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ロングネックレスとは何か

今の職場は、髪型も服装も自由だ。
なんなら内装までかなり凝っていて、全体的に洒落ている。
「とりあえずその辺のシャツを着ました」みたいな格好で通勤するのは、なんだか申し訳ない気さえする。

この夏は、紺のブレザーを着るつもりだ。
下がデニムでも、トラウザーでも、それなりに様になる。

白、黒、茶色。
たぶん何色を合わせても大丈夫。

薄手で少し透け感があって、冷房対策にもなる。
袖を捲れば、ほどよく力の抜けた感じも出る。
ダブル仕立てに金ボタン。
こういう、ちゃんとしてるけど遊べる服に弱い。

こうなると、アクセサリーも欲しくなる。
腕時計はもう決まっている。
カシオコレクション。
この冬に買ったお気に入りだ。
時を刻む、その一点だけに特化した無骨さがいい。
余計なことをしない、この潔さが気に入っている。
腕周りはこれで十分。

となると、少し上半身が寂しい。
ただ、体質的にアクセサリーを直接肌に当てられない。
服の上からなら、ロングネックレスなんてどうだろう。

ボタンに合わせて細い金色のチェーン。
小さめのチャームがついていたら、なおいい。
襟元に合わせてY字が動かせれば完璧。
今度の休日にでも見に行こうか。

そんな話を夫にしてみた。
夫は「ふーん」と言いながらスマホを取り出し、何やら検索し始めた。

珍しい。
普段、服やアクセサリーの話は「まぁ、似合うんじゃない?」くらいしか応えない。
ところが、今日は妙に真剣だ。
少し間があって、こちらに画面を向けてきた。

こういう時のために、日頃から下調べをしてくれていたのか。
遅れてきた母の日か。
それとも、もうすぐボーナスでも入るのか。
もしかしたら、後ろめたい何かを先に相殺しようとしている可能性だってある。
彼は、急にアクセサリーを検索し始めたりしない。

そんなことを考えながら画面を覗き込んだ。
私はもう、細いチェーンの質感について考え始めていた。


真壁刀義のプロフィール写真だった。

どうやら夫には、
「長い」
「首にかける」
「金属」
だけが伝わっていたらしい。

たしかに全部合っている。
合っているのだが、そうじゃない。

私が欲しいのは夏の紺ブレに揺れる、華奢なY字チェーンだ。
胸筋の上で暴れる鎖ではない。
なんてこった。

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