彼女を犯罪者にしてはいけない|#せりふ三題噺
「にゅいちゃん。今日はデートだよね」
「うん、そうだよ。すーくん、さっきも確認したよね」
料理発明家のあにゅい先生と料理専門誌の担当者の僕。仕事のときは先生、鈴木くんと呼び合っているが、デートのときはお互いのことを、にゅいちゃん、すーくんと呼んでいる。信じられないことだが、僕たちは付き合っている。
「海釣りに付き合ってって言ってたけど、どうしてここなの?」
「このあたりが一番、海が深いから」
海が深い? いったい何を釣る気なんだろう。
「それにしても寒いよ~。ダウンコートを着てても凍えそうなくらい」
「これくらいの気温の方が釣った魚を保存するのにちょうどいいわ」
何か不穏な空気だ。これは絶対デートじゃない。
「にゅいちゃん。やっぱり、これ仕事だよね」
「違うわよ。デートのついでに食材の深海魚を釣るだけよ」
そんなついでってある? 何でも食材調達につなげるのは職業病だろ。
ツッコミを入れようと思ったが、僕は思いとどまった。にゅいちゃんはそういう人だった。思い込んだら一直線。そして、そこがかわいい。
「何、狙ってるの?」
「シーラカンス」
「だめだって。それ絶滅危惧種! ワシントン条約で禁止されてるよ」
「見つからなければ、大丈夫だってば」
にゅいちゃんを犯罪者にしたくない。説得しなくちゃ。
「深海魚はやめようよ。近海魚にしよ」
「いやよ。金塊くれるなら考え直してもいいけど」
「金塊は予算がないよ。宴会にしょ」
「いいわね。釣ったシーラカンスで一杯!」
「だからダメだって!」
シーラカンス、ダメ、シーラカンス、ダメ……と何回やりあったかは知~らない。でも、なんとか釣りはあきらめてくれた。
椎名林檎のライブに行き、そのあと居酒屋でシイラを箸でつつきながら、夜が白々と明けるまでいろんな話をした。
にゅいちゃんとのデートは、いつもこんな感じ。彼女はとにかくクセが強い。でも、僕はそんな彼女が好きだ。
(了)
ごちそうさま。鈴木くん、こんなデートが癖になってんだ。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
はらとけいさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#せりふ三題噺 #職業病深海魚ダウンコート
あにゅい先生と鈴木くんのお話はこちら。
メンバーシップやってます。
note初心者大歓迎!
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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