labの男82
夜明けが遅くなって
ぬくもりが恋しい季節の到来。
日中が短くなって
足ばやに日が暮れる。
すっかり黄昏時がくり上がって
午後の3時にはもう夕焼け感が出ちゃっている。
冬のオレンジが校舎を鮮やかに染めて
建物の輪郭をうき立たせ
伸びた影は校門へと伸びてゆく。
校門前にはスーツと学ランが2人向かい合い
立ち話をしている。
ブラウンタイトスーツの男と談笑している
フード付きマント風コートを羽織る学生服。
七三分けのスーツ男は
学生にアドバイスをしているようだ。
しばらくすると互いに手をあげ
マント学生は離れて校門をくぐる。
見送ったあと背を向けて斜め上を仰ぎみる
七三分けがつぶやいた。
「上手くやってくれよっ」
マント学生は一旦見上げて建物を見る。
奇怪なデザインの校舎を横目に口を尖らせ
「ふぅ〜、さて行くか」
あらためて敷地内へと歩みをすすめる。
数日前
アカシックレコード店主
アクセルと別れて帰る道中
万次郎に話しかける明智
「そうなんだよ
ビジュアルで損してるんだよ。
技術者としては抜群に信頼できる。
胡散臭いんだけどさ〜
ある意味かくれみのにもなってるからさ」
「あまりにも万次郎が
ピンと来てないみたいだから
言っとくけど
ピックリ通りのヒト達って
みんなエージェントだからね」
「う、ウソでしょ?またぁ〜
適当なこと言ってません?」
「マジだよ。だから本業が忙しいから
シャッター閉まってるって言ってたでしょ」
「本業ってエージェントの仕事の方?」
「そうだよ」
「うわぁ〜oh!それじゃ〜
純喫茶のマスターとかもそうなんですか?」
「そう」 「あのアジアン雑貨屋さんも?」
「店主のディーバみたいな人はそうだけど
バイトのヒトは知らないよ。
雑貨の仕入れに諸外国へと同時に
諜報活動には便利でしょ」
「だから商店街の面子はクセが強いのか!
純喫茶のマスター
ただならぬ雰囲気まとってるし
カタギの顔じゃないですもん。
世の中ってホントに何でもありなんですね」
「いかに与えられたイメージに大衆は
支配されてるか?ってことなんだよ。
逆にいうと知らなくても
いいことなんだけどな」
「表面的に浅く
生きるんだったらねぇ。
それも悪くはないんでしょうけどね。
それだとちょっと味気ないから
こうして明智さんといるんですけど。
にしても、ちょっとぶっ飛びすぎて
味わいが深すぎますよ」
「それはそうと万次郎、仕事の話だけど
アクセルの顧客の外交官
王立院【おうりついん】賢治郎
苗字からして覚えてる?
以前潜入捜査した怪しいスナックのオーナー
ありゃ〜親族だな」
「王立院ってなかなか
聞かない苗字ですもんね?」
「スナック来夢来人【ライム・ライト】オーナー
外交官の親族で間違いないだろう。
甘やかされて仕上がったであろうボンクラ
王立院 三郎とはワケが違う。
こっちの王立院 賢治郎氏はおそらく
エリートコースを自で行くほうだな」
シークレット踵こと反重力装置は
永続的に稼動可能な、ほぼ永久機関。
中の動力源discは踏みしめるたびに
動力を得る素晴らしいシステム。
動力源を必要としない反重力装置は
くつ下の中に忍ばせるだけ。
賢治郎氏にしてみれば
プライドからの低身長を隠すためには
素晴らしく都合がいい装置。
常時装着可能だから入浴、就寝時以外は
シークレット踵は、たえず外さないらしい。
「たとえば、愛人であったり
よほどの身近な人間
身内の犯行がいいセンいってる筈だ。
早速、Labo帰って身元洗って検証
データ検索してもらうか?」
そもそも、外交官って何するんですか?ああそれか、接待ゴルフだとか横の繋がりを強くしてゆく仕事だよ。それって縁の下の力持ち的な?そうそういつでも頼みごとがしやすい関係性を保つ仕事だからフットワーク軽く回遊魚みたく絶えず泳いでないといけない。タイミング良く思い出してもらってアイツが居ると何とかしてくれる。なんて思ってもらわないといけない、まったくめんどくさい仕事さ。ところで万次郎、ジャケットからはみ出てるのなによ?えぇ〜なんでもらってるのよ?カッコいいですねぇって褒めたらくれたんですよ。でもこの伝統工芸コケティッシュ単1電池4個も入れて1回しか使えないそうです。充電式じゃないの?使い勝手が悪いねぇ。そもそも、万次郎、店に穴あけといてよくもらえるねぇ。罪悪感で忍びないから悪いなぁって思って褒めたらくれちゃったんですよ。なるほどね。ちゃんと使い方聞いた?もちろんですよそれは。もう出ないよねビィーーーーーーって?よかった。
スタスタと2人はピックリ商店街を歩いてゆく。
グィーーーーーン ガッション
シルバーな頑丈な扉が開き
地下8階最下層のエレベーターから
いい匂いを漂わせて登場の明智and万次郎
歯並びのいい白を見せ
明智は少し上機嫌でニヤけて
「みんなに、差し入れよ。
これ嫌いなヒトいないでしょ」
「見よ!この黄金色の衣を纏った勇姿を!
自然に笑っちゃうだろ?」
抱えられた茶色の紙袋にはあふれんばかりの
「20個くれって
コロッケガールに言ったら
なんと5個もオマケしてくれたのよ。
25個もあったらみんな心ゆくまで
お腹いっぱい食べれるでしょ?」
マイチingマコ
「いたいけなコロッケガール
垂らしコマしてんじゃないわよ。
たぶらかしてる場合かバカ」
「いやいゃ、旦那持ちで
子ども2人くらい
年ごろまで育て上げてそうな
貫禄グラマラスガールよ?」
「そういうこと言ってんじゃないのよ。
いたいけなコロッケガールに
気を持たせるような
無責任なファンタジーを
植えつけんじゃないっ
って言ってるのよ」
「別に、あれよっ
天気の話と独特なネコの髪飾りを
褒めただけだよ」
腕組みをして万次郎
「明智さんの髪飾りを褒めたのが
クリティカルHITしましたねぇ。
黄金コロッケ5個のオマケは
ピックリ通り商店街
肉屋史上Worldレコード更新ですね」
「普段は無口なコロッケガールなんですけど
帰る頃には手を振って
バイバイしてくれましたからね」
「ほら、たぶらかしてんじゃんか」
頭をワサワサ白衣の玄白はメガネをあげて
「なに?その、ははははっ
いたいけなコロッケガールって?
ははははっある程度人生の
酸いも甘いも経験してるヒトなんでしょ?
だっはははっ
いたいけなって言葉
乙女チック過ぎるね」
「バカね、オンナはいつまで経っても
そのムネの内には乙女を飼ってるんだよ。
だから適当なことばっか
明智は言うんじゃないってるのぉ!」
「いやいゃ、思わせぶりかどうかは
受け手次第じゃんよ?」
「それを楽しんでる節があるのがダメだっ
ってるんだよ。
野心ギラギラな女スパイに騙されて
痛い目にあえばいい」
「いやいゃ〜、手厳しい〜ねぇ。
もう痛い目にはあったんだけどなぁ。
まだ足りないっ?」
「ダメだ、自覚症状がない」
マコと明智の顔を見てふと話し出すルナ
「水さすようで悪いんだけど
あれだねっ
マコって男女の出会いであったり
恋愛は素敵であれって願望が強いよね。
それこそ男女間にナニか
期待を込めてない?」
コロッケに手を伸ばすマコ
フライングもぐもぐマイッチing
「それもそうだけどモテる奴に
モテない奴の気持ちを
言いたかっただけなんだから。
明智はいいヤツなんだけど
その気にさせるんだったら
それ相応に覚悟決めろよって
いつも思ってるからよ」
「それなーぁ」2人指をさし合う。「フフフッ」
ルナ
「もしかしてアラン・ドロンだとか
好きだったりする?」
「太陽がいっぱいって映画は好きだわぁ。
でも冒険野郎マックガイバーが
単独1位だけどね」
「アランのドロンちゃんは
相当の人でなしだからね〜ぇ」
そうらしいわね、少し闇を抱えてる系男子は
ハンサムが多い気がするわ〜。それな。
好みは分かれる気がするんだけどねぇ。
2人はdeepに話し込んでいる。
いやはや、たくましいたりゃらありゃしない。
万次郎
「そうなんですよアランのドロンさんは
超絶男前なんですけど
本当、人でなしだったみたいですよね」
ルナ
「彼ねぇ、魔法界出身なのよ。
自分勝手の女ったらしで有名で
マジカル界隈でも悪名が轟きすぎて
現代社会に逃げ込んだのよ」
「ルナ先生とは種類が違うんでしょうけど
魔法界をとび出してブレイクしたんですね。
まぁ〜あれだけハンサムなら
何かしらで目立ったでしょうけどね。
世界的色男俳優の象徴とまでに
なったんですからね」
ルナはテーブルの上に置かれた
コロッケを手にして
「アタシにしてみれば
彼は全然ハンサムじゃないけどね。
闇を抱えたツラ構えしてるから
世をはかなむ系男子は
オンナに苦労させるから」
「確かに、かなしい目が印象的ですよ」
「悪いのは自分でない感が
滲み出てるのがいやだね。
女の母性本能にスイッチを入れて
活力を与えるだろうけど、そもそも
それは男に注ぎこむんじゃなくて
本来、子どもの為だからね。
利他的に行動する役割が
オンナの一方通行になることが多い」
「ルナ先生も色々とあったんですね」
万次郎を指さして微笑むルナ「ふふふっ」
全く気にするそぶりも無く明智
「ウッディーは食べないんだったよね。
ミネラルウォーターでいい?
軟水が好みだったよね」
木の手を差し出して木人ウッディーは
ボトルを受け取る
「おぅ!ありがとごぜぇ〜マァ〜す。
アジア圏は軟水なんダスよ。
生まれた環境由来の軟水は
より馴染むダスなぁ」
玄白は最近できた給湯室へとおもむき
お湯を沸かしている。後ろに振りかえり
「コロッケには緑茶〜?
みんなあったかいお茶でいいかい?」
一同介してテーブルで
お茶とコロッケで一服。
明智「ここのコロッケおかしいでしょ?
なんか入ってるんじゃないの。
ちょっと分析したくなる
美味さだよね?」
玄白「解析にまわすの?」
ルナ「そういう事じゃないのよ」
マコ「美味さの表現じゃないの?」
万次郎「今のはどっちか分かんなかったです」
潜入捜査で分かった
スナックで提供されていた
明智が違和感を感じたウィスキー
勝手にくすねてきて判明した
解析結果に混入されてはいけないドラック
フェンタニルの一件が被るからだ。
ストリートでの価格は8ドルと異常に安価。
モルヒネの80倍の鎮静作用を有する
強力な合成オピオイド
意図してでないと混ぜない代物。
「ウッディーはさぁ、
今からでもクリスタルマンに
アクセスできるの?」
「ああ、いつでもできるダスよ。
クリスタルフィールドを借りて
検索もできるダスな」
「クリスタルマン自身には
誰かがアクセルしたか分かるの?
実際クリスタルマンのマインドに
ダイブしているワケでしょ?」
木の長いユビを顎に当てて
「クリスタルフィールドを間借りして
調べ物する分には、あんまり気づいたりは
しないと思うダスな。
膨大なデータに触れてるだけダスから
気にも留めてないんじゃないダスか」
「クリスタルフィールドってイメージだと
図書館に出向いてる感じなの?
さすがに館長は借りられてる本までは
掌握していない。ってな具合?」
「おぅ!まさにそうダスよ。
調べるだけなら誰でもすぐに
アクセスできるようになりますよ」
「そいじゃ〜今度Laboのみんなに
ウッディー先生レクチャーしてよ」
みんながワイワイコロッケを食べる中
ウッディーに
王立院家をサーチしてもらう。
クリスタルフィールドにアクセスしながら
うわ目づかいでしばらく停止
長い木の指を器用に使いながら
パソコンに入手したデータを入力
まだ言葉を使わない会話に慣れていない
Laboメンバーに可視化する。
アクセスand検索結果、
その昔、栄華を極めた財閥
いわゆる上級国民といわれる階層だ。
格調高い王立院家は
古くから繋がりが広く
政治家とみなされる様な公職であったり
地位にある人物で構成されていた。
電力会社 鉄道関係 医療関係
航空関係は近頃撤退したようだ。
王立院 賢治郎
紗希【妻
蓮太郎【長男
蓮治郎【次男
蓮華【長女
家族構成はこの通り。
ついでにスナックオーナー
王立院 三郎も調べてもらうと
鉄道会社の令嬢と結婚するも
子供はいないそうだ。
どうやら政略結婚だと
普段から品のない発言をしない
ウッディーが言うのだからそうであろう。
クリスタルフィールドでは
とてつもない所まで調査可能そうだが
過去に起こった事例は調べれても
未来までは分からないそうだ。
より細かな部分では
クリスタルマンの興味の対象なのか
そうでないのか、なども関わってくる。
立て続けに打ち込んでくれた情報
モニターを見つめて明智
「ウッディー、蓮太郎?いや、蓮治郎のこと
もうちょっとツッコんで調べれる?」
「アイアイサー。人の想いが深ければ
データとして残ってると思われるダス」
上を見る仕草で深呼吸
人類からツリーマンになってからは
肺機能はもうそれほど活躍してはいない
木人であるウッディー。
それでも固そうな茶色の胸元が
軽く上下している。
もう呼吸は必要ないそうだが
ニンゲンであった頃のクセだそうだ。
深く息を吐き出して
瞑想andクリスタルフィールドにアクセス中。
カタカタカタッ カタッ
しばらくしてキーボードを叩きだす。
蓮治郎は
大学を卒業後なぜかモード系専門学校へ
現在ファッションデザイン学校に
通っているようだ。
「ルナ先生?この専門学校って
マジカル学校かい?」
眉をひそめてノートパソコンを眺める。
コロッケを飲みこんでさらにもう1つを手に
「そこそこ有名な魔法学校ね」 パクリ
七三分のサイドに触れて指パッチン
「ビンゴだな!この蓮治郎が関係してそうだ。
そこまでは分かんないよねウッディー?」
「そうダスな〜。その反重力装置は
生きていないから探索までは難しいダス。
それにまだハプニング途中
原因と結果がハッキリしていないと
記録には残らないんダスよ」
「そうね。無限の可能性、パラレルワールド
分岐の先までは記録されないってことよね」
「飲みこみが早いダスよね。
まさにそのとおりダス。やっぱり
明智さんはスタイリッシュな男前
ダスなぁ」
「ところで
ルナ先生はモード系専門学校のツテある?
何とか、ねじ込めないかねぇ?」
ああ、知り合いがここの学園に勤めてるから何とかなるよ。それって潜入調査するってこと?
明智だと学生になるのは、ちときびしい〜んじゃないの?コスプレ感が出ちゃうわね。なぁ〜に全然大丈夫よ。大型ルーキーいるじゃない?
oh! 「万次郎、出番だゼ!」
