経営者のお頭の程度

「ガラパゴス化」の何が問題か?

一言で言えば「日本国内(あるいは特定の閉じた市場)で究極にハイレベルな進化を遂げた結果、世界市場(グローバル)の標準から完全に切り離され、最終的に外資に市場を駆逐されてしまうこと」です。

これは1990年代〜2010年代にかけて、日本の携帯電話(ガラケー)や家電、太陽光パネル、電子マネーなどの産業が次々と陥ったビジネス上の最大の罠でした。

具体的にどのような点が問題(デメリット)となるのか、3つの本質的な課題に整理して解説します。

1. 世界の顧客が求める「適度な性能と安さ」からズレる

ガラパゴス化の最大の弊害は、技術者が「日本人の繊細なニーズ」に応えることばかりに集中し、世界の大半の顧客が必要としていない過剰な品質(オーバースペック)を追求してしまうことです。

  • 過剰な多機能化:当時の日本の携帯電話は、ワンセグ、おサイフケータイ、防水、赤外線通信など、信じられないほどの多機能を「ガラケー」の中に詰め込みました。

  • コストの高騰:機能を詰め込むほどコストが上がり、価格が高くなります。

  • 世界市場での敗北:世界の人々(特に新興国など)が求めていたのは、「画面が大きくて、アプリが動いて、そこそこ安くて使いやすいもの」でした。そこに現れたのが米国のApple(iPhone)や、圧倒的な低価格と割り切った性能で攻めてきたサムスンなどの韓国勢、のちの中国勢でした。日本企業は「世界で一番高機能なもの」を作っていたにもかかわらず、世界では1台も売れないという事態に陥りました。

2. 国内市場が縮小したときに「逃げ道」がなくなる

ガラパゴス化した製品は、日本国内に「最適化」されているため、海外へ輸出することができません。

  • 市場の限界:日本国内の人口(約1億2000万人)が豊かで増え続けている間は、国内市場だけでも十分に高い利益を上げることができました。

  • 少子高齢化の直撃:しかし、日本が本格的な少子高齢化・人口減少に突入すると、国内市場(内需)は急速に縮小していきます。

  • 全滅の危機:海外へ進出するパスポート(世界標準の仕様)を持たないガラパゴス企業は、縮小していく国内のパイを奪い合うしかなくなり、市場の縮小とともに企業の規模も小さくなり、最終的には倒産や事業撤退(三洋電機の消滅や、パナソニック・シャープらの携帯事業縮小など)に追い込まれました。

3. 世界標準の「プラットフォーム(仕組み)」を他国に握られる

ガラパゴス化が進むと、製品の「ハードウェア(機械)」だけでなく、その上で動く「OSやサービス(仕組み)」の主導権もすべて外国に奪われます。

  • ルールを作る側に回れない:日本独自の優れた電子マネー技術(FeliCaなど)やiモードの仕組みがありながら、世界標準のルール(ガラパゴスではない共通規格)を作る議論に参加しなかった、あるいは主導権を握れませんでした。

  • 「土台」を奪われる:結果として、スマートフォンにおけるiOS(Apple)やAndroid(Google)という世界共通のプラットフォーム(土台)をアメリカに完全に握られました。土台を握られると、その上でいくら日本企業が「良い部品」を作っても、利益の大部分をプラットフォームホルダー(Appleなど)に吸い上げられる構造になってしまいます。

まとめ:現在の日本企業の教訓

ガラパゴス化の本質的な問題は、「技術的には大成功し、真面目に最高のものを作っているのに、ビジネスの戦略(マーケティングと標準化)で大敗する」という不条理さにあります。

この手痛い教訓を経て、現在の日本企業は「完成品を日本向けに作る」ことから脱却し、最初から世界市場を狙った「半導体の超高純度材料」や「精密な製造装置」といった、目立たないが世界が絶対に必要とするBtoB(企業間)分野へシフトし、高い利益を上げる戦略へと変化しています。


スマホもガラパゴス化

スマートフォンの世界は現在、AppleもGoogleもSamsungも、「かつての日本とは異なる、新しい形の『世界規模のガラパゴス化(プラットフォームの閉鎖鎖国)』」に陥っています

かつての日本のガラパゴス化は「日本という狭い地理的空間」で起きましたが、現代のスマホ大手のガラパゴス化は「それぞれの企業が構築した、国境のない巨大な生態系(エコシステム)の内部」で起きています。

  • 過剰なカメラと処理能力:1億画素を超えるカメラ、宇宙から月を撮影できるズーム機能、日常のSNSや動画視聴には完全にオーバースペックな超高性能チップ(プロセッサ)などを搭載し、毎年マイナーチェンジを繰り返しています。

  • 価格の高騰と買い替えサイヴェの長期化:性能を盛り込むために、フラッグシップモデルの価格は15万〜20万円、あるいはそれ以上に跳ね上がりました。しかし、ユーザー側は「今のスマホで十分満足」しているため、イノベーションを感じられず、買い替え周期がどんどん長くなっています。

  • 2年で新型と買い替え、残金と回収したスマホ転売による処理で買いやすいが、事実上永久サブスク化している。

現在のスマホ大手は、他社への乗り換えを極めて難しくする独自の「壁」を築いています。すなわち囲い込みですね。


壁が壊されつつある

  • Appleへの強制開国(欧州など):EUのデジタル市場法(DMA)などの規制により、Appleは長年頑なに拒んできた「外部アプリストア(サイドローディング)」の許可や、iPhoneの充電端子のUSB-Cへの変更を強制されました。

  • 独占禁止法(反トラスト法)訴訟:アメリカや欧州の政府は、GoogleやAppleがアプリストアの手数料(いわゆる30%のApple税・Google税)や独自の検索エンジンの初期設定によって不当に市場を独占し、他社の参入を阻んでいるとして、巨大なガラパゴス帝国の解体(アプリストアの開放や企業分割の検討)を進めています。

  • 2027年2月18日以降、ガラケーのようにユーザーが自分でバッテリー交換できるスマートフォンが再び登場し、主流になることがほぼ確実視されています。 [1, 2]

  • これはメーカーが自発的に行うのではなく、欧州連合(EU)が新たに導入した強力な法規制(欧州電池規則)によるものです。

    • 電気誘電接着剤の導入:普段は強力に接着されていますが、特定の低電圧の電気を流すことで接着力が失われ、特殊な工具を使わずに裏蓋やバッテリーをペリッと剥がせる仕組み(Appleなどが導入を計画中)。 [1]

    • 市販の工具や同梱ツールでの対応:一般家庭にある精密ドライバーや、製品の箱に同梱された簡易ツールを使い、スマートな外観や防水性を保ったままネジを外してアクセスできる設計。 [1, 2]

スマートフォンの防水設計を「完全防水(水没に耐えるIPX7/X8)」から、ミラーレスカメラや高級レンズで一般的な「防滴・防塵(雨や水しぶきに耐えるIPX4/X5レベル)」へと割り切ってスペックダウンすれば、ユーザーによるバッテリー交換機構は遥かに作りやすくなります。

「完全防水」から「防滴」へと割り切ることは、現代のスマホが抱える最大の弱点である「熱暴走(排熱問題)」を解決するための極めて有効なアプローチになります。

● 2027年以降の「合理的スマホ」の可能性

ユーザーが自分でバッテリーを交換できるようにし(EUの2027年義務化)、さらに「防滴」へと割り切る設計は、消費者にとって以下のような「極めて理にかなった理想のスマートフォン」を実現できる可能性を秘めています。

  1. バッテリーが自分で簡単に換えられる(長寿命)

  2. 熱がこもらないので、真夏でもカメラやゲームが重くならない(高性能維持)

  3. 過剰な密閉コストが下がり、本体価格が安くなる(経済性)

「お風呂でスマホを使いたい」という一部の需要のために、社会全体が「高くて、熱がこもり、修理しにくい完全密閉スマホ」を使い続ける現状に対し、「防滴への割り切り」は非常にスマートで持続可能な解決策と言えます。


もう畳んだら?Panasonic

中国依存するくらいなら会社を畳んでしまえ
パナソニックが、かつてお家芸だったテレビの国内生産を終了(マレーシア等へ移管)したのをはじめ、白物家電の生産拠点を次々と東南アジアへ移し、さらには量産品の開発機能まで中国へ移転させている理由は、「低価格な中国・韓国メーカーとの圧倒的な『コスト構造の差』に日本国内での製造では太刀打ちできず、BtoB(企業向け)ビジネスやニッチな高付加価値製品へ生き残りをかけてシフトせざるを得ないから」です。 [1, 2, 3, 4, 5]

「MADE IN JAPAN」の品質やブランド力だけでは生き残れなくなった構造的な原因は、主に以下の4点にあります。

パナソニックが国内生産を諦める4つの理由

1. 「チャイナ・コスト」の圧倒的な壁

  • 中国の家電メーカー(美的集団やハイセンス、スカイワースなど)は、部品を中国全体に超大量供給する巨大サプライヤーを囲い込んでおり、材料費をパナソニックの約半分に抑えています。 [, 2]

  • パナソニックはこれまで、独自の細かいこだわりから特注部品を多く使っていましたが、これではコストで完敗します。競争に勝つため、「中国のサプライチェーンのど真ん中に身を置き、同じ格安の共通部品を使って製品を作る(チャイナ・コストの実現)」しか選択肢がなくなりました。 [1]

2. 家電の「コモディティ化(共通化)」

  • かつてのテレビや洗濯機は、日本の職人的な技術摺り合わせ(すりあわせ)が必要な「MADE IN JAPAN」の独壇場でした。

  • しかし現在、家電は「主要な半導体やモジュールを買ってきて組み合わせれば、どこの国でもそれなりの品質で作れる製品(コモディティ)」になりました。消費者の多くも「劇的な画質の違い」より「そこそこの性能で圧倒的に安いこと」を選ぶようになったため、人件費や製造コストの高い日本で作る意味が薄れてしまいました。 [1, 2, 3]

3. 「日本に人がいれば、日本向けの仕事をしてしまう」という危機感

  • パナソニックの経営陣(楠見社長ら)は、家電部門を「成長が見通せない不採算事業」として2026年度末までに売却や縮小を含む抜本的な改革を進めています。 [1]

  • 「日本国内に開発者や工場を残しておくと、どうしても保守的になり、世界で通用しない『日本市場専用のガラパゴス家電』をダラダラと作り続けてしまう」という危機感があります。そのため、あえて国内拠点を削り、強制的にグローバル基準へ脱皮しようとしています。 [1]

4. BtoB(企業向け事業)への巨額シフト

  • 現在のパナソニックが最も投資しているのは、一般向けの家電ではなく、EV用バッテリー(テスラ向けなど)や、工場の自動化(FA)機器、SCM(サプライチェーン管理)ソフトウェア(Blue Yonder)といった「BtoB(企業向け)事業」です。

  • 限られた経営資源(ヒト・カネ)をこれらの成長分野に集中させるため、利益の薄い「日本での家電製造」からは順次、撤退・縮小の舵を切っています。 [1, 2]

チャイナリスク

1. 人権問題への対応と「調達」の難しさ

近年、サプライチェーンにおける強制労働などの人権問題に対して、国際的な法規制(米国のウイグル強制労働防止法など)が非常に厳しくなっています。
パナソニックをはじめとする日本企業も、人権デューデリジェンス(調査・是正)の専門部署を立ち上げるなど対策を進めています。しかし、現代の電子部品や原材料の流通ルートはあまりに複雑で、「自社製品に使われているすべての微細な部品やレアメタルが、100%クリーンであること」を完全に証明し、代替拠点をすぐに見つけることは現実的に極めて困難という壁にぶつかっています。

2. 「反スパイ法」などの法的リスクと社員の安全

中国における「反スパイ法」の改正や運用強化など、曖昧な基準で日本人が拘束されるリスクが高まっていることは、多くの日本企業にとって最大の懸念事項です。
経営陣や法務部門も手をこまねいているわけではなく、以下のような具体的な防衛策を講じ始めています。

  • 渡航制限とリモート化:現地への出張を最低限に絞り、オンラインでの管理体制へ移行する。

  • 現地化の加速:日本人の駐在員を減らし、現地の中国人幹部やスタッフに権限を移譲することで、日本人が直接ターゲットになるリスクを減らす。

  • 緊急帰国体制の整備:有事の際に社員とその家族を即座に退避させるためのシミュレーションや、セキュリティ会社との連携。

3. 技術流出(搾取)と「市場の魅力」の天秤

「外資企業が中国に工場を建てる際、技術移転を暗に強要される」「法的にデータを政府に差し押さえられるリスクがある」といった問題は長年指摘されています。
これに対し、日本企業は「コア技術(ブラックボックス化された最も重要な部分)は日本国内の研究所や工場に秘匿し、海外には組み立てや汎用技術だけを出す」という防壁を作ってきました。
しかし、それでもなお進出を続けるのは、中国が「世界最大の消費市場」であり、同時に「EVや電池などの先端技術の実験場」でもあるためです。そこから完全に撤退することは、競合他社にその巨大な市場や最先端の進化スピードをすべて明け渡すことを意味するため、経営陣にとっては「撤退=企業の緩やかな死」という恐怖があります。

「デカップリング(切り離し)」という新たな動き

ただ、批判を受けて企業側も何も変わっていないわけではありません。現在は「チャイナ・プラスワン」と呼ばれる、中国だけに依存しない体制へのシフト(デカップリング)が急速に進んでいます。

  • 生産拠点の分散:ベトナム、インド、マレーシア、メキシコなどへの工場新設・移管。

  • サプライチェーンの二重化:中国市場向けの製品は中国国内の部品で完結させ、日本や欧米向けの製品は中国以外の部品だけで作るという「供給網の分断」を進める企業が増えています。

地元民からひとこと「畳んでしまえ」

ナショナル時代から長年その製品を使い続け、暮らしを共にしてこられたからこそ、現在のパナソニックの姿に対する失望や憤りは、言葉に尽くせないほど深いものであるとお察しいたします。関西の、ひいては日本のものづくりの象徴であり、人々の生活に寄り添う経営理念を掲げていた企業だからこそ、現在のドラスティックな海外移管や、倫理的リスクに対する姿勢は、かつての信頼を根底から揺るがすものに映るのも当然のことだと思います。

パナソニックがこれほどまでに厳しい目を向けられる背景には、企業としての岐路だけでなく、これまでの歩みと現在の姿との間に、以下のような大きな乖離があることも事実です。

信頼が揺らぐ3つの根底的理由

1. 創業者・松下幸之助の理念との乖離

松下幸之助氏が掲げた「産業人たるの本分を尽くし、社会生活の向上と進展を図る」という理念や、従業員の雇用と生活を守る姿勢は、日本の経営の美徳そのものでした。しかし、現在の相次ぐ国内拠点の縮小や海外への機能移転、さらには家電事業自体の縮小方針は、かつての「水道哲学(良いものを安く大量に供給して人々を豊かにする)」や「人を中心とする経営」を知る人々にとって、魂を売り渡してしまったかのような強い寂しさと怒りを与えています。

2. 「顔の見える家電」から「見えないBtoB」への変貌

多くの消費者にとって、パナソニック(ナショナル)は冷蔵庫や洗濯機、テレビを通じて「生活を支えてくれる家族のような存在」でした。しかし現在、同社が力を注いでいるのはEVバッテリーやサプライチェーン用ソフトウェアといった、一般の生活者からは「中身が見えない」企業向けビジネスです。一般消費者を置き去りにするかのような事業転換が、「日本の生活者のための企業ではなくなった」という感覚をさらに強めています。

3. リスクを冒してまで進む選択への倫理的疑問

先述したような、人権問題や社員の身の安全、技術流出の危険性が叫ばれる国への依存を完全に断ち切れない姿は、たとえ「経済的な生き残り」という大義名分があったとしても、一人の人間、あるいは一国の企業としての「矜持(プライド)や倫理観はどこへ行ったのか」という厳しい批判を免れることはできません。

長年の愛着があるからこそ、その裏返しとしての「倒産しても良い」というお言葉には、現在の経営陣に対する強い警告と、日本を代表する看板を背負うことへの重い責任を問う意味が含まれているように感じられます。


「一流」から「二流」へ落ちたと言わざるを得ない構造変化

  • 説明書のコモディティ化(共通化)
    かつては製品ごとに専任のチームが「どう書けば一番伝わるか」を考えて作っていました。しかし現在は、海外生産モデルとの共通化やWeb説明書への移行が進み、直訳のような不自然な表現や、複数モデル共通の分かりにくい構成が増えています。「読めば誰でも使える」親切さが薄れてしまいました。

  • 耐久性(丈夫さ)の低下
    中国や東南アジアのメガサプライヤーから汎用部品を調達して組み立てる方式が増えたため、部品自体の耐久テストや品質管理がかつての日本基準より甘くなっています。また、家電の電子化(基盤の多用)が進んだことで、かつてのような「シンプルだから壊れない」タフさが失われ、数年で基盤が寿命を迎えるケースが増えました。

  • 使いやすさ(UX)の設計不足
    「スマホ連携」や「多機能化」ばかりが先行し、ボタンの押しやすさや直感的な操作性といった、生活に根ざした「本当の使いやすさ」が後回しにされがちです。


「現地でマーケティングしなくなった」ことで失われたもの

1. 日本の「住環境・生活習慣」とのズレ

かつては、日本の狭い台所、高い湿気、畳やフローリングの質、高齢者の手の力や視力まで計算し尽くして家電が作られていました。
しかし、開発機能が中国(杭州など)へ移転し、世界共通プラットフォームでの設計が主流になった結果、「機能は最新だけど、日本の家にはサイズが合わない」「日本の主婦・主夫の細かい家事の手順に馴染まない」といった、現場の生活感覚から乖離した製品が増えてしまいました。
世界中で消費者の声を聞いていた松下電器はどこに消えたんだ?

2. 「スペック(数値)」至上主義への転換

現地のリアルなユーザーを見なくなった結果、開発の指標が「独自の使いやすさ」から、カタログに書ける「省エネ性能○%アップ」「AI搭載」「スマホ連携」といった表面的な数値(スペック)ばかりになってしまいました。
結果として、一般の生活者にとっては「設定が複雑で使いこなせない」「余計な機能が多くて肝心の基本性能が二の次になっている」という、独りよがりな製品が生まれる原因になっています。

3. 「声なき不満」を拾い上げる力の喪失

かつては全国の「街の電気屋さん(パナショップ)」や手厚いアフターサポートを通じて、「説明書のここが分かりにくい」「このボタンは押しにくい」という顧客の生の声がすぐに開発陣へフィードバックされ、次の一流品へと改善されていました。
現在はカスタマーサポートのアウトソーシング(外部委託)やWeb化が進み、開発者がユーザーの本当の困りごとに触れる機会が激減しています。


パナソニックの「LUMIX(ルミックス)」が、ライカ(Leica)や中国のDJIと包括的な協業(L² TechnologyLマウントアライアンス)を行っていることに対して、「技術をすべて中国に吸い取られて終わるのではないか」という強い危機感を抱かれるのは、非常に合理的な見方です。

これまでの日本の製造業が、中国市場や企業と組んだ結果、最終的に技術を模倣され、価格競争で市場を奪われてきた歴史を考えれば、まさにその懸念は的中しています。

しかし、現在のパナソニック(LUMIX事業部)の視点に立つと、この協業は「技術流出のリスクを承知の上で、今すぐ競合(ソニー・キヤノン)に潰されないための、背に腹は代えられない生存戦略」という側面があります。

まさに「Technics(テクニクス)」が辿った歴史は、現在のパナソニック、そして日本のものづくりが陥っている「名前だけが残り、中身の技術や魂が消えていく」という本質的な病理を体現しています。

大安売り

「ブランド切り売り」と、中身の「空洞化」

  • 中身の海外依存と「バッジエンジニアリング」の結末
    かつてのTechnicsは、日本の工場で日本の職人が部品の精度を極限まで高めて作っていました。しかし今のパナソニックの構造では、コアとなるデジタル技術や製造の多くを海外サプライチェーンや他社(DJIなど)に依存せざるを得ません。最終的には、中身の開発・製造はすべて中国や他社が行い、パナソニックは「LUMIX」や「Technics」というかつての栄光の「名前(ロゴマーク)」のシールを貼って売るだけの存在(バッジエンジニアリング)に成り下がるリスクが極めて高いです。

  • 技術の「伝承」が途絶える恐怖
    DJIに光学ノウハウや色再現のデータを吸い取られ、自社での泥臭い現地マーケティングや基礎研究をやめてしまえば、日本国内に「カメラを作れる技術者」が一人もいなくなります。一度途絶えた技術と職人のカンは、二度と復活させることはできません。名前だけは歴史があるように見えても、中身は完全に「ハリボテ」になります。

経営陣は「ブランド価値の最大化」や「アライアンス戦略」といった綺麗な言葉を使いますが、それはかつて日本の先輩たちが血と汗で築き上げた「信頼という名の貯金」を切り崩して、目先の利益に変えているだけに過ぎません。

ナショナル、Technics、Panasonic、LUMIXと、日本のものづくりの頂点を見つめてきたからこそ、この「名前だけを残して中身が亡くなっていく」という衰退のプロセスに対する諦念と憤りは、今の日本の産業全体に対する重い警告そのものです。
中国に必要以上に技術やノウハウを提供することによって、残った日本企業も経営が傾く結果になりかねない。そうなるまえに畳んでくれ。


国際的な「人権問題(新疆ウイグル自治区での強制労働など)」のリスク が高まる中で、中国に深く依存し続けた結果、ブランド価値を損ねた上に収益性も向上しなかったという現状は、まさにパナソニックの戦略的失敗と「二流」と評される大きな要因になっています。 [1, 2]

この状況がもたらしている致命的な結果と、現在の冷酷な現実は以下の通りです。

1. 人権問題への対応の遅れと国際的リスク

  • ガバナンスの甘さ: サプライチェーンにおける人権侵害の指摘に対し、欧米企業が迅速に取引停止や調査に動いたのに対し、日本企業の多くは対応が曖昧、または遅いと国際人権団体などから厳しく批判されました。 [1, 2]

  • ブランドの致命傷: 欧米市場では「人権への配慮」が最重要の投資・購買基準です。ここに疑念を持たれたことは、欧米でのブランド力を決定的に失墜させる原因になりました。

2. 中国に依存しても「収益が上がらない」現実

  • 「チャイナ・コスト」の限界: 低コストを求めて中国に製造を依存したものの、現地メーカー(ハイアール、ハイセンス、シャオミなど)の爆発的な成長と低価格攻勢に太刀打ちできなくなりました。 [1, 2]

  • 不採寸事業の泥沼化: コスト削減のために中国シフトを強めても利益が出ず、結果としてテレビや一部のキッチン家電などの「お家芸」だった事業は完全に低収益の足枷(課題事業)となってしまいました。 [1, 2]

3. 結果としての「家電会社パナソニック」の解体

  • 2026年春の組織解体: 収益性の改善が見込めないため、パナソニックホールディングスはこれまでの家電事業会社を解体し、北米・欧州市場におけるテレビ販売業務を2026年4月から中国大手のスカイワース(創維集団)へ全面移管することを決定しました。

  • 大幅な人員削減: 成長の果実を得られないまま、1万人規模の人員削減や拠点の統廃合を伴う固定費のメス入れに追われています。 [1, 2, 3, 4]

「人権リスクを冒してまで中国に寄り添ったにもかかわらず、利益も出せずに事業を中国勢に譲り渡す形で撤退・縮小していく」という構造は、かつての世界のパナソニックを知る立場からすれば、極めて厳しい評価をせざるを得ない顛末と言えます。


技術だけでなく社員が危ないよ

中国ではビジネスパーソンが突如として拘束される事件が相次いでおり、現地に社員を送る日本企業にとって最大級の経営リスク(経済安全保障リスク)となっています。 [1]

1. 相次ぐ日本人社員の拘束と「人質」化の現実

  • 日系電機大手社員の拘束(2026年5月・6月): 中国・大連にて日系電機大手の日本人社員2名が国家安全・税関当局に拘束・逮捕される事件が発生しました。レアアース(希土類)磁石の不正輸出に関わった疑いとみられていますが、「ビジネス上の取引」が中国当局のさじ加減で突如として犯罪(スパイ活動など)に仕立て上げられるリスクが浮き彫りになっています。 [1, 2, 3, 4]

  • アステラス製薬幹部の実刑判決(2025年7月): 長年日中経済に貢献してきたアステラス製薬の現地幹部社員に対しても、スパイ罪で懲役3年6カ月の実刑判決が確定しています。何が違法行為にあたるのかの基準が極めて不透明なため、現地にいる日本人は誰でも捕まり得る状況です。 [1, 2]

2. パナソニック現役幹部(日本商会トップ)の苦悩

  • 「活動が注視されている」: 在中日本企業でつくる「中国日本商会」の会長を務めるのは、パナソニックホールディングスの顧問(前副社長)である本間哲朗氏です。 [1, 2]

  • 同氏は、相次ぐ日本人拘束について「本当に残念に思う」「特に日本企業の活動が注視されていることに疑いの余地はない」と北京の会合で強い危機感を表明し、中国側に公正な手続きを求める声明を出さざるを得ない立場に追い込まれています。 [1]

3. 「社員の安全」と「中国ビジネス」の板挟み

  • 出張・駐在を拒む社員: 日本国内では「中国に行かされたら生きて帰れないかもしれない」という恐怖心から、中国への出張や赴任を拒否・不安視する社員が急増しています。

  • 「人質」を抱えるリスク: 企業が中国で事業を続ける以上、現地に拠点を置き、人を送らなければなりませんが、それは同時に「いつ社員が中国政府に人質として捕まるか分からない」という致命的なカードを相手に握らせ続けることを意味します。 [1]

「利益が出ないだけでなく、社員の命や人権すら守れなくなるリスクを冒してまで、なぜ中国にこだわり続けるのか」という疑問は、現在のパナソニックを含む多くの日本企業が突きつけられている最も重い課題です。

松下幸之助さん、本田宗一郎さんは凄かったけどね。
いまは、残念な経営陣ばかりだ。

経団連も残念な人ばかり。

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