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なくしもの|#毎週ショートショートnote

#ショートショート  本文:410字)

 男には過去がなかった。

 事故で記憶を失った男は、過去の空白を埋めたいと願っていた。そんな折、「思い出バンク」の職員が訪ねてくる。亡くなった登録者の記憶を相続してほしいというのだ。

 提示された記憶の断片は、どれも眩しいほどに輝いていた。
 庭園に咲き誇る薔薇の香り、海辺で交わした誓いの言葉。 裕福な家庭、親友との出会い、情熱的な恋、そして若くしての成功。
 自分の記憶ではないのに、そのあまりの鮮やかさ――誰もが羨む完璧な人生の記録に、男は息を呑んだ。

「これほどの思い出で空白を埋められるなら……」

 しかし、男は震える手で書類を閉じ、静かに相続を放棄した。そのあまりに「高価」な思い出は、莫大な相続税の課税対象だったのだ。すべてを受け入れれば、これからの生活は借金に追われ、破産するしかない。


 男は穏やかに笑って告げた。

「過去のために未来を捨てたくはありません。私の思い出は、これから無税で作ることにします」

(了)

私もそれがいいと思います!


はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
田原にかさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#毎週ショートショートnote #思い出相続税

では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

#過去 #空白 #思い出 #相続 #相続放棄 #相続税 #破産 #無税

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