ラーメン食べたい
( #ショートショート 本文:775字)
探偵と助手は商店街を歩いていた。依頼がないときは依頼人を探すしかないのだ。事件は現場にしかない。
そのとき、福引会場の方から騒ぎ声が聞こえた。
「ない! ないぞ!」
景品台の前で店主が慌てている。
「どうしたんです?」
探偵が尋ねると、店主は顔をしかめた。
「一等の賞品――腕時計が消えたんだ」
高級そうな箱の中身は空っぽだった。
探偵と助手は顔を見合わせた。
「先生、これは事件ですね」
「ああ、これは久しぶりの大事件だ」
店主の依頼を受けて捜査を始める。まずは聞き込みだ。
「犯人を見ましたか?」
八百屋のおばさんは腕を組んだ。
「なんか、細長い男だったねえ」
(細長い男……細身で身長が高い男)
次に花屋の店主に聞く。
「全身、黄色かったな」
(服装は黄色い上下? 目立ちすぎる!)
さらに文房具屋の主人。
「湯気が出てるみたいに、よく見えなかった」
(湯気を出してる? 怒っているのか?)
「どういうことでしょうか?」
助手は証言のメモを眺めながら、真剣な顔で探偵に聞く。
「人間じゃないかもな」
二人は商店街を歩き回った。細身の男はいても服装が違ったり、黄色っぽい服装でも湯気が出てなかったり――そもそも、湯気を出してる人間などいるのか?――とにかく、推理は迷走した。
夕方になるころ、二人は福引会場に戻って来た。
すると店主が箱を抱えて立っていた。そして、気まずそうに頭をかいた。「申し訳ない。箱の向こう側に落ちてた――」
二人は力なく商店街を歩いて帰る。
「結局、細長くて黄色くて湯気が出てる男って、本当にいたんですかね」
「見間違いだったのかもな」
一日中、男を追って、食事抜きだったことを思い出した二人。ふと見ると、うまそうな看板の店があった。
「先生、僕、食べたいものがあります」
「俺もだ。一日中、追いかけてたからな」
二人は同時に言った。
「ラーメン食べたい!」
(了)
お疲れさま。どうぞ召し上がれ。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #ラーメン食べたい
TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜6:30をお楽しみに。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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