見出し画像

名前のない、あれ。

食パンの袋に付いている留め具。
あれの名前が憶えられない。
テレビ等で何度も目にした有名な薀蓄(うんちく)。
名前がある事は知っている。
恐らく、私は憶える気がないのだろう。

私は朝食用に出した食パンをトースターに入れた。インスタントの珈琲の粉をコップへと注ぐ。
「あれ」を使い、食パンの袋を綴じる。
記憶の奥底から、「あれの名前」を引っ張りだそうとする。
皆目見当もつかない。
チン、と小気味よい音がする。パンはミディアムに焼けていた。
思考は、まだ止まらない。
マーガリンを塗り、珈琲にお湯を注ぐ。
部屋中に、こおばしい香りが蔓延する。
記憶は、蘇らない。

携帯を開き、今日のニュースを眺める。
思考の片隅には「あれ」が居た。

記録的大寒波のニュースが世間を騒がせている。
寒いのは、嫌いだ。多分、他の人より。
私の溜息に呼応するかのように、「名前のないあれ」は、また奥底へと帰っていく。

また、いつの日か。
名前を貰えるその日まで。

ここまで読んでくれた方ありがとうございます。
スキ、フォロー、コメントもらえたら嬉しいです。

いいなと思ったら応援しよう!