見出し画像

すっとこどっこい!|#せりふ三題噺

#ショートショート  本文:668字)

 突然、タイムスリップした。

 僕を呼ぶ女性の声がして振り向いたら、高校の校舎の屋上だった。さっきまで会社で仕事をしていた。デスクでパソコンに向かって資料を作成していた。なのに、いつの間にか僕は屋上に立っていた。

「おじさんなのね」
 彼女は僕を見てそう言った。セーラー服姿でローファーを履いた、ポニーテールの可愛い女子高生。声をかけられたことはうれしかったが、おじさんと呼ばれたことにショックを受けた。

「僕は君と親戚ではないので、おじさんではない」
 そう答えた。
 彼女は僕の妻に似ていた。僕と付き合い始めたころ――高校三年生の妻にそっくりだった。

 そのとき、彼女が盛大にくしゃみをした。
「ぶえっくしょい! すっとこどっこい!」
 春一番に乗ってやってきたスギ花粉のおかげで確信した。彼女は若いころの妻だ。この特別思い切りのいいくしゃみこそ、彼女が僕の妻たる証拠だ。

 いつものようにティッシュを差し出す。
「あじがど、あだだ」
 チーンと鼻をかみ、礼を言う彼女。
 ほら、この返し方も同じだ。え? ありがと、あなた、って言った? 彼女が僕のことをあなたと言い始めたのは結婚してからだ。

「えへへ。私、タイムスリップしちゃった」
 なんだ。彼女もタイムスリップしたのか。
「君だけ若返るなんて、ずるいね」
 僕は中年のサラリーマン姿。髪の毛が薄くなって、おなかもぽっこり。僕もイケメン(自称)の姿に戻りたかったな。

 そのあと僕は、若返った彼女と腕を組んで昭和な町でデートを楽しんだ。周囲からは援助交際のカップルに見えたかもしれないが、夫婦なので何も問題はない。

(了)

楽しいひとときでしたね。ちゃんと元の時代に戻れましたか。


はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
はらとけいさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#せりふ三題噺 #屋上春一番ローファー

好評の書籍「少女は運命を変えた」、残り2冊となりました。売り切れになる前にお買い求めください。

では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

#タイムスリップ #屋上 #セーラー服 #ローファー #ポニーテール #女子高生 #おじさん #くしゃみ #春一番 #スギ花粉 #デート #援助交際

いいなと思ったら応援しよう!

はれるや( ´ ▽ ` )ノ。 よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!