はじめに。
「ひと呼吸」とは何か
このnoteは、HEAP(ヒープ)と呼ばれるプロジェクトによる「ひと呼吸 weaver」というコンテンツです。
すでにこの一文で、多くの方にはわからないことがたくさんありますね。
まず、HEAPとは何なのか。
HEAPは、2017年、京都大学において障害のある学生の権利保障や支援を考えるためにはじまった「高等教育アクセシビリティプラットフォーム(Higher Education Accessibility Platform:HEAP)」というプロジェクトのことです。
HEAPでは、大学等の高等教育機関における障害のある学生の権利保障や支援の状況を把握し、各大学等や地域における取り組みの温度差を是正していくこと、また、そのための相談事業やネットワーク構築、さらには同分野で活用できるさまざまなコンテンツの作成や研修プログラム等の提供を行ってきました。
このような取り組みの一つに「ひと呼吸」があります。
プロジェクトを進める中で、この分野において大切なものは何か、関わるひとたちにどのような思いがあって、何を届けていきたいのか、そのことをわたしたち自身も問いたいと思ったし、それを伝えたいという気持ちに気がついたのが、この「ひと呼吸」を作り始めるきっかけでした。
……と、ここまで書きましたが、自己紹介ができていなかったですね。
わたしはHEAPプロジェクトを立ち上げ、そしてディレクターを務めている村田淳(むらたじゅん)という者で、この「ひと呼吸」を発行するHEAPを運営する京都大学ディスアビリティ・インクルージョンセンターのセンター長、同時に同大学のDRC(障害学生支援部門)の部門長・チーフコーディネーターです、というのがちゃんとした自己紹介になるかと思います。
それはさておき、これ以降、よろしくお願いします。
はじめの「ひと呼吸」
「ひと呼吸」は2019年から2023年までの約4年間に、この分野に関わるひとへのインタビュー誌として発行してきました。全部で15号。冊子やWebで読んでいただける形としてリリースしてきました。
また、このコンテンツを契機としたワークショップ企画のようなものも実施しています。
これらのコンテンツは今も色褪せず、何度でもお読みいただけるものになっていると思っていますが、それはわたしたちつくり手の自信ではなく、それだけ一人ひとりの思いや考え方、それに人柄も、魅力あるものだからだと思っています。
よろしければ、「是非、読んでみていただきたい!」と心から思っています。(バックナンバーはこちらから)
「ひと呼吸」では、以下のリード文を掲げていました。
私たちの日常。それは多くの営みの連なりである。
普段、それぞれの行為の意味を考えることは少ないが、ふと立ち止まって考えてみれば、そこには偶然と必然が潜んでいることに気づく。呼吸。そのような自然な行為ですら、太古における偶然と必然の産物であったといえるかもしれない。
この『ひと呼吸』が、手に取ったひとの日々の呼吸(営み)を見つめ直すきっかけとなり、そして、それぞれの日常のなかでの「ひと呼吸(休息と起点)」になれば嬉しい。
ちょっとわかりにくいリード文かもしれませんが、きっと本編を読んでいただければ何か感じ取っていただけることもあるかと思います(……という自分勝手な期待を寄せて)。
これまでの「ひと呼吸」に登場していただいた、
岡田孝和さん、奥山俊博さん、五味洋一さん、
白澤麻弓さん、酒井春奈さん、藤原隆宏さん、
日下部貴史さん、森麻友子さん、楠敬太さん、
土橋恵美子さん、Peter Bernickさん、堀田亮さん、
近藤武夫さん、大村美保さん、池谷航介さん、
本当にありがとうございます!
この礎というと大袈裟にきこえるかもしれませんが、こうしたひとたちの語りを経て、この度、「ひと呼吸」はセカンドシーズンを歩むことになりました。
「ひと呼吸 weaver」がはじまる
さて、2023年から約3年間お休みしていた「ひと呼吸」ですが、その理由は、「他のことで忙しかったから」というのも正直なところなのですが、この分野の背骨というか、軸のようなものが見えてきた感覚になり、いったんここで役割を終えてもいいかなと思ったからということがありました。
これまで一人ひとりの語りをインタビュー誌として残すだけでなく、スピンオフ企画も実施して、障害のある学生のことやこの分野全体のことをたくさんの関係者と一緒に考えてきました。
今ではそれがきっかけになった研修プログラムも生まれて、HEAPとしては「探る」とか「形づくる」から、「伝承する」役割に移ってきたように思ったこともあって、再開未定の休止期間に入りました。
ただ、やはりというか、この分野はまだまだ過渡期という言葉を脱するのが難しい状況なのですよね。
もちろん、過渡期という言葉に甘んじてはいけないのですが、HEAPというプロジェクトを通じて、それが客観的な評価であるように思っています。
だとすれば、まだ伝え続けないといけないし、そのための声(語り)が必要になると思いました。
これまでは、制度がつくられ、支援の構造をつくりあげるフェーズでした。これからは、多様な現場で個々に積み上げられている実践や工夫を「紡ぎ合わせる」フェーズへと展開させていく必要性を感じています。それを「編む=weave」という言葉で表現し、二人の語り手(weaver)が登場するものとして再開することにしました。
ということで、この「ひと呼吸 weaver」は、セカンドシーズンとして、また新しいコンテンツとして生まれかわります。
これまでの一人の語り手にフォーカスした「ひと呼吸」から、対談形式、つまり二人の語り手による対話から何かを見出していこうとする試みに変わっています。
わたしたち自身もどうなっていくのか明確な見通しがあるわけではなく、新しいことをはじめていく冒険心というか高揚感のようなものに包まれている、という感覚でしょうか。
ただ、これまでの「ひと呼吸」のリード文(プロローグ)に込めた前提が変わるわけではありません。
複数名での語りの場では化学反応という表現が用いられることがありますが、この「ひと呼吸 weaver」では、そのこともあえて「自然現象」と言い続けたいと思っています。
淡々と、それぞれの日々の営みが交差することで見えてくるものを切り取り、残していきたい。それを、このコンテンツの意義と目標にしてみたいなと思います。
正直、どうなることやらですが、「ひと呼吸 weaver」、はじまりはじまり。
村田淳
