第6話:24時間の精神的包囲網。砕け散った心身と、最後の守護
【お読みいただく前に】 本連載は、ビジネスにおけるハラスメントや組織トラブルの教訓を伝えるための**創作ドラマ(フィクション)**です。機密保持およびプライバシー保護のため、人物設定、業種、エピソード等は大幅に改変・抽象化しており、実在の特定の人物や団体とは一切関係ありません。
4期目の終盤、私の世界からは「夜」という概念が消えた。
A氏からの連絡は、もはや業務連絡の域を超えていた。深夜2時、3時。スマートフォンの振動音が、静まり返った寝室に響く。内容は、私の判断に対する重箱の隅をつつくような批判や、「君には忠誠心がない」といった人格否定の言葉が延々と連なるものだった。
「1.5年の規律」を持ち、一度決めたことはやり抜く。そんな私の強靭な自律心さえ、24時間休まることのない精神的包囲網の前では、少しずつひび割れていった。
プロ意識という名の「呪縛」
普通なら、ここで投げ出しても誰も文句は言わないだろう。 だが、私にはどうしても守らなければならない「最後の一線」があった。
それは、私を信頼して大きな案件を任せてくれている取引先との約束であり、そして、「雇った責任をとってほしい」と願った社員たちの生活だ。
「私がここで倒れたら、進行中のあのプロジェクトはどうなる?」 「私が逃げたら、残された社員たちはA氏の標的になるのではないか?」
皮肉にも、私の真面目さと責任感が、A氏にとっては「どれだけ叩いても壊れない都合の良いサンドバッグ」として機能してしまっていた。
崩壊の足音
ある日の午前中、重要な商談の最中に、私は人生で初めての感覚に襲われた。 視界が急に狭くなり、相手の言葉が遠くの雑音のようにしか聞こえない。呼吸の仕方を忘れたかのような、激しい動悸。
それでも私は、震える手で資料をめくり、完璧なプレゼンをやり遂げた。取引先の担当者は笑顔で「さすが〇〇さん(私)ですね」と言ってくれた。その言葉だけが、崩れ落ちそうな私を支える唯一の杖だった。
最後の防波堤として
オフィスに戻れば、A氏の執拗な視線と、監視役たちの冷ややかな空気が私を待っている。 もはや、誰が味方で誰が敵かも分からない。 唯一確かなのは、私が作り上げた「仕組み」が、私の肉体と精神の限界を超えてなお、組織を回し続けているという皮肉な事実だけだった。
「あと少し、あと少しだけ……」
そう自分に言い聞かせながら、私は暗闇の中を走り続けた。 しかし、運命の時計の針は、私の意志とは無関係に、強制的な「幕引き」の瞬間を刻んでいた。
この物語が、今まさに責任感という鎖で苦しんでいる方の力になれば幸いです。 もし「共感した」「続きが気になる」と思っていただけたら、「スキ(♡)」やフォローをいただけると、執筆の励みになります!
