恋する女は嫌いだ
夜十時。氷をグラスに落とした瞬間、電話が鳴った。
「今、話せる?」
恋する女は声がうるさい。
「三秒なら」
「えっと、あの……」
「はい、三秒!」
「それで、彼のことなんだけど……」
「無視かい!」
「彼、メッセージの句点がいつも二個なの」
「終わったね。それは重い」
「でも、ハートもついてた!」
「情緒がジェットコースターだね」
「どうすればいい?」
「酔い止めをお勧めする」
「返信したほうがいい?」
「『句点を減らせ』って送れば?」
「嫌われる!」
「じゃあ、句読点監査官として生きなよ」
私は黙って酒を飲んだ。
「あと、駅で偶然を装って会いたくて」
「待ち伏せか。駅員に相談したら? 監視カメラに詳しいから」
「それじゃ犯罪者じゃない。私を何だと思ってるの!」
「恋する女」
しばしの沈黙。
「あと……彼、犬を飼ってるの。私、苦手で」
「あんた、虎になれば? 犬より強いわよ」
「解決にならない!」
「恋愛なんてだいたいそんなものでしょ」
再び沈黙。
「……深いね」
「浅いよ」
「私、重いかな」
「かなり。自分から重量増やしにいってる」
「だって好きなんだもん! 恋したことないの?」
「ある。池で泳いでるのにエサをやったことがある」
「そのコイじゃない!」
やがて、彼女は弾んだ声を出した。
「わかった! 私、彼じゃなくて恋してる自分が好きなんだ!」
「最悪ね」
「スッキリした! 明日、駅で偶然してくる!」
「日本語が壊れてる」
「行ってきます!」
電話が切れた。
静かな部屋。氷が溶けかけた酒を飲み干し、呟いた。
「これだから、恋する女は嫌いだ」
(了)
仲のいい二人ですね~。彼女、うまく偶然できたかな?
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #恋する女は嫌いだ
TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜の朝をお楽しみに。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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