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そのへんに捨てて帰ろう|せりふ三題噺

#ショートショート  本文:892字)

 私は中学校の教師である。趣味は駄菓子。帰宅途中にある、昔懐かしい駄菓子屋で駄菓子を買って食べるのだ。

 だが、そんなところを生徒に見られては教師の沽券にかかわる。生徒たちを全員下校させてから、誰もいないのを確認して駄菓子屋に行く。

 駄菓子屋は婆さんがひとりで経営している。この婆さんがなかなか変わっていて、店番をしながらコスプレをしている。

 今日のコスプレはカウボーイスタイル。カウボーイハットに、ウエスタンシャツとベスト、下半身はジーンズにウエスタンブーツ。レザーグローブをした手には二丁拳銃。本格的だ。

 私は婆さんに挨拶をして、目当ての新製品に突進する。これだこれ! うまい棒の金木犀味。この、秋を象徴する甘い香り。思わず袋から出して食べてしまいそうになる。

 いかん、いかん。お勘定を済ませなければ。

 早打ちの練習をしている婆さんにうまい棒を見せて代金を支払う。ついでに、飲み物として冷えたみかん味のチューペットも買う。これでミッションコンプリートだ。

 店頭にあるベンチに座って、いよいよおやつタイムだ。
 チューペットの先を噛み切り、チューっと吸う。甘い、実に甘い。まさに甘味料の甘さだ。これがいい。

 うまい棒の封を切る。強烈な金木犀の香りがする。思わず、深呼吸してしまうほど、いい香りだ。サクッ。ひと口かじるとふわっと口の中に秋が広がる。

 サクッ、チュー、サクッ、チューと夢中になっていると声をかけられた。
「先生、どうしてここにいるの?」
 クラスの生徒が全員でこちらを見ていた。
「いや、これはだな。何というか、つまり、その、あれだ。買い食いした生徒の気持ちを知るためにだな……」

 そのとき、婆さんがカウボーイブーツを脱いで、私の目の前に差し出した。
「ほれ。もうすぐクリスマスだろ。これでも生徒たちにおごってやりな」
 ブーツの中には駄菓子がいっぱい。
 婆さんは手を出す。
「二千円に負けとくよ」

 婆さんの足の残り香のするカウボーイブーツを生徒たちに渡し、教師のプライドをそのへんに放り投げて、みんなと駄菓子を食べながら帰路につく。

「メリークリスマス!」
 クリスマスはまだかなり先だ。

(了)

青春です! 教師って、いい仕事ですね。


はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
はらとけいさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#せりふ三題噺 #金木犀駄菓子ブーツ #どうしてここにいるの

メンバーシップ始めました。
楽しい話、いっぱいしましょ。

では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

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