そのへんに捨てて帰ろう|せりふ三題噺
私は中学校の教師である。趣味は駄菓子。帰宅途中にある、昔懐かしい駄菓子屋で駄菓子を買って食べるのだ。
だが、そんなところを生徒に見られては教師の沽券にかかわる。生徒たちを全員下校させてから、誰もいないのを確認して駄菓子屋に行く。
駄菓子屋は婆さんがひとりで経営している。この婆さんがなかなか変わっていて、店番をしながらコスプレをしている。
今日のコスプレはカウボーイスタイル。カウボーイハットに、ウエスタンシャツとベスト、下半身はジーンズにウエスタンブーツ。レザーグローブをした手には二丁拳銃。本格的だ。
私は婆さんに挨拶をして、目当ての新製品に突進する。これだこれ! うまい棒の金木犀味。この、秋を象徴する甘い香り。思わず袋から出して食べてしまいそうになる。
いかん、いかん。お勘定を済ませなければ。
早打ちの練習をしている婆さんにうまい棒を見せて代金を支払う。ついでに、飲み物として冷えたみかん味のチューペットも買う。これでミッションコンプリートだ。
店頭にあるベンチに座って、いよいよおやつタイムだ。
チューペットの先を噛み切り、チューっと吸う。甘い、実に甘い。まさに甘味料の甘さだ。これがいい。
うまい棒の封を切る。強烈な金木犀の香りがする。思わず、深呼吸してしまうほど、いい香りだ。サクッ。ひと口かじるとふわっと口の中に秋が広がる。
サクッ、チュー、サクッ、チューと夢中になっていると声をかけられた。
「先生、どうしてここにいるの?」
クラスの生徒が全員でこちらを見ていた。
「いや、これはだな。何というか、つまり、その、あれだ。買い食いした生徒の気持ちを知るためにだな……」
そのとき、婆さんがカウボーイブーツを脱いで、私の目の前に差し出した。
「ほれ。もうすぐクリスマスだろ。これでも生徒たちにおごってやりな」
ブーツの中には駄菓子がいっぱい。
婆さんは手を出す。
「二千円に負けとくよ」
婆さんの足の残り香のするカウボーイブーツを生徒たちに渡し、教師のプライドをそのへんに放り投げて、みんなと駄菓子を食べながら帰路につく。
「メリークリスマス!」
クリスマスはまだかなり先だ。
(了)
青春です! 教師って、いい仕事ですね。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
はらとけいさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
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メンバーシップ始めました。
楽しい話、いっぱいしましょ。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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