#07 「バイオリン遊んでる?(怒)」――脳科学的にありな「つまみ食い」練習法。
今回は、息子の家での練習スタイルについて書こうと思う。
とにかく、、、一回の練習で色んな曲を弾く。
一貫性を欠く練習
自分の部屋に入り、練習しだすのだが、部屋から漏れ聞こえてくる音楽は、バラエティーに富んでいる。 レッスンの課題曲が聞こえてきたかと思えば、数分後には全く別の旋律が混ざり始める。
「運命」、「華麗なるボロネーズ」、「銀河鉄道999」、「愛の挨拶」、いきものがかりの「ありがとう」、あるいは「ハウルの動く城」、「あの夏へ」。 さらにアニメ「青のオーケストラ」の影響による「カノン」やヴィヴァルディの「夏」、「ユーモレスク」などなど。 課題曲の練習の合間に、本人の嗜好に基づいた弾きたい曲が際限なく割り込んでくる。
不可解なのは、これほど寄り道をしているにもかかわらず、バイオリンの先生から課題曲の進捗について大きなコメントを受けたことが、ついぞないということだ。どうやら最低限必要な水準はクリアしているらしい。
とは言え「中途半端に終わるのではないか」という不安が付きまとう。一方で、親が口を出したところで聞く耳を持たないのは分かっている。だからこそ、これは、行き場のない心配事として私の胸に溜まっていく。
分散学習(インターリーブ)という解釈
不安を解消すべく、調べる中で行き当たったのが、「インターリーブ練習(分散学習)」 という概念だった。
【定義】 一つの課題を長時間反復する「ブロック練習(集中練習)」とは異なり、複数の異なる課題やスキルを交互に、あるいはランダムに混ぜて学習する手法。
【メカニズム:望ましい困難 (Desirable Difficulties)】 UCLAのロバート・ビョーク博士が提唱。別の課題を挟むことで脳が前の課題を一度「忘れ」、再び取り組む際に「再構築(思い出す)」プロセスが発生します。この負荷が長期記憶への定着を強化します。
【出典】
UCLA Björk Learning & Forgetting Lab (Research Overview)https://bjorklab.psych.ucla.edu/research/
Scientific American: The Interleaving Effecthttps://www.scientificamerican.com/article/the-interleaving-effect-mixing-it-up-boosts-learning/
息子のつまみ食いがこの学習モデルを正確に再現しているかは定かではない。しかし、もしこれが定着率を高める効果的な手法なら、私の心配は単なる杞憂だったことになる。
インターリーブの明暗:メリットとデメリット
インターリーブ練習のメリットとデメリットは以下とのことだ。
【メリット】
・長期的な定着率の向上: 短期的には上達が遅く感じられるが、数週間〜数ヶ月後の定着率はブロック練習を大きく上回る。
・応用力の育成: 異なるジャンル(クラシック、J-POP、他楽器)を混ぜることで、本質的な技術の共通点を見出す力がつく。
【デメリット】
・短期間の達成感の欠如: その場ですぐに「スラスラ弾ける」ようになりにくいため、学習者が自信を失いやすい。
・音楽大学入試などで求められる「スケール(音階)」や「エチュード(練習曲)」といった、地味で退屈だけれど不可欠な基礎技術が疎かになる可能性があります。
達成感の欠如は、楽しそうに弾いているので問題なさそうだ。基礎が疎かになる方は気になるので、今度先生にチクっておこう。
直線ではない最短距離
仕事で効率を追求する際、しばしば最短距離 を辿ろうとする。しかし、バイオリンという身体性を伴う分野では、成長の軌跡は必ずしも直線ではないのかもしれない。
先生が現在の仕上がりに納得している、、、のか分からないが、この雑多な旋律も息子なりの練習スタイル、と受け入れるのが良さそうだ。
今日もまた、漏れ聞こえてくるカノン を聴きながら「上手くなったな~」と感慨にふけりながら、聞き入るのでした。
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次回予告: 井の中の蛙が大海の底を知った日。――残酷な音楽基礎力の請求書
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