見出し画像

【作詞】嚥(のみ)

正常な日々
頬に貼りついた微笑みは
本物のふりをした刃

首筋を撫でる優しい光が
内側の暗がりを濃くしていく
張り付いた笑顔の裏では
鈍い悲鳴がずっと反響してる

“逃げたい”なんて
この箱庭じゃ罪になる
迫りあがる叫びごと
奥へ奥へと押し戻す

ねえ 聞こえる?
胸の奥で軋む音が
この綺麗な部屋は檻みたいで
立派なほど息が詰まる

“私”を飾る透明な鎖に
首を絞められたまま
わずかな酸素だけ吸って
今日も倒れないふりをしてる

自由を纏った誰かの背中が
眩しくて苦しくて直視できない
選ばれなかった未来たちが
針みたいに指先を刺してくる

正しさの薬が
心の体温を冷ませば
やわらかな夜の匂いまで
喉の奥で私を縛りつける

鎖の先には私の手
“正しい私”を演じろと
命じる声が内側から響く

ねえ もしも
この胸の闇を覗いたら
あなたはどうせ目をそらすんでしょ
それくらいわかってる
綺麗な皮膚の下で渦を巻く
黒い波に飲まれて
助けなんて求めてないのに
手放す勇気も持てないまま

息をするたび
細い糸が喉で切れる音がする
救われない
ただ 静かな場所で眠りたい

それすら許さないのは
いつだって私自身で
暴れて 崩れて
「ここにいる」と叫び続ける

ねえ 聞いてよ
どれだけ壊れても
一度だけ 本当の声を放ちたい
この“綺麗な地獄”で
誰にも触れられずに
泣き叫びたいだけなんだ

透明な鎖を引きちぎって
ただひとりで呼吸したい

いいなと思ったら応援しよう!