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【フィールドワークの、お福分け】阿波人形浄瑠璃の里で味わう、徳島ラーメン

昨年度、私は他県の人形芝居についての報告を担当していました。その中でどうしても抑えきれなくなったのは、「かつて人形浄瑠璃が最も盛んだった徳島の空気を、肌で感じたい」という衝動でした。

思い立ったが吉日。私は徳島へと向かいました。
その土地の芸能や歴史を訪ねる旅において、私が大切にしているマイルールがあります。それは「地元の食べ物を、心して味わうこと」。食文化もまた、風土と暮らしが編み上げた立派な文化の一部だと思うからです。

そうして出会ったのが、徳島が誇るソウルフード「徳島ラーメン」でした。

丼の中に息づく、戦後の物語

地元で「中華そば」の名で親しまれてきたこの一杯は、戦後の屋台文化から産声を上げたといいます。全国にその名が轟いたのは、1998年に老舗「いのたに」が新横浜ラーメン博物館へ出店したことがきっかけでした。

徳島ラーメンには白・黄・茶の3系統がありますが、今回訪ねた「いのたに」と「東大」は、いずれも茶系(黒系)を代表する人気店です。

茶系(黒系)
豚骨醤油ベース。濃厚なスープと甘辛い豚バラ肉が特徴。全国的に「徳島ラーメン」としてイメージされる代表的なタイプ。

白系
小松島周辺で発展した系統。豚骨ベースながら比較的あっさりしており、まろやかな味わい。

黄系
鶏ガラや野菜の旨味を活かした澄んだスープ。昔ながらの中華そばに近い風味。

運ばれてきた丼を見て、思わず息を呑みました。豚骨醤油の濃厚なスープに、甘辛く煮込まれた豚バラ肉。そして、中央に鎮座する生卵。その佇まいは、どこか「すき焼き」を彷彿とさせます。

私は、徳島ラーメンの歴史を語る上で欠かせない二つの名店を訪ねることにしました。

基準の味、華やぐ味


中華そば いのたに本店。行列に並ぶ。

まずは、聖地とも言える「いのたに」へ。
一口啜れば、納得の味わいでした。濃厚なスープと甘辛い肉が、互いを引き立て合いながら喉を通っていく。奇をてらわない、しかし揺るぎない「基準」としての風格。長年、この土地の人々の胃袋と心を支えてきた理由が、すとんと腑に落ちるような潔い味でした。


いのたにのラーメン。

次に向かったのは、活気あふれる「東大」です。


東大 大道本店。朝4時まで営業しているようだ。

基本の構成は同じはずなのに、受ける印象は驚くほど異なります。こちらはより力強く、かなりこってり。天下一品のスープのような中毒性を感じます。無料で提供される生卵を割り入れれば、スープのコクがさらに増し、食欲が加速します。


ライスも無料。ラーメンの肉をのっけたり、卵をかけたり、スープやしょうゆをかけて楽しめる。

同じ「徳島ラーメン」という看板を掲げながら、店ごとにこれほど鮮やかな個性が宿っている。それはまるで、同じ演目であっても座によって人形の遣い方や語りの呼吸が異なる、人形浄瑠璃の奥深さにも似ている気がしました。

フィールドワークの終わりに

阿波人形浄瑠璃という伝統芸能に触れ、その土地が守り続けてきた物語を学ぶ。そして、徳島ラーメンという食文化を通じ、今を生きる人々の活気に触れる。

舞台の上に息づく人々の営みと、湯気の向こうに透けて見える日々の暮らし。その両方を味わうことができた今回の旅は、私にとってこの上なく豊かな「フィールドワーク」となりました。

歴史を知ることは、今を知ること。文化を味わうことは、その土地を愛すること。

「ちなみに私は、あの力強い東大派でした」

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