ミイラ取りはミイラになれ
( #ショートショート 本文:745字)
「陛下、ご気分はいかがでございますか」
医者が腰を低くして声をかけた。
「うむ。なかなかいい寝床であった。すっきりした寝覚めだ」
王は胸を張り、妙にツヤツヤした声で答える。
経済学者が帳簿を抱えて進み出る。
「陛下の資産状況を確認いたします。金の総量、宝飾品……どれも素晴らしい健在ぶりで」
「当然だ。わが財はわが国の誇りだ」
古物商が、目をキラキラさせながら首飾りを持ち上げる。
「陛下、この細工、現代に出せばオークションで――」
「出さぬ。王家の象徴だ」
三人は一斉にひれ伏した。
「ははーっ!」
王は満足げにうなずく。
「そなたら、よく我らのことを調べてきたな」
医者が胸を張る。
「はい、陛下。我々の国には『郷に入れば郷に従え』という諺がございます。それに従い、陛下の国の作法を学び、礼を尽くす所存であります」
経済学者も続く。
「文化の尊重こそ、国際交流の基本でございます」
古物商も深く頭を下げた。
「心より敬意をもって参上しております」
王は満足げに――しかし、ふと眉をひそめた。
「……ところで、その格好はなんだ?」
三人はビクリと固まる。
「もっとわしのように丁寧に巻けぬのか。そっちの者はもつれているし、こっちは解けかけているぞ」
医者が言いにくそうに口を開く。
「郷に入れば郷に従え、ということで……」
経済学者が続ける。
「しっかり準備してきたつもりだったのですが……」
古物商が締めくくる。
「なにぶん、我々、手先が不器用なもので……」
王は額を押さえた。
「まったく、最近の探検隊は礼儀がなっておらぬ」
その背後で石棺がごとりと揺れ、壁の文字が砂を落としながら浮かび上がる。
――ツタンカメカメ三世、永眠の間。
探検隊の三人は、包帯を直しながら、「次はもっときれいに巻いてこよう」と心に誓った。
(了)
他国の礼儀作法というのは、なかなかむずかしいもんですね。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #ミイラ取りはミイラになれ
TALESにて絶賛連載中。アマノ文筆クラブに参加した作品ばかりです。よろしくね。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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